第136回 鉄道総研月例発表会:鉄道力学と現象解明

鉄道施設における波動現象の特徴


研究開発推進室 主管研究員 真鍋 克士

 架線、線路、橋、トンネル、編成列車などの鉄道の施設に生じる振動はその設備自身あるいは周囲の空気や地盤を媒体にして波動として伝播する。そこで振動を波動の観点から見ると、様々な施設に共通する特徴が存在する。すなわち、周期・多層構造を伝播する波動の特異性や多点加振による波動の干渉、移動荷重によるドップラー効果などである。1例としてトロリ線とレールの波状摩耗の発生機構を取り上げ、その共通点について述べる。


架線・パンタグラフ間の接触力変動解析


鉄道力学研究部(集電力学) 研究員 臼田 隆之

 架線・パンタグラフにおける集電系では、トロリ線を伝わる波動や、トロリ線の凹凸(支持点間の高さ変化、ハンガ間弛度、波状摩耗など)が、パンタグラフの接触力変動に影響を与える要因の一つである。また、車体の上下振動も接触力変動の一要因と考えられる。本発表においては、トロリ線の波動や凹凸に起因する接触力変動の概要を述べると共に、車体の上下振動によって生じる接触力変動を解析した結果についても紹介する。



車両の脱線解析


鉄道力学研究部(車両力学) 研究室長 石田 弘明

 車両の脱線現象を理解するため、基本的な一輪軸の乗り上がり脱線に関する解析結果を紹介した後、車両が急曲線を低速で通過する場合を取り上げ、車両走行時の脱線に及ぼす車輪踏面形状などの主な車両緒元や静止輪重比の影響に関するシミュレーション結果について述べる。また、車両が脱線に至るまでの車輪/レール間作用力の変化や台車の挙動等についての解析結果例もあわせて報告する。



車体まわりの空気流れと車両運動との相互作用


鉄道力学研究部(車両力学) 研究員 中出 孝次

 トンネル内を走行する高速列車の車両動揺現象について、車体周りの空気力と車両の運動との相互作用に着目した研究を行っている。車両運動による車体周りの流れ場へのフィードバックを調べることを目的として行った、車両モデルを強制加振変位させたときに発生する空気力についての風洞実験結果、および、車体周りの流れ場と車両運動との統合シミュレーションの計算例について報告する。



表面粗さ等に着目した粘着と接触応力の解析


鉄道力学研究部(軌道力学) 副主任研究員 陳  樺

 レールと車輪間に水が介在する場合は、粘着係数が速度の増加と共に減少し、駆動時の空転、制動時の滑走が生じやすくなる。一方、レールと車輪の転がり接触疲労により、通過トン数の増加と共にレールシェリングが発生しやすくなる。これらの現象に共通するメカニズムとして、レールと車輪表面の極微小な突起同士の接触と水の影響が考えられる。ここでは、表面粗さと水の挙動に着目した粘着解析と接触応力について紹介する。



軌道の動的応答解析


鉄道力学研究部(軌道力学) 研究室長 石田 誠

 車両の走行により軌道には動的な負荷が与えられ、軌道を構成する部材に振動が励起され、あるいは動的な変形およびその繰返しによる塑性変形(軌道狂い等)が生じる。ここでは、軌道の構成部材の劣化・破壊特性あるいは車輪フラット等による衝撃荷重の軌道への影響評価、さらには道床沈下則との結合による軌道狂い進みの予測等、軌道保守および材料保全の向上に果たす動的解析モデルの現状と今後の展望について紹介する。



鉄車輪系の車両・構造物動的相互作用シミュレーション


鉄道力学研究部(構造力学) 研究室長 松本 信之

 鉄道車両走行時における軌道や橋りょうなどの構造物の動的応答を評価するための相互作用シミュレーション解析法として鉄車輪系ではDIASTARS、浮上車両系ではDIAMAGSという解析システムを開発している。ここでは鉄車輪系のDIASTARSの機能を紹介するとともに、これを用いて検討している車両の乗り心地や走行安全性を指標にした橋りょうの変形限度などの解析例や今度の展開について紹介する。



浮上式系の車両・構造物動的相互作用シミュレーション


鉄道力学研究部(構造力学) 副主任研究員 曽我部 正道

 車両・ガイドウェイ・構造物を一括して取り扱うことができる、動的相互作用解析法について報告する。車両は、バネ・マス・ダンパーのリンクモデルにより任意両数をモデル化できるものとした。ガイドウェイ・構造物は、有限要素法により任意構造形式をモデル化できるものとした。また、同解析手法により側壁ビーム方式ガイドウェイの性能を評価し、同方式においてガイドウェイの水平方向の動的応答が非常に重要であることを明らかにした。最後に、実車走行試験により同ガイドウェイの動的応答特性を確認した。

              
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