第151回 鉄道総研月例発表会:最近の環境技術

鉄道総研における環境問題に関する研究の動向


環境工学研究部 部長 前田 達夫

 環境問題は21世紀の重要課題の一つであり、鉄道においても、環境に及ぼす負荷を小さくし、環境に優しい鉄道の実現をはかることが求められている。ここでは、鉄道総研が実施してきた環境問題に関する研究の動向、すなわち、騒音、振動、低周波音問題、PCB処理技術、電磁界の生物的影響評価、生物による環境モニタリングと汚染物の除去、無害な雑草の防除などに関する研究の動向を紹介する。


車両表面からの空力音計測技術の開発


環境工学研究部(騒音解析) 副主任研究員 長倉 清

 風洞実験において、指向性収音装置での測定データから、模型表面に分布する空力音源の遠方点に対する寄与を推定する手法を提案した。1/5縮尺E2系車両模型を用いた風洞実験を実施し、提案した手法の妥当性を実験的に確認すると同時に、車両各部から発生する空力音の地上25m点での騒音レベルを推定した。1/25縮尺車両模型を用いた風洞実験を実施し、車両間隙部空力音の車両断面形状による差はほとんどないことを明らかにした。



鉄道車両下部の音源分布の可視化


環境工学研究部(騒音解析) 副主任研究員 小方 幸恵

 鉄道の車両下部音は、転動音、空力音および車両機器音から構成される。また、そのうちの転動音は、レールからの放射音と車輪からの放射音から構成される。これらの車両下部音の分離を目的として、車両下部の条件によって生じる音源分布の差異を可視化した。音源分離には、新幹線および在来線のレール近傍における音響インテンシティマイクロホンおよび楕円体型収音装置の測定結果を用いている。



数値解析による空力音源分布の評価法の開発


環境工学研究部(空力音響) 研究員 高石 武久

 鉄道総研では,空力音の現象解明と低減対策法の開発を目指して,大型低騒音風洞などを用いた実験的な研究開発方法に並行して,風洞実験結果を検証したり風洞実験によらない補足データを得るため, CAA(Computational Aeroacousitics)の開発を進めている。本発表では,その手法について概説するとともに,高速鉄道車両の台車収納空隙部の空力音について行なったシミュレーション結果について述べる。



振動遮断工の防振効果算定手法の開発


防災技術研究部(地震防災) 研究室長 芦谷 公稔

 地盤振動対策として比較的大きな効果が期待できる振動遮断工について、その防振効果の定量的な評価手法を開発した。この手法は、地盤構造、地中壁の規模(深さ、厚さ、施工延長)および材質(密度、弾性定数、減衰定数)等をパラメータとして防振効果を定量的に算定することができ、また、有限要素法などの数値シミュレーションに比べるとはるかに簡便なので、振動対策として振動遮断工を計画・設計する際に有用な手法になる。



化学物質による雑草管理


環境工学研究部(生物工学) 主任研究員 早川 敏雄

 日本は世界的にみて雑草の種類や発生量が最も多い国の一つであり、鉄道沿線でも雑草の発生は避けられない。このような雑草の繁茂には、保線や美観の問題から適切に対処する必要がある。しかし、雑草対策には多大な経費がかかるため、除草剤の使用による省力化が期待されている。その一方で、除草剤による環境汚染を心配する声も挙がっている。本発表では、除草剤を用いる雑草管理技術の実際と除草剤と環境問題に関する知見について述べる。



化学物質管理促進法(PRTR法)の実際


材料技術研究部(防振材料)主任研究員 江成 孝文

 「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律」はいよいよ集計データの公表段階に入ってきました。本法の大きな柱であるPRTR制度(Pollutant Release and Transfer Register)の概要や鉄道工場における化学物質排出量の推計方法の検討例を紹介するとともに、今後の事業活動に求められるであろう「環境リスクコミュニケーション」の推進など、事業者の対応と情報開示など法律の特徴について述べる。


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