19. 交流き電回路における高調波解析モデルと抑制手法

交流き電回路では、ある特定の周波数帯域で電圧・電流の高調波成分の共振が発生します。従来は、通信線への誘導障害を防止する観点から数百Hzまでの低周波帯域における電流高調波の共振について対策を実施してきましたが、近年、パルス幅変調(PWM)制御車の導入に伴い数千Hzの高周波帯域において高調波の共振が生じ、電磁環境などへの新たな影響が顕在化しつつあります。

そこで、PWM制御車による高調波共振も評価できる新たな解析モデルを提案しました(図1)。解析モデルの妥当性を現地試験で評価した結果、共振周波数の解析値と実測値の誤差は4%以内であることを確認しました。

この解析モデルに基づいてき電回路における高調波共振の発生条件を評価した結果、き電回路内における電車の位置、き電距離長などの条件によっては数千Hzの高周波帯域で共振が生じることや、き電距離長が数十kmと長い場合には複数の周波数帯で共振が発生することなどを定量的に明らかにしました(図2)。これらの成果は、新型車両等の導入時における共振抑制対策の策定に活用できます。

また、従来からの対策としてき電回路の末端に設置されている共振抑制装置について、設置位置と効果を本手法で評価した結果、一部の共振箇所を除けばき電回路の任意の位置に設置しても有効であることを確認しました(表1)。