第155回 鉄道総研月例発表会:最近の軌道技術

最近の軌道の話題


軌道技術研究部 部長 高井 秀之

 軌道の基本構造は鉄道発祥直後から現在に至るまで変っていないが、車両の大型化と高速化、運転の過密度化などに応じて、軌道はその機能を向上をさせてきた。鉄道総研は2000年度初に基本計画を策定し、研究開発の目標として@信頼性の高い鉄道、A低コストの鉄道、B魅力的な鉄道、C環境と調和した鉄道、の4項目を掲げている。これらについて「鉄道」を「軌道」と置き換えて、最近の軌道技術の話題について概説を試みる。


列車荷重を考慮したロングレールの座屈安定性評価手法


軌道技術研究部 (軌道構造) 副主任研究員 片岡 宏夫

 軌道の座屈は列車走行中に発生する場合があり、列車荷重が座屈安定性に影響することが指摘されている。動的影響の要因としては、軌道のアップリフト、走行中の振動、横圧などが挙げられる。本発表では、軌道振動を想定した道床横抵抗力試験の結果、アップリフトと軌道振動を考慮した座屈解析、および横圧の影響を考慮した座屈安定性解析法について紹介する。



橋まくらぎ用調節形レール締結装置の開発


軌道技術研究部 (軌道構造) 副主任研究員 若月 修

 東海道新幹線および在来線の橋まくらぎ区間で使用しているレール締結装置にはレール調節機能がなく、軌道通り狂いの整正を行う場合、ねじくぎの打ち換えにより行っている。この作業で生じる不要なねじくぎ穴は、まくらぎの劣化の要因ともなっている。この問題に対応するため、スタッドボルトを使用した横圧受け装置を取付けることにより、レールの左右・高低調整が可能な橋まくらぎ用調節形レール締結装置の開発について紹介する。



移動荷重載荷方式による強化路盤の変形特性


軌道技術研究部 (軌道・路盤) 研究員 桃谷 尚嗣

 設計標準(土構造)の性能規定化への移行に伴い、疲労破壊を考慮した強化路盤の設計方法を検討している。その一環として、強化路盤の模型を用いた載荷試験を行っている。従来、路盤の載荷試験は定点載荷により行われてきたが、定点載荷では載荷点直下に局所的な残留沈下が生じるため、路盤の変形特性の適切な評価が難しい。本研究では、1/5縮尺の模型を用いて移動荷重載荷を行い、強化路盤の変形特性に関する検討を行った。



軌道検測車の変遷と慣性測定法


軌道技術研究部 (軌道管理) 副主任研究員 矢澤 英治

 営業列車の速度向上にともなう軌道検測車の検測速度向上の要請は強く、新幹線では先ごろ275km/hでの軌道検測が実現した。その一方で、ある程度ローコストでありながら、検測速度の高い検測車へのニーズも数多くある。このような現状を踏まえ、本報告では軌道検測車の技術のこれまでの変遷と、最新の検測技術について解説し、さらに新しいセンサと、ローコスト検測車のための慣性測定法による軌道検測装置の開発状況を紹介する。



数理計画を用いた軌道狂い保守の最適スケジューリング法


軌道技術研究部 (軌道管理) 副主任研究員 三和 雅史

 効率的な軌道保守活動を実現するためには、作業機械、作業員等の保守能力を効率的に運用し、安全や乗り心地の観点から適正な軌道状態を維持できる計画を作成、実行する必要がある。このことから、MTTの効率的な運用により適切な保守量、費用で高低狂い状態を良好に維持できるような保守計画を出力する数理計画モデルを構築した。そして、本モデルを実際の線区データへ適用してモデルにより作成した計画の有効性を確認した。



レール溶接部損傷の分析とその防止


軌道技術研究部 (レール溶接) 研究員 寺下 善弘

 敷設現場で損傷したレール溶接部については、以前から継続して損傷原因調査が実施されている。本発表は、レール溶接部の折損事故防止よびメンテナンスコスト削減の観点から、1985年以降17年間にわたり折損原因調査が実施されたレール溶接部122件の調査結果をもとに、溶接法別の折損形態とその原因等について分析した結果をとりまとめたものである。



車輪/レールの動的挙動に与える摩耗と潤滑の影響


鉄道力学研究部 (軌道力学) 研究室長 石田 誠

 急曲線外軌に生じる側摩耗は、レール交換の主な要因であり、メンテナンスコストに大きく影響するとともに、車両の急曲線通過性能を検討する上でも重要なパラメータであると考えられる。そこで、側摩耗進みと外軌のゲージコーナに塗布される潤滑剤の車両と軌道の動的挙動への影響を明らかにするために、新幹線と在来線軌道において、数年間にわたり現地測定試験を実施した。本発表では、その試験の概要と得られた結果について報告する。


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