第106回 鉄道総研月例発表会:車両の制御・振動解析技術

新増圧シリンダを用いた新幹線用滑走制御システムの開発


車両技術開発事業部(ブレーキ制御)  主任技師 内田 清五

 新幹線を安全・迅速かつ確実に減速、停止させるために車輪滑走発生時、必要以上にBC圧力を低下させないことが重要となる。このため、空圧滑走制御の新増圧シリンダと新幹線用すべり率滑走制御の開発により、車輪の滑走程度に合わせた圧力制御とし、粘着係数を有効利用できるようになった。E3系新幹線電車での確認試験により、降雨および散水条件のブレーキ距離延伸率、滑走防止弁の振動加速度等に関して良好な結果が得られた。



新幹線用レールブレーキの基本特性


車両技術開発事業部(ブレーキ制御) 技師 松村 省吾

 車輪とレール間の粘着力に依存する新幹線のブレーキシステムは、高速になるほどブレーキ力を低下せざるを得ない。低下する高速域のブレーキ力を補う方法として非粘着ブレーキがあり、その1つとしてレールブレーキが挙げられる。ここでは、吸着うず電流レールブレーキを新幹線車両に適用するため、3次元シミュレーションにより構成を決定し、ベンチ試験により基本特性を確認した。



粘着力の急変に対応できる空転再粘着制御


車両技術開発事業部(ブレーキ制御) 技師(主席) 山中 章広

 高速走行時やレール凍結などの厳しい粘着力条件下や粘着力の急変する条件下では、従来の空転再粘着制御方法では空転・再粘着の繰り返しが発生し、安定した再粘着が得られなかった。そこで、新たに、「粘着力推定を行う空転再粘着制御」を開発したが、その開発に至る経緯や制御の概要、更に、空転・再粘着の繰り返しを防止して粘着の有効利用に効果のあることが現車試験により確認できたことについて試験結果を中心に述べる。



急勾配線区におけるディーゼル車両の空転制御


車両技術開発事業部(車両システム) 技師(主席) 村上 浩一

 急勾配が連続する線区を走行するディーゼル車両の空転対策として、機関出力をきめ細かく制御して車輪の駆動力の増減を行い、空転発散の抑制と収束を実現する空転制御方法についての研究・開発を行ってきた。粘着力を有効利用するための制御方法の課題としては、正確な速度演算、空転収束後の駆動力の回復方法などが挙げられる。駆動力の回復方法の一手法として、飛付ノッチ学習方式(仮称)を用いた制御による勾配起動試験の結果について紹介する。



永久磁石同期電動機のベクトル制御


車両技術開発事業部(電気動力) 技師(主席) 近藤 圭一郎

 (財)鉄道総研では、低騒音化、メンテナンス軽減、車両の低床・小断面化に有利な、歯車装置のない車輪一体形駆動方式の採用を我が国で初めて提唱し、研究開発を進めている。車輪一体形主電動機はその質量が全てばね下となることから、永久磁石同期電動機方式により小型軽量化を図っている。また、制御面でもベクトル制御による高速かつ正確なトルク制御等により、従来のV/f-すべり周波数制御による誘導電動機駆動システム以上の性能が期待できる。本発表では永久磁石同期電動機のベクトル制御と車両駆動におけるその効果について述べる。



狭軌アクティブコントロール高速台車の開発


車両技術開発事業部(車両情報制御) 主任技師 佐々木 君章

 在来線の大幅な速度向上を図るため、制御技術によって防振や操舵などの台車の基本機能を高める台車の開発を行った。一軸・連接、独立車輪、油圧強制操舵、アクティブサスペンションなどの特徴を持つ2種類の台車を試作した。これらは通常の台車に対して1/3程度の重量となり、大きく軽量化できた。次に、車両試験台で基本性能の試験を行い、操舵制御、振動制御の基本性能を確かめ、安定して制御できることを確認した。



車両の高周波振動に関するモード解析


基礎研究部(車両振動) 研究員 笹倉 実

 車体の曲げ振動や台車・車体の高周波振動低減の解析手法の一つとして実験モード解析について述べる。車体の曲げ振動モードは車体により大きく異なり、一体的な曲げ振動モードのみならず先頭車の場合は屋根、側、床の3面体がそれぞれ独立した幾つかの曲げモードも持つことがわかった。また、台車については台車枠の詳細な解析によりその特性を明らかにするとともに、実台車実験モード解析の実験上の問題について明らかにした。



新幹線中間車両のトンネル内動揺現象解析


基礎研究部(車両運動) 研究員(係長) 植木 健司

 新幹線の走行速度向上や車両の軽量化に伴い、トンネル区間において明かり区間とは異なる車両動揺現象が認められるようになってきた。1)中間車両で観測される現象の特徴、2)軌道狂いを入力、左右振動加速度を出力とした周波数応答特性の調査結果について述べる。現車試験データから車両を含む振動系全体の動特性の推定を行い、トンネル内で振動数および減衰能が変化していることなどを確認した。


第106回 鉄道総研月例発表会

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