第101回 鉄道総研月例発表会:高速化とダイナミクス

高速化とダイナミクス


企画室 主幹 熊谷 則道

 ダイナミクスは運動、動的挙動を扱う力学との意味がある。列車の高速化にともなって、従前とは異なった新たな現象が見られてきた。300km/h の営業運転は、車両、電車線、軌道等で発生する動的挙動が安全や環境に及ぼす問題を解決して到達した成果であるといえる。そこで、高速化に関わる問題と対策、今後に想定される課題について概覧する。



車両のダイナミクス


車両技術開発事業部 部長 岡本 勲

 鉄道車両が軌道上を走行すると軌道の狂いなどによって車体が加振され、また、高速になると自励振動の一種である蛇行動が発生し、乗り心地が悪くなることがある。ここでは、こうした車両の振動や蛇行動の特徴、その低減法、防止法などを紹介する。更に、最近、JR各社で採用されている振子車の振動、乗心地、曲線を高速で走行する場合の走行安全性などの考え方を述べる。



軌道のダイナミクス


軌道技術開発推進部 部長 三浦 重

 軌道の高速化は、鉄車輪とレールによる走行技術の進歩と深く結びついており、この分野の技術的発展が高速化を支える一方、高速化への努力が技術の進歩を促してきた。とりわけ車両と軌道の動的相互作用は高速化の技術限界に関わる重要課題のひとつであり、たゆみ無い検討が続けられている。ここでは近年の鉄道高速化に関連して、走行安全、乗心地及び軌道の劣化に影響を及ぼす軌道ダイナミクスの基本課題について述べる。



集電系のダイナミクス


電力技術開発推進部 主幹技師 島田 健夫三

 集電系のダイナミクスとは、パンタグラフと架線との相互作用による力学であり、それぞれの特性を理解しないと良好な集電は実現しない。パンタグラフの動特性、今までに解析された主な集電理論、集電系のコンピュータ・シミュレーション、架線とパンタグラフの運動に特異な現象を生ずる速度について解説し、最近実用化された、ほくほく線や北陸新幹線の架線等について述べる。



環境のダイナミクス


環境防災技術開発推進部 主幹技師 前田 達夫

 鉄道の高速化を実現するためには、高速化に伴い顕著となる鉄道騒音ならびに空気力学的現象を緩和し、環境との調和をはかることが不可欠である。ここでは、速度向上に伴う新幹線騒音の低減対策と音源別寄与の変遷および列車速度350km/h で75db(A) を目指した鉄道総研の研究開発の取り組みについて述べる。また、トンネル微気圧波、列車通過時の圧力変動など環境問題を引き起こす空気力学的な現象とその対策法について述べる。



レール・車輪系のダイナミクス


基礎研究部 室長 石田 弘明

高速車両の走行安全性
 高速化に伴い顕著となるものの一つにレール頭頂面の凸凹に起因した高周波輪重変動がある。これが車両の走行安全性に及ぼす影響を輪軸の脱線シミュレーションにより検討し、安全評価指標として脱線係数の作用時間を提案した。また、主として低速で分岐器や曲線を走行する際の脱線要因となる左右静止輪重差が高速車両の走行安定性に与える影響についても検討した。ここでは、高速化に関連したダイナミクスのなかで、走行安全の話しを中心に報告する。


第101回 鉄道総研月例発表会

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