第97回 鉄道総研月例発表会:信号と通信

列車保安制御システムの安全性技術指針


輸送システム開発推進部(信号) 主任技師 渡辺 郁夫

 「列車保安制御の安全性技術検討委員会」を組織し、2年間の検討を経て安全性技術指針を作成した。今回作成した安全性技術指針は、安全性ライフサイクルと安全性インテグリティレベルの2つの概念を取り入れ、これに我が国において培ってきた列車保安制御システムの安全性技術や安全性管理のための要件を組み込んだ構成となっている。この考え方は今後国際的標準になると考えられるIEC1508とも整合のとれたものであり、我が国の安全性技術が国際的に評価を得るためにも有意義なものと考える。



列車接近検知センサの研究


輸送システム開発推進部(信号) 主任技師 若林 武夫

 列車接近検知に適応するセンサやシステム等を調査した結果、レーザレーダで列車位置を連続して測定し、走行速度、加減速度等をマイコンで求めながら列車追跡する列車接近検知装置を試作した。本センサは、旅客通路用踏切や「あかず」の踏切での列車停止監視するセンサに特に効果的と考えられる。調査した列車接近警報システムの開発状況や本試作システムの性能概要、1年間のフィールド試験データと天候との関連性等を発表する。



新型限界支障報知装置の開発


輸送システム開発推進部(信号) 主任技師 佐藤 和敏

 新幹線と在来線が近接並行する一部区間では、在来線列車の脱線等が新幹線列車に支障する事故などを防止するための「限界支障報知装置」が設備されている。しかし、現行装置は検知柱と機械スイッチを組み合わせた方式のため支障点を細かく特定できないなどの欠点を持っている。そこで、ホールを素子を用いた傾斜角センサを使用し、限界支障点を検知柱の建値単位である。10m毎に特定できるだけでなく、センサ状態を常時監視できる新しい限界支障報知装置を開発した。



電子踏切の雷害対策


輸送システム開発推進部(信号) 技師 川野 卓

 電子踏切制御装置(中間用)の雷サージ侵入による部品焼損やシステムダウン等の解明を目的に、多雷地区の踏切において約2年間にわたり雷サージ監視試験や構成部品の耐サージ性能試験を行い、諸特性の把握と弱点箇所の解明を行った。その結果、出力回線(しゃ断機、警報機等)および集中監視回線からの雷サージに弱いことが判明し、3極保安器の付加や、雷サージ移行率の低い整流器(FA形等)の採用等、経済的な対策が可能であることが分かった。



電気鉄道における電磁環境に関する研究と国際規格制定の動向


輸送システム開発推進部(列車制御) 技師(主席) 川崎 邦弘

 電気電子機器等が稼働することによって不要な電磁波(電波雑音)が発生し他の機器の動作に障害を及ぼす場合がある。IECの特別委員会であるCISPR(国際無線障害特別委員会)では、電波雑音の測定法と規制値を国際的に審議し、勧告している。電気鉄道も大電力を使用していることからCISPRの国際規格制定の対象となっており、勧告文書の制定作業が進められている。本発表では、国際規格制定作業の現状について述べ、今後の展開と技術的な課題について報告する。



ミリ波による大容量無線通信


輸送システム開発推進部(列車制御) 技師(係長) 山村 博

 旅客サービスの向上や、列車運行、保守の効率化にあたって、今後、列車と地上間における通信需要の増加が見込まれるが、ミリ波(周波数30〜300GHz)の利用により、大幅な通信容量拡大が期待できる。ここでは、ミリ波による大容量無線システムの実現に向けて行った、電波伝搬や伝送品質の分析結果、ならびにシステム化にあたっての基礎検討結果について報告するほか、ミリ波の大容量性を活かした利用システム例を示す。



鉄道施設・車両検査のための画像撮影装置の開発


輸送システム開発推進部(信号) 技師(主席) 太田 勝

 鉄道施設や鉄道車両は移動方向に長い形状を持つ。したがって検査業務の基本は、鉄道沿線や鉄道車両を見て回る徒歩巡回となる。鉄道沿線や車両基地は列車の往来があり、常に危険にさらされる。また屋外での作業のため、作業能率が悪い。連続走査画像撮影システムは、鉄道施設や鉄道車両の画像撮影に適したシステムであり、鉄道トンネルの内壁検査、鉄道軌道の検査、鉄道車両の検査への応用が考えられている。ここでは、連続走査画像撮影装置開発の現状について報告する。



連続走査画像による設備診断法の開発


輸送システム開発推進部(信号) 主任技師 鵜飼 正人

 ラインセンサカメラを中心とした連続操作画像撮影装置により、軌道や車両、トンネルといった鉄道の長大設備を効率的にかつ高い解像度で撮影することができる。得られた連続画像から、対象設備の劣化診断を行うための画像処理手法を検討した。トンネル壁画状態診断を中心に、画像処理アルゴリズムと前処理として必要な幾何学的歪み補正処理や融合処理、膨大な画像を効率的に管理するための画像データベースの概要と設計指針について報告する。


第97回 鉄道総研月例発表会

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