第118回 鉄道総研月例発表会:新しい耐震設計法(基礎)

兵庫県南部地震における構造物の被害解析と新しい設計法


構造物技術開発事業部(橋梁) 主幹技師 村田 清満

 兵庫県南部地震は鉄道構造物にも大きな被害を与え、耐震設計法の見直しの必要性を認識させた。新しい耐震設計を作成するにあたっては、この地震の教訓を生かす必要がある。
 そこで、橋梁・高架橋の被害解析を行い、その破壊原因が、主として地震動の大きさと構造物の部材の破壊モードによること、そして兵庫県南部地震のような内陸地震を考慮し、部材および基礎の変形性能を指標とする耐震性能を照査する新しい耐震設計法を紹介する。



設計地震動の設定


構造物技術開発事業部(基礎) 主任技師 王 海波

 新しい耐震設計標準には、兵庫県南部地震の経験をふまえて、設計地震動は従来標準で考えてきた内陸近傍発生する海洋型地震による地震動に、新に内陸活断層による地震動を取り入れた。設計地震動は工学基盤面上設定し、その基本特性は弾性加速度応答スペクトルで規定する。建設地点の地震活動度および活断層の有無によって設計地震動の設定方法が変わる。内陸断層直上の地震動は過去地震での観測記録から統計解析で定めており、活断層と離れる地点の地震動はその距離によって補正する。



地震動の位相特性


構造物技術開発事業部(基礎) 技師(主席) 室野 剛隆

 具体的な設計地震動の時刻歴波形を作成するには「振幅特性」と「位相特性」という2つの情報が必要である。L2地震では構造物などの応答が塑性領域まで及ぶことを考えると、「位相」のモデル化が特に重要となる。耐震設計標準(案)で示される2つのL2地震動について、断層近傍地震については、断層破壊過程を考慮した理論的な手法、海洋型については表面波等の非定常性を考慮した経験的な手法をそれぞれ開発し、耐震設計用の時刻歴波形を作成した。



側方流動の評価と設計法


構造物技術開発事業部(基礎) 技師 澤田 亮

 地盤の液状化に起因する側方流動による構造物の被害は甚大であり、1995年に発生した兵庫県南部地震においては最も注目された被害の1つである。兵庫県南部地震を契機として、側方流動を考慮した耐震設計法が急務となり、模型振動実験と解析を実施することによりその対応を検討した。
 その結果、側方流動荷重の特徴は過剰間隙水圧比が概ね0.6〜0.7以上である地盤は流体的な挙動を示し、流動速度に依存する流体力が、水圧比が0.6程度を下回ると地盤変位量に依存する土圧力であることを確認した。



大型基礎の動的相互作用の評価


構造物技術開発事業部(基礎) 技師 斎藤 正人

 地震時には構造物と基礎の間に動的な相互作用が生じる。とくに大型基礎は大きな船がさざ波に揺れない様に、基礎の剛性・寸法による入力損失効果が生じ、地表面位置での自由地盤の応答に比べて低減された値を示すことがある。この地震動を有効入力動と呼び、その動特性を定量的に把握することで、より経済的な耐震設計が可能となる。ここでは弾性波動論に基づく有効入力動の評価手法と、実設計への適用方法について紹介する。



不整形地盤における地震動の評価


構造物技術開発事業部(基礎) 技師 室谷 耕輔

 地表面や基盤面が大きく変化しているような不整形地盤では、地震動が局所的に増幅することが、過去の地震被害の検討や地震観測等から指摘されている。そこで、本検討では、土木構造物の耐震設計に適用することを念頭に、100mオーダーの表層地盤における不整地構造を対象とし、2次元解析と1次元解析によってその影響を検討した。検討結果から、不整地地盤における地震動の特性を設計に反映するための評価法を提案した。



杭の塑性領域を考慮した設計法


構造物技術開発事業部(基礎) 技師 高瀬 直輝

 新しい耐震標準による杭基礎の耐震設計では、設計地震動に対する構造物の変形量(応答値)を動的解析により算定し、目標とする耐震性能を確認することとなる。従来と比較して大きな地震動を考慮するので、杭を支持する地盤や杭部材が降伏(塑性化)した後の状態を精度よく推定する必要がある。本発表では、新しい耐震標準による設計法の概要と、その設計法を確立するために行った検討の内容について紹介する。



地盤の変形を考慮した開削トンネルの設計法


構造物技術開発事業部(基礎) 技師 西山 誠治

 地下構造物は、従来、地震に対して安全と考えられていたが、1995年に発生した兵庫県南部地震では、大開駅を中心とした開削トンネルが大きな被害を受けた。そこで、開削トンネルの地震被害の調査および解析の実施により、被害の原因、そのメカニズムおよび地震被害の説明可能な応答解析手法を調査した。本報告では、これらの結果を反映した開削トンネルの耐震設計法を紹介する。


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