宮地 徳蔵

-先輩職員インタビュー-

プロフィール
宮地 徳蔵
熱・空気流動研究室 主任研究員
2004年入社

世界でも信頼される新たな装置を作りあげる
大型プロジェクトにやりがい

新幹線などの高速列車がトンネル内に発生させる圧力変動について研究をしています。特に、「トンネル微気圧波」の現象解明と低減対策に取り組んでいます。トンネルに入ると耳がツンとすることがあると思いますが、トンネルの中ではいろんな波が行き来しています。その波がトンネルの外に出てくるときに発生するのが「トンネル微気圧波」です。坑口付近で発破音を発生させたり、家屋の建具等をがたつかせたりして、沿線の環境問題を引き起こすことがあるため、その低減は重要なテーマです。理論解析、数値計算、実験室での模型実験に加え、現地に赴いての実験も行います。毎日数式とにらめっこしたり、あるときは実験室に閉じこもったり、またあるときは現地での実験のために日本国中に出張したり、と充実の日々を過ごしています。特に、現地での実験は、鉄道総研の研究者ならではの醍醐味だと思います。体力・知力ともに精一杯使い、とても疲れはしますが、研究室の仲間や現地の方々とまさに“同じ釜の飯を食う”日々は、学生時代の部活の合宿のように楽しいものです。

現在、注力しているのは、微気圧波に関する大型の実験設備の計画、建設です。現在使用している試験設備は、日本の国内外における鉄道の高速化に貢献してきましたが、これをさらに一歩進め、より大型でより再現性の高い実験ができる実験設備を作っています。この装置を完成させ、海外の研究所と実験データを比較し有用性を確認して、世界でも信頼され使用される装置として情報発信するのが今の目標。多額の予算を取っている大型のプロジェクトですので、大きな責任とやりがいを実感しています。

次世代に大きな期待
若い職員でもチャンスがある

現在携わっている新たな試験設備の開発について、強く思うのは、この設備の完成によって、次世代の研究者を育成するお手伝いをしたいということです。将来発生する新たな課題にソリューションを提案する研究をするためには、今の私の頭にはないような新たな発想が絶対に必要です。そうした発想は、若い研究者こそが持てるものだと思うのです。

鉄道総研は、職員が望めば、それを叶えてもらえるチャンスの多いフィールドです。私自身、理論解析や模型実験、数値試験、現地試験と、大学の研究室では得られないことも含め、幅広いことに挑戦させていただいています。また、出身大学の研究室で博士課程を取り、ドイツの国鉄と共同研究するため海外赴任も経験しました。こうした多様な経験のすべてが自身の糧になっていると思います。

もうひとつ、職場としての鉄道総研の特徴は、人との交流が活発なこと。本来、研究職というのは個人商店のようなもので、同僚などとの付き合いが希薄なものですが、鉄道総研の事業所が、ひとつしかないこともあり、同期や年齢の近い同僚などと家族ぐるみの付き合いもできます。こうした交流は、リフレッシュはもちろんこと、思わぬアイデアに出会うきっかけにもなります。ぜひとも、若い方には、人と仕事との出会いの多い鉄道総研の良さを利用し、さまざまなことに挑戦していただきたいです。

コラム:入社後の博士取得・海外経験について

●入社後の博士取得●

入社6年目に出身大学の研究室に社会人博士として入学しました。研究所での研究と博士課程での研究が直結していたので恵まれた環境で両立できたと思います。もちろん、研究所での研究活動と博士論文の執筆に向けての研究では違いがあります。大きな違いは、博士論文では「普遍性」が求められること。例えば、鉄道総研では日本の新幹線に当てはまる理論が完成すれば、それがひとつのゴールとなります。しかし、博士論文では、例えば、条件の異なる海外の高速鉄道でもその理論が適用できるかどうか、普遍性の証明が必要となります。博士号取得は苦労もありましたが、自分のしてきたことを客観的に評価するよい経験となりました。

●海外赴任●

入社11年目、ドイツのJRに相当するDBの研究所と共同研究を希望しミュンヘンに派遣されました。異なる国の間で鉄道が走るEU圏内では、明確なルールの策定・運用が進んでいます。微気圧波に関しても同様です。海外で学んだことは、このようなルール作りは文化の違いが大きく影響しているということです。DBの上司の「日本は海が国を守ってくれるが、EUにおいて国を守るのはルールだ」という言葉が印象に残っています。日本が鉄道技術を海外に輸出していくためには、このような文化の違いを認識しなければならないと思います。海外でじかに肌で感じることでしかわからない文化もあります。みなさんも、ぜひ鉄道総研から海外へ挑戦していただきたいと思います。