第131回 鉄道総研月例発表会:軌間可変電車の開発 −特徴と性能−

GCT 開発経緯とプエブロ試験概要


事業推進室 GCT 担当部長 小田 和裕

 軌間可変電車の開発は3両編成の試験車を使った実証試験の段階にある。100km/h までの狭軌走行試験の後、車両は米国コロラド州プエブロの標準軌で 1999年 4月から高速性能試験と耐久試験に供された。累積 30万キロの走行が終了し、現在は 60万キロを目標に試験が継続中である。なお、2000年 7月からは軌間変換走行試験もプエブロで開始された。


軌間可変電車の概要


車両制御技術研究部 ブレーキ制御 研究室長 高尾 喜久雄

 軌間可変電車は、新幹線標準軌と在来線狭軌の直通運転システムを開発するために試作した3両編成の試験電車であり、標準軌と狭軌にゲージが変換できる軌間可変台車を装備し、新幹線の交流 25kV(50/60Hz) と在来線の交流 20kV(50/60Hz)、直流 1.5kV に対応可能な電気方式を有する新幹線高速車両である。車体は在来線の車両限界を適用したいわゆる 20m車で、アルミニウム合金製の気密構造である。車内には計測装置を搭載しているので接客装置はない。



軌間可変台車のしくみ


車両構造技術研究部 走り装置 研究室長 徳田 憲暁

 日本の高速列車は電車方式が主であり、軌間可変台車の開発も現在実用化されている客車用の動力を持たない構造ではなく、動力を持った台車が必要となる。これに対し、車輪と主電動機を一体とした独立回転方式の台車(A方式台車と呼ぶ)と、平行カルダン構造を用いた左右車輪一体回転方式の台車(B方式台車と呼ぶ)の2種類を開発中である。これらの台車の特徴・構造ならびにそれぞれの軌間変換動作について解説する。



軌間変換装置のしくみ


軌道技術研究部 軌道管理 主任研究員 高木 喜内

 軌間変換装置は、軌間の異なる線区の接続点に設置され、軌間可変電車が本装置上を速度 10km/h 程度で通過するだけで車輪の間隔を変えるものである。軌間変換電車は、軌間変換機構の異なるA台車とB台車を装備しているので、軌間変換装置は両台車の軌間変換機構に対応している。この装置は現在米国コロラド州プエブロ市にある試験線に設置され、約1万回の軌間変換試験により耐久性を確認中である。



試験線の軌道状態と速度向上


軌道技術研究部 軌道管理 研究室長 高井 秀之

 米国コロラド州プエブロ市にある輸送技術センター(TTCI:Transportation Technology Center Inc.)は、一周 21.7km におよぶ高速試験線を有している。軌間可変電車はこの試験線を使用して、速度向上試験で走行安全性や各種性能を確認した後に、約 60万キロの長期耐久試験を実施中である。この試験線の線形、軌道構造、軌道状態の概要を紹介するとともに、速度向上試験のために実施した分岐器交換と軌道整備の状況と、地上測定結果を報告する。



軌間可変台車の運動特性


車両構造技術研究部 車両運動 主任研究員 佐藤 栄作

 軌間可変台車は大きく分けて次の二つの形式、(1)車輪直接駆動独立車輪方式(A方式台車)と、(2)主電動機を台車枠に装架した平行カルダン方式(B方式台車)について開発を進めてきている。本発表では、各種の走行試験が進んでいる車輪直接駆動独立車輪方式のA方式台車について述べる。A方式の台車は、独立車輪とボギー角連動操舵機構を組み合わせたものであり、主に操舵による曲線横圧の低減効果や、走行安定性について、理論解析と各種走行試験の結果について紹介する。



軌間可変電車用主電動機の概要


車両制御技術研究部 電気動力 研究室長 松岡 孝一

 軌間可変電車においては軌間に応じて位置の移動する車輪に動力を伝達する必要がある。そのため車輪一体形主電動機を採用し、機構の簡素化を図った。主電動機として、永久磁石同期電動機を採用し、軽量化と高効率化を進めた。これまでに、衝撃試験用主電動機および走行試験用主電動機を試作し、諸試験を実施した。その結果を踏まえ、プエブロ実験線での高速走行試験電車用の主電動機を完成させた。これまでの開発の経緯、試作した主電動機の概要、試験結果等を紹介する。



主回路システムの特長


車両制御技術研究部 電気動力 副主任研究員 近藤 圭一郎

 GCT では軌間可変台車を比較的容易に構成するため、車輪一体形永久磁石同期電動機を採用しており、一般的に用いられている一体輪軸による誘導電動機駆動方式とは異なった主回路構成や制御方式が必要となる。また、AC25kV〜DC1.5kV までの新幹線在来線全ての電気方式に対応可能となっており、従来の新在直通車両とは異なった主回路構成とする必要がある。本発表では、上記のような GCT特有の仕様条件に対応した、GCT用試作主回路システムの構成や制御系について述べる。また、併せて、これまでに得られた試験結果等についても触れ、試作システムの概要を紹介する。


ブレーキ装置と性能


車両制御技術研究部 ブレーキ制御 副主任研究員 南京 政信

 軌間可変試験電車は、回生ブレーキ併用電気司令式空気ブレーキを採用し、新在直通運転を考慮して新幹線の粘着パターン制御と在来線のブレーキ距離 600m以内の性能確保を目標とした。さらに、車輪の軌間変換動作に追従して枕木方向に移動するキャリパ装置を開発し、搭載した。本講演では、車両に搭載したブレーキ装置のシステム構成、制御装置、基礎ブレーキ装置と、これまでに得られた主な試験結果を報告する。

              
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