9. コミュニケーションエラー防止訓練教材

指示や伝達において情報が正確に伝わらないコミュニケーションエラーは、列車の安全な運行や旅客への適切な情報提供を妨げる要因となります。そこで、鉄道現場作業で発生した事故(1706件)とヒヤリハット経験(97件)から23個のエラー発生要因を抽出し、「コミュニケーションエラー要因モデル」を作成しました。このモデルは要因間の関係を表し、例えば確認不足の背後要因として、「何を確認すべきか分からない」といった要因があることを示したものです。

このモデルから、「復唱・確認会話」が十分に機能しない主な原因として「何を確認すべきなのか分からない」というものがあり、コミュニケーションエラー防止には、確認すべき「曖昧な表現・用語」に気づく能力の向上が必要であることを明らかにしました。また、形だけの「復唱・確認会話」にならないように事前学習が必要であることが分かりました。

そこで、「曖昧な表現・用語」を学習するステップ(図1)と、「復唱・確認会話」のやり方を学ぶステップ(図2)からなる訓練教材を作成しました。この訓練の効果を92名の被験者を対象とした実験で検証したところ、コミュニケーションエラー発生数が約半減しました(図3)。