第132回 鉄道総研月例発表会:システム開発の最近の成果

鉄道総研における情報技術適用研究の動向


情報・国際部 部長 荻野 隆彦

 鉄道総研においては、エージェント技術、インターネット技術、データマイニング技術等を利用した情報システムの開発を研究している。これらの技術以外に総研で今後検討を深めてゆきたいものとして、XML言語利用技術やフォーマルメソッドを用いたソフトウェアの検証技術がある。前者は、インターネット社会での情報交換、提供の基盤的なものであり、後者は、信頼性が要求される信号関係のソフトウェアのみならず、情報システムのモデル構築のペースになる重要な基礎技術である。


鉄道のための情報通信プラットフォーム


輸送情報技術研究部(旅客システム) 主任研究員 土屋 隆司

 将来の鉄道において情報通信技術の円滑な導入および各種システムの効率的な運用を可能にするためには、制御から利用者情報サービスに至るさまざまな応用で利用可能な情報通信プラットフォームの構築が不可欠であると言われている。本発表では、鉄道応用が可能な汎用移動通信技術の要求仕様の特徴について、欧州の動向を踏まえて報告する。



モバイルエージェント技術を利用した営業支援システム


信号通信技術研究部(通信) 研究室長 関 清隆

 ネットワークで接続されたコンピュータを移動しながら処理を実行するモバイルエージェントは、通信量の削減が期待できるなどの効果があるため、移動体通信環境への適用が有望視されている。この技術を適用して、営業職員が携帯するモバイル端末(ノートパソコン等)から顧客情報や旅行商品情報を保持するデータベースにアクセスして情報検索を実行するシステムを試作したので、その仕様及び性能にいて報告する。



運転整理案評価のための列車別乗車人員推定法


輸送情報技術研究部(運転システム) 研究員 平井 力

 旅客の観点から運転整理案を提示できる運転整理支援システムを構築するためには、実際に列車が運行されたときの乗客数を推定することが必要となる。特に大都市圏の列車運行に必要な乗降時間が増大し、その列車の発時刻が遅れる。また、ある列車が遅れると、その列車には旅客が集中する。列車運行と旅客数の間にある。このような動的相互作用を考慮した乗客数推定手法を紹介する。



インターネットアプリケーションのOAシステムへの応用


情報・国際部(OA) 課員 宮下 美貴

 イントラネット型OAシステムの実現可能性を評価するために、プロトタイプシステム及びサーバの多重利用状況を模擬するシミュレータを開発した。これにより応答時間等について測定し、実使用時の応答時間を予測した。また、イントラネット型次世代(OAシステムのシステム構成法)についても提案する。



駅利用者のための対話的情報提供システム


輸送情報技術研究部(旅客システム) 副主任研究員 松原 広

 近年、交通バリアフリー法案などが注目されているように、これからの日本にとって人にやさしい環境の実現が求められている。本発表では、駅の利用者に対して情報の面から支援することを目的に、従来の不特定多数に対する掲示板的な案内ではなく、個々の利用者に対して対話的な情報提供を行うシステムのあり方を述べるとともに、鉄道総研で開発を進めている視覚障害者を対象とした音声による対話的情報提供システムについて紹介する。



図面生成機能を備えた設備管理システム


輸送情報技術研究部(設備システム) 副主任研究員 長田 実

 設備管理システムにおいて、図面を図面データとして保持せずに、図面を構成する設備の属性データの一部として保持し、必要に応じて属性データから生成するシステム構築手法を開発した。これにより、従来システムの課題であった図面と台帳間の整合性維持、図面登録作業の簡素化、システムの軽量化等の点に対する効果が期待できる。ここでは、概要および導入時の効果や留意点等を紹介するとともに、現在の開発状況について報告する。



輸送業務や保守業務支援のためのデータマイニング手法


輸送情報技術研究部 部長 田中 幹夫

 データマイニング(Data Mining)としては「データの Mine(鉱山)から掘出す」という意味で、膨大な情報の山を分析し価値ある情報を発見する、取出して利用する事を目的としている。近年は情報システムの導入拡大が著しく膨大なデータの蓄積が始まっている。鉄道において営業、輸送、メンテナンス等各分野でシステム化が進展し大量データが蓄積されつつある。これらを活用し業務改善を図る事は今後重要である。ここではデータマイニング技術の鉄道の各種業務への適用手法の研究、現実のデータ分析へ適用し解析手法の提案を行った結果を紹介する。

              
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