第133回 鉄道総研月例発表会:鉄道の安全性・快適性向上のための人間科学

新幹線トンネル内列車すれ違い時の集電性能解析


電力技術研究部(電車線構造) 主任研究員 森川 武雄

 近年の新幹線における最高速度 270km/h〜300km/h に達する列車速度の向上は、低空力音形パンタグラフの導入ともあいまって、トンネル区間で架線設備に懸念すべき兆候が若干認められるようになってきた。そこで、集電系の立場から、列車の高速すれ違いを含めて、トンネル内走行時にパンタフラフが受ける空力的状況を明らかにすることが必要となった。本発表は、これらについて、最近の東北新幹線での測定結果から報告するものである。


CSトロリ線の長期耐久試験結果


電力技術研究部(集電管理) 副主任研究員 小比田 正

 心材の鋼に張力と耐摩耗性を負担させ、周材の銅に導電性を持たせた銅覆鋼トロリ線(CSトロリ線)の開発を行い、昭和63年3月に東海道新幹線の新駅として開業した新富士と掛川の副本線に架設し、摩耗特性、耐久性等の確認を行ってきた。本発表では、掛川駅に架設後約11年間の摩耗推移の調査結果、および撤去された試験品についての腐食や強度等の劣化状況の調査結果を報告する。



トロリ線の凹凸測定とその評価法


鉄道力学研究部(集電力学) 研究室長 網干 光雄

 トロリ線の凹凸(支持点間の高さ変化やハンガ間弛度、ドラム巻きくせ、波状摩耗等を含むトロリ線の静高さ)は、架線・パンタフラフ間の接触力変動の大きな要因の一つである。本発表では、トロリ線凹凸の精密測定法とその測定事例を紹介し、接触力変動に与える影響を解析する。またハンガ位置等を含めた架線設備精度を評価するため、トロリ線凹凸測定結果を用いた電車線設備状態の動的評価法について述べる。



高調波電圧が絶縁物の絶縁特性に与える影響


電力技術研究部(き電) 研究室長 中道 好信

 波形制御により電力エネルギーの高効率利用を実現するパワーエレクトロニクス技術が急速に発展し、家電から電力分野まで広範囲に適用されている。しかし、波形制御に起因する高調波電圧に対する絶縁物の絶縁特性については、明らかにされていない現状にある。今回、低密度ポリエチレンの絶縁特性に関する基礎的な実験を行うとともに、電力ケーブルを使った長期課電試験を行った。この結果、有益な知見が得られたので報告する。



列車制御論理における実時間処理の検証法


信号通信技術研究部 主任研究員 福岡 博

 列車制御装置は、基本的には(1)耐故障性と実時間性の両方を備えた(2)互いに通信しながら自律的に動作するプロセス(分散システム)であり、将来的にこの形式での発展が期待される。ここでは、このような状況で耐故障性を実現する基本的な方式である「ネットワーク内の複数のプロセッサで処理を行い多数決を採る」方式について、その実時間性の検証を確率的ペトリネットモデルを用いて行う手法について報告する。



鉄道沿線における電波伝搬特性の推定手法


信号通信技術研究部(通信) 副主任研究員 川崎 邦弘

 無線通信技術の進歩に伴い、鉄道でも電波利用への期待が高まっている。電波は伝搬途中で様々な要因によって干渉や減衰を受け、伝送品質の劣化や伝送不能等を引き起こすため、電波伝搬特性を正確に把握することが不可欠である。総研では、鉄道沿線の地図等を利用して詳細な電波伝搬特性を推定計算する手法を検討し、提案してきた。本発表では、提案した推定法の基本部分をソフトウェアとして実現したので、そのアルゴリズムと機能、計算精度について報告する。



超音波式踏切障害物検知装置の開発


信号通信技術研究部(信号) 主任研究員 佐藤 和敏

 踏切事故防止の有効な手段として、踏切内にエンスト等で停止した自動車などを自動的に検出して、その検知情報を列車に知らせる踏切障害物検知装置の設置がある。しかし、従来装置は橋梁等に近接している箇所に設置できない、積雪地区で使用できないなどの問題点を抱えている。そこで、ちょう音波センサを踏切道上に配置して定期的に超音波を路面に照射し、それにより得られる反射波から障害物を検知する装置を開発した。ここでは、装置の構成や検知性能等について概説する。



新しい列車検知装置(バリス)式の開発


信号通信技術研究部(通信) 主任研究員 西堀 典幸

 地方交通線などの閑散線区に適用する新たな概念の列車制御システムを開発している。このシステムは既存の回線を使用し、線区の連動処理を一括で行い、列車検知は保守や軽量車両導入時の短絡感度などの問題から、軌道回路に代わる新しい方式とする。本発表では、新に開発したマイクロ波バリスを用いた、非接触で列車追跡型のバリス式列車検知装置(COMBAT)の機能概要、現地試験による性能評価などについて紹介する。

              
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