弟子丸 将

-先輩職員インタビュー-

プロフィール
弟子丸 将
軌道構造研究室 主任研究員
2003年入社

装置の開発から性能評価まで
レールを固定する締結装置が研究テーマ

学生時代、交通システム工学研究室に所属し、レールの波状摩耗による騒音や振動の発生メカニズムについて研究してきました。この研究に携わったことをきっかけに、鉄道総研に入社しました。入社から数年間はレールの寿命評価を研究テーマとし、レールの凹凸部分にかかる負荷から疲労寿命を算出し、寿命を延ばすための方法を検討していきました。その後、1年間のJR北海道への出向を経て、現在はレール締結装置の研究に従事しています。研究に関する業務は主に締結装置の新規開発、締結装置の性能照査などです。前者は、鉄道事業者の要請に応じて取り組むケースがほとんどで、過去に鉄道構造物の施工時間の短縮やコスト低減に貢献する「レールの位置をより大きく移動できる装置の開発」に取り組みました。後者の性能照査は試験による評価が中心でしたが、近年は数値解析の適用の検討も進めています。実物の締結装置を用いて試験が行えるのは鉄道総研ならではの強みですが、その分、手間や時間がかかるというデメリットもあります。従来の試験機による試験に数値解析を加えることで、これまで以上に鉄道事業者のニーズに迅速かつより的確に応えられるものと期待しています。

幅広い研究分野を横断しながら、
鉄道事業者のニーズに応える

この仕事のやりがいは、なんと言っても自ら開発した技術が鉄道事業で採用され実際に使用されることにあるでしょう。以前開発したレールの位置をより大きく移動できる締結装置は、現在東京駅をはじめ、複数の駅の線路で採用されています。実際に敷設された状況を自分の目で見た時は、研究開発者として達成感を感じるとともに、自分が鉄道の安全の維持・向上の一端を担っていることを改めて強く感じました。

また、私が在籍する軌道構造研究室は、幅広い研究分野の知見が必要とされます。私が学生時代に学んだ土木の知識は研究を進める上での基礎力となっていますが、土木の知識だけ備えていれば研究が成り立つわけではありません。例えばレールに関しては金属材料に関する知識が、締結装置ならそれに加えて樹脂やゴムといった材料に関する知識が不可欠です。そもそも、鉄道総研自体が分野横断型の研究所で、構造物や車両などと密接な関わりを持っています。研究部を横断して研究に取り組むケースも多く、分野を超えた研究者同士の密接な交流もまた鉄道総研で働く醍醐味と言えるでしょう。

世界的に見ても、日本の鉄道技術は非常に優れていると自負しています。その安全の維持・向上の一端を担えるやりがいと責任を自覚し、担当テーマである締結装置の性能調査方法のブラッシュアップに注力していきたいです。今後日本の鉄道技術が海外で役立つ日が来ることを心から祈っています。

コラム:技術士取得、兼務<国際規格>について

技術士取得を通して研究者の倫理観を改めて学ぶ
レール締結装置の国際規格化も大きな課題

鉄道総合技術研究所はその名の通り、研究と技術の双方を極めることを目的としています。研究に関しては博士号の取得を奨励していますが、「技術に関する能力はどのようにして明確化できるだろう」と常日頃から自問自答していました。熟考の結果、私が目指したのは国家資格である技術士の資格です。JR北海道に出向中、休日を資格取得の準備にあて、資格取得に至りました。この時期、倫理観も含めて、技術士に必要な能力を広く学べたのは私にとって大きな財産となりました。特に倫理観は、研究を進めていく上で根本を成すものであると実感しています。

また、2014年から2年間、鉄道国際規格センターで、鉄道軌道の国際規格化に関わる業務に携わりました。他国の技術者と議論を交わし、国際規格を開発するための枠組みを構築する準備を進めていったのです。残念なことに、日本は軌道分野の標準化が遅れています。国際規格に関してはなおさらのこと。現在は、私の後輩がこの業務を引き継いでくれています。私も引き続きレール締結装置に関する国際規格の開発に参加し、日本国内の国際規格開発作業部会の主査を務めています。