第127回 鉄道総研月例発表会:WCRR'99(世界鉄道研究会議)報告会

WCRR'99開催の経緯


理事 佐藤 泰生

 第4回世界鉄道研究会議(WCRR'99)は、昨年10月19日より6日間にわたり、「21世紀の鉄道と社会を創造する新技術」をメインテーマとして、国立研究所において開催された。この会議は鉄道総研の国際セミナーを契機として始められ、今までに「鉄道研究開発戦略」、「国際共同研究の可能性」などのテーマにより、パリ、コロラド、フィレンツェで開催されてきた国際会議で、鉄道総研にとって意義深いものである。



WCRR'99の実施概要


企画室 次長 熊谷 則道

 第4回世界鉄道研究会議(WCRR'99)は、700名を越える参加者を迎え、鉄道総研、国立研究所で幕を開けた。会議のメインテーマを「21世紀の鉄道と社会を創造する新技術」とし、鉄道を発展させ、21世紀の社会の創造に寄与する鉄道の New Technology に焦点をあてた。顧客サービス、列車制御、車両、地上設備、環境保全等 238 件の論文発表が行われ、質疑応答も活発であった。会議の目的、意義等を振り返り実施状況を報告する。



ワークショップの概要


OA開発推進部(情報システム) 主任技師 後藤 浩一

 WCRR'99のプレイベントとして10月18日の夜に、世界各国から様々な分野の有識者を招いて二つのワークショップが新宿のホテルで開催された。会議のテーマである新技術に関しテクニカルな観点とマネージメントの観点からそれぞれ議論が行われ、その成果が WCRR'99 のオープニングセッションで紹介された。また、この成果は次回のドイツでの WCRR2001 の計画にも活用される。ここでは、そのワークショップの概要を紹介する。



顧客サービス関係の論文紹介


OA開発推進部(情報システム) 主幹技師 田中 幹夫

 顧客サービス関係では主に料金徴収システムに関する論文が発表された。JR東日本からは非接触ICカードによる乗車券システムの開発経緯と実用化計画が発表された。またポルトガルからは1人乗務の際の効率的な乗車券扱いの方法が、フランスからは欧州全域での相互運用性を重視したスマートカードによるシステムが開発された。JR東海、JR西日本からは複数枚乗車券を同時処理可能な高性能の自動改札機に関する発表がなされた。



列車制御関係の論文紹介


輸送システム開発推進部(列車制御) 主幹技師 平尾 裕司

 列車制御関係では、インテリジェント交通システム、安全性技術、マンマシンインターフェース、列車追跡、踏切の4つのオーラルセッションと、インテリジェント交通システム、安全性技術、高安全ソフトウェアの3つのポスターセッションで合計38件の論文発表が行われた。これら列車制御関係の論文の概要について紹介する。



車両関係の論文紹介


基礎研究部(車両運動) 主任研究員 藤本 裕

 台車技術、車両状態監視、車体傾斜、Maglev に関する口頭発表と安全性、ブレーキ制御、駆動装置、貨物輸送等に関するポスター発表があった。台車についてはアクティブサスペンションの研究、車体傾斜については TGV Tilt の紹介があったが、車両技術よりむしろ乗り物酔いや乗り心地の評価法に関する基礎研究が話題の中心であった。また、車両の衝突シミュレーション、IGBT 主変換装置、将来のブレーキ技術等への関心が高かった。



インフラ関係の論文紹介


基礎研究部(軌道力学) 室長 石田 誠

 インフラ関係の論文としては、合計71編が論文集に掲載され、軌道保守管理、軌道監視、バラスト軌道および車輪/レール相互作用の4つの口頭発表セッションで17編、軌道ライフサイクルコスト、カテナリ式集電システム、レール監視およびスラブ軌道の4つのスペシャリストセッションで17編、トンネル、車輪/レール相互作用、橋梁、駅と構造物、軌道監視および地上設備の6つのポスターセッションで32編の合計66編が発表された。



環境関係の論文紹介


環境防災技術開発推進部(空力・騒音) 担当部長 前田 達夫

 WCRRにおける環境のセッション(Eセッション)では、横風問題(E01)、鉄道騒音(E02)、パンタグラフ(E03)、空気力学(ES1)、音源対策(ES2)、電磁環境(EP1)、エネルギー(EP2)、の6つのセッションが開かれた。ここでは、電磁環境とエネルギーのセッションをのぞく鉄道騒音問題、横風問題、その他の空気力学的現象に関する論文の紹介をする。



浮上式関係の論文紹介


浮上式鉄道開発本部(電磁路) 室長 藤本 健

 磁気浮上式鉄道に関する論文は4件発表された。イタリアからは永久磁石を軌道上に敷き詰めて、車上の永久磁石との反発力で浮上して走るシステムを、ドイツからはトランスラピッドの最近の開発状況とハンブルク〜ベルリン間の営業運転について、日本からは山梨実験線の運転制御および電力供給面からの高速すれ違い、待避、追い越しなどの試験結果と車両側からは浮上特性やすれ違い時の圧力変動などの試験結果の紹介があった。


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