第103回 鉄道総研月例発表会:エコマテリアル・省エネルギー・リサイクル

鉄道と地球環境


材料技術開発推進部 部長 桐村 勝也

 地球温暖化や大気汚染等の地球環境問題がますます深刻になり、有限な枯渇資源をより有効に活用するためには、「持続的発展が可能な開発」を行う経済活動が求められ、鉄道事業も例外ではない。運輸機関に関する地球環境問題との係わりを考え、鉄道や自動車におけるエネルギー消費量とCO2排出量等の状況から、より環境に優しい鉄道にするための今後の課題を述べる。



鉄道と環境規格ISO14000


材料技術開発推進部(有機材料) 主幹技師 御船 直人

 地球環境規格ISO4000とは現在の生活環境を将来の子孫へも、レベルを低下させることなく引き渡すために、技術開発についても「持続ある発展」を目指すことを主眼として制定された規格です。具体的には、省エネルギー、リサイクルなどを含んでいます。ここでは、このISO14000と鉄道技術との関連を考察します。



鉄道電力における省エネルギー


電力技術開発推進部 部長 大浦 泰

 近年のエネルギー問題がクローズアップしてきた状況において、鉄道のエネルギー効率が良好であることから、地球環境の面からも鉄道が再認識されてきている。鉄道エネルギーの大半を占める電力量は、平成7年度において、JR・公民鉄を含めその使用量は210億kwhで、日本の総発電量8,000億kwhの約3%となっている。また、JR7社の電気料金は約1,362億円で、7社の運輸収入4兆500億円の約3.4%が電力料金となっている。他の輸送機関に比べエネルギー消費は少ないが、鉄道電力分野においても、省エネルギー技術の進展とピーク負荷の平準化を目標に開発を進めており、それらの概要についても述べる。



電気車の省エネルギー


車両技術開発事業部(駆動制御) 主幹技師 渡邉 朝紀

 電気車の省エネルギー技術は、10年ほどの間に大きな進展をみた。新製電気車はほぼすべてインバータ制御になり、電力回生ブレーキがよく使われる。最近の新幹線電車の走行抵抗は低く、500系新幹線電車は、0系新幹線電車の速度230km/hより少ないエネルギーで速度300km/hで走行している。通勤電車でもいろいろな工夫により更に省エネルギー運転の可能性がある。



車両用材料のエコマテリアル化


材料技術開発推進部(摩擦材料) 主幹技師 辻村 太郎

 地球環境問題の深刻化に対応して、各分野で使用する材料は、原料の採取から使用後の廃棄までを通しての環境への影響を考慮した材料の選択が求められ、また環境負荷の少ない材料の開発や使い方が求められている。ここでは、このエコマテリアル化の考え方を紹介するとともに、この観点に立ち今後の鉄道車両用材料について述べる。



ライフサイクルアセスメント(LCA)とその車両への適用


材料技術開発推進部(摩擦材料) 技師(主席) 土屋 広志

 ある製品のライフサイクル全体の環境に対する影響の評価、環境負荷低減のための意志決定支援ツールとしてLCA(Life Cycle Assessment)が注目されている。これは、環境負荷を定量的に評価する有効な手段ではあるが、その手法自体はまだ確立されていないのが現状である。そこで、鉄道車両に関するLCAの今後の発展の基礎とするために、主に0系新幹線車両を対象として、LCAに対する事前調査を実施した。



ライフサイクルアセスメント(LCA)とその地上設備への適用


材料技術開発推進部(無機材料) 技師 上田 洋

 近年、環境問題に対する関心が高まる中で、鉄道分野においても、使用する製品の環境への負荷を定量的に把握し、負荷低減への効率的な取り組みを行う必要がある。環境負荷を評価する手法としては、製品の原料から製造・使用・廃棄までの全過程(ライフサイクル)を考慮して評価する手法(LCA)が注目されている。ここでは、LCAを鉄道の地上設備へ適用するためのケーススタディとして、まくらぎを対象として評価を試みた。



廃ゴム材を用いた列車振動低減工法の開発


構造物技術開発事業部(基礎) 技師(係長) 羽矢 洋

 列車走行に伴って発生する振動は、騒音と並ぶ鉄道沿線問題として、何らかの対策が急がれている。総研ではこの列車振動の低減を目的に、従来、廃棄処分あるいは石炭の代用燃料としてしか利用されなかった古タイヤ等の廃ゴム材に着目し、これを振動低減材料とする振動低減工の開発を行ったので紹介する。



軌道用リサイクル吸音材


材料技術開発推進部(有機材料) 主幹技師 御船 直人

 リサイクル吸音材とは焼却場において家庭ゴミの焼却残渣(灰)から得られるガラス、茶碗、コップなどの不燃物を細かく砕くことによって細かい粒状とし、吸音性能を持たせたものです。これを列車走行に伴って発生する騒音を低減する目的で軌道上に設置したものが軌道用リサイクル吸音材です。ここでは、この優れた騒音低減効果と有効性について紹介します。


第104回 鉄道総研月例発表会

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