第156回 鉄道総研月例発表会:最近の情報・通信技術

サイバーレール研究会の活動状況


情報・国際部 部長 荻野 隆彦

 サイバーレール構想は特定のシステムの構築を考えて検討されているのではなく、概念的な基本設計、すなわち、システムアーキテクチュアの作成を目標にしている。そのため、アーキテクチュアには既存システムや、今後想定される細部は異なるかも知れない個別システムを、出来るだけ幅広く取り込むことが大切である。サイバーレール研究会は、サイバーレールならびに、現有/想定されるシステムの情報を共有し、交換するため設立された。
 ここでは、これまでの研究会の活動の紹介と最近のサイバーレール構想の話題について述べる。


鉄道と市街地で共通の案内システムの実現に向けて


輸送情報技術研究部(旅客システム) 研究室長 後藤 浩一

 鉄道総研では視覚障害者向け情報提供システム等の携帯端末を用いた個別的案内システムの研究を行っている。利用者にとってこのようなシステムは、駅だけでなく市街地でも使えることが不可欠である。道路での関連プロジェクトである歩行者ITSと連携して、機器インタフェースや地理情報システムの共通化に向けて進めている活動を紹介する。



デマンド指向輸送を実現するための検討課題


輸送情報技術研究部(運転システム) 研究室長 富井 規雄

 鉄道のダイヤは、概して、固定的・硬直的である。今後、鉄道を利用者にとってより便利で、事業者にとってより効率的なものとするためには、利用者のデマンドを的確に反映したフレキシブルな運行計画を提供することが求められる。本報告では、デマンドの予測、スケジューリングアルゴリズム、利用者に対する個別案内の3つの観点から、デマンド指向輸送を実現するための検討課題と今後の研究の方向について述べる。



ブルートゥースを利用したデータ移送システム


信号通信技術研究部(通信) 研究室長 関 清隆

 パソコンや携帯電話等を相互接続するための近距離無線通信技術であるブルートゥースを使って、携帯情報端末とサーバ間で時刻表データ等を送受するシステムを試作したので、その概要を紹介する。このシステムは、機器を近接させるだけで自動的にデータ交換が行えることを特徴とする。また、機関車内部、機関車と地上アクセスポイント間、コンテナ内外等の鉄道環境におけるブルートゥースの伝送特性を実測した結果を報告する。



複数系統に対応した統合型設備図面生成システム


輸送情報技術研究部(設備システム) 研究室長 菊地 誠

 鉄道総研ではこれまでに、設備台帳から図面を自動生成する機能を持つ設備管理システムを提案してきた。従来の方式においては、系統毎に独立した構成となっていたが、保守管理の効率化と図面生成の有用性を高めるため、軌道構造、土木構造物、電車線等複数系統にまたがる設備図面を一画面に表示できるように、図面生成システムの統合化を図った。本発表では、この手法の有効性を確認するために試作した設備図面の例を取り上げる。



車両運用計画自動作成アルゴリズム


輸送情報技術研究部(運転システム) 副主任研究員 坂口 隆

 車両運用作成支援を目的としたソフトウェアは各駅での車両接続案を作成する「自動山つなぎ機能」を持っているが、局所的なルールのみに頼るため人手を介さずには実行可能な計画案を作成できないのが現状である。本研究ではネットワーク理論に基づいた定式化を行い、確率的手法と制約論理手法という2種類の異なる方式を比較検討し、実用的な車両運用案を自動作成するアルゴリズムを開発したので、その概要と適用結果を報告する。



バリス式列車検知形閉そく装置(COMBAT)の技術評価


信号通信技術研究部(列車制御) 主任研究員 平栗 滋人

 主に単線線区に低コストで導入できることを目的として、無線を使用した列車検知を基本とする新しい閉そく装置の開発を進めている。システム全体の構成、機能について述べるとともに、これまでに実施した現地試験による機能確認、システムの安全性に関する解析などの結果を報告する。さらに、実用化のための一つのステップとして部外に設置した技術評価委員会における取組みについて述べる。



CTC区間における沿線保守作業の安全支援システム


信号通信技術研究部(信号) 研究員 塚本 大吾

 多くの鉄道事業者では、作業ダイヤを基にして列車と列車の運行間合の中などで沿線保守作業が行われている。運行状況の把握は列車見張員の注意力に依存しており、列車乱れにより列車順序の変更等があった場合は誤った判断を招く恐れがある。CTC区間において、これらの問題解決として、運転状況表示(TID)情報を保守作業現場に伝達し、作業の安全確保の支援を行うシステムの提案とその要素技術を開発したので紹介する。


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