武内 陽子

-先輩職員インタビュー-

プロフィール
武内 陽子
運転システム研究室 室長
2002年入社

列車運行に関するシミュレーション開発

私は、信号技術研究部の運転システム研究室に所属しています。研究開発の目的は、列車ダイヤ作成業務支援と、作ったダイヤに沿って列車を運行させる運行管理業務支援です。数理最適化技術やシミュレーションを用いて、より便利で効率の良い列車ダイヤ作成を支援するためのシステム開発などを行っています。

具体的にイメージしていただくために、研究室で開発を進めている「列車運行・旅客行動シミュレーター」を紹介します。これは、自動改札機等で記録された旅客データを用いて、あるダイヤを実施したときの列車運行状況を詳細に模擬し、列車の混雑率、列車の遅れ、旅客にとっての利便性などを推定し、ダイヤの評価を行うものです。このツールは既に一部の鉄道事業者で活用されており、複数のダイヤ改正案を比較評価することで、鉄道事業者の担当者が、混雑や遅延の少ない、より良いダイヤを作成する業務を支援しています。その中で私は、信号に従って駅間を走行する列車の速度と位置を計算する方法の開発に携わり、列車の遅れをより詳細に再現することが可能になりました。

このときのノウハウを活用し、現在では、消費エネルギー削減に活用するための列車運行電力シミュレーターなどの開発にも携わっています。列車運行電力シミュレーターは、電力分野・車両分野とともに、研究部の垣根を越えタッグを組んで取り組んでいます。他分野とのコミュニケーションからは「こういうやり方もあったんだ」と多くの気づきが得られ、刺激的です。

目標は、鉄道事業者様の課題解決を手助けし、鉄道を利用する方々に便利な輸送サービスを提供することです。他分野の研究者と交流し合う中で感じるのは、分野が異なりアプローチは違っても、全員がゴールを共有しているということです。だからこそ、前向きな議論ができ、共に過ごす時間が充実しています。また、私が学生時代に学んだ数理最適化技術と、当研究所で開発しているシミュレーションとをつなげることで、成果を上げたいと思っています。

職場のサポートのもと子育てと研究を両立
後輩にも同様のサポートをしていきたい

プライベートでは2人の子どもがいます。入社3年目に第一子を出産、育児休暇をいただきました。仕事から離れることはもちろん不安でした。そんな私に、研究室の先輩が「いつ復帰するの?」と言ってくださったのです。その言葉がとても心強く、今でも印象に残っています。第二子にも恵まれ、育児休暇から復帰した今、改めて感じるのは、私なりの成長のペースを周囲に認められたありがたさです。そんな私も、現在では、研究室長を務めています。今度は、私が恩返しをする番。男女関わらず、後輩たちが、他のメンバーからも刺激を受けながらのびのびと研究ができるよう、「困ったことがあったら相談してね」という雰囲気を作っています。

コラム:部外表彰について

「列車運行・旅客行動シミュレータ」で日本機械学会(2013年3月)、日本鉄道サイバネティクス協議会(2014年5月)から賞をいただきました。
もちろん、私ひとりで成し得た成果ではありません。他のメンバーと協力し合い成果を出し、社外で認められたことに喜びを感じました。同時に自分たちの研究が鉄道をご利用になる多くの人々の快適な一日に役立っていると思うと、やりがいを実感します。

当研究所では、私だけではなく、多くの人が学会に論文を出し、評価を受けています。部外表彰は、自身が関わったことが、所属する組織を超えて、新たなスタンダードになりえるということでもあると思います。そして、こうしたチャレンジが、入社年次などにまったく関係なく新人であってもできるのが、当研究所で働くことのひとつの魅力だと思います。