第143回 鉄道総研月例発表会:シンポジウム「これからの駅を考える」

 駅は本来、列車に乗降する場として出発したものであるが、こんにちの駅の姿をみると、様々な要素が複合化されるとともに、街のシンボル・街の中心としての機能も有している。一方、少子高齢化やITの発達、大量生産・大量消費から環境・個性を重視する方向に転換する国民の生活感など、社会環境の変化に対応して鉄道システム・駅が大きく変わろうとしている。
 これからの駅は、求心力をもつ都市施設として更に活性化すると共に、駅を利用する人々に対しても、通過する場から人が集う・交流する場としての空間を提供する必要があろう。
 そこで、鉄道の将来に向けて「人が集まる魅力的な駅」を長期的なスタンスで考えるとともに、集まった人々への対応、また駅本来の基本機能との整合性等について、人と駅の関わりを中心に考えるシンポジウムを開催する。


第1部 「駅の課題 現状と展望」


都市の中の駅


構造物技術研究部(建築) 主任研究員 浜本 敏裕

 駅の性格は立地により大きく左右され、とりわけ都市において駅はその周辺施設と密接な関係にあり、社会的な背景の元、相互に影響しながら発展してきた。駅を利用するために集まる人との関わりを中心に、駅前広場を含めた他交通機関との乗り継ぎ利便性(インターモーダル)と、駅周辺の商業施設やイベント施設などとの関連(合築・複合化と集客)について、駅の現状の課題を整理すると共に5〜10年の近未来の展望を述べる。



駅における人の流れ


構造物技術研究部(建築) 主任研究員 青木 俊幸

 駅においては、列車の着発に伴う旅客の波動的増減があり、こうした流動をスムーズに処理できることが、基本的に求められる機能であることは将来的にも変わらない。そこで、駅の中の人の流れをいかにしてスムーズなものとするか、バリアフリー・ユニバーサルデザインとの関連も含めて述べる。 更に流動ばかりでなく、人と人とのふれあいの場とするため、留(とど)まり・滞在する空間としての側面についても合わせて述べる。



駅のIT


輸送情報技術研究部(旅客システム) 研究室長 後藤 浩一

 駅におけるIT(情報技術)の利用は、従来は主として省力化という観点で進められてきたが、今後は旅客の利便性の向上を図るという側面もより重視されるものと思われる。ここでは、駅における情報技術の今後の展開として、不特定多数のサービスから個人ニーズに対応したサービス、局所的な情報通信技術を用いた現場での情報発信等について、鉄道以外での関連動向も踏まえて述べる。



駅のアメニティ


構造物技術研究部(建築)主任研究員 藤井 光治郎

 旅客が長く留まらない通過型の駅では、アメニティはあまり重視されていなかったが、交流の場としての駅では大きな要素となると考える。駅のアメニティは、人間が直接知覚する物理的環境要素(温熱環境、音環境など)に大きく依存する。ここでは、主に温熱環境や音環境について、実態を述べると共に近未来の駅アメニティ向上のため、経済性や地球環境を考慮して建築設計と組み合わせて解決する制御技術について述べる。



特別報告
鉄道事業者の取り組み


東日本旅客鉄道(株)事業創造本部担当課長 前田 厚雄

 JR東日本の「人にやさしい駅づくり」について最近の取り組みを報告する。


第2部 パネルディスカッション「2020年の駅−人と駅の関わりを中心として −」  

 20年後の駅を見通して、駅の在り方、求められる機能、開発すべき技術などを議論する。

(1) 基調講演 渡辺仁史(早稲田大学理工学部教授)
(2) パネラー講演叶 篤彦(JR東日本取締役事業創造本部担当部長)
安藤恵一郎(日本鉄道建設公団設備部長)
坂本菜子(坂本菜子コンフォートスタイリング研究所所長)
青木俊幸(構造物技術研究部(建築)主任研究員)
(3)ディスカッション基調講演者+パネラー+フロア 

               



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