第160回 鉄道総研月例発表会:最近の車両技術

最近の車両の研究開発


車両制御技術研究部 部長 潤賀 健一

 直接的な排ガス低減とともにリサイクル、省エネ、効率向上などによる環境に対するやさしさがより求められる時代である。これらに柔軟に対処してゆくことは車両の動力制御の面からも重要である。今回、車両制御技術研究部の動力制御などの話題と、車両構造技術研究部の最近の話題を紹介する。


踏面ブレーキの鳴きに関する一考察


車両制御技術研究部(ブレーキ制御) 研究員 長澤 新

 鉄道車両において、摩擦ブレーキ作用中に発生する"鳴き"は従来から問題視されてきたが、発生メカニズム等の調査は不十分な点が多い。そこで今回、最近の車両に使用されている踏面ブレーキ用のユニットブレーキ装置に関して、鳴き発生時のブレーキ装置の振動と騒音との相関性や鳴き発生時の制輪子の運動等について、走行試験等を実施し調査した結果を報告する。



主電動機を中心とした騒音の評価


車両制御技術研究部(電気動力) 副主任研究員 清水 康弘

 鉄道車両の走行に伴う駆動系の騒音については発生源で下げることが望まれている。ここでは、新たに開発した、特別な設備を用いない簡便な装置単体の騒音評価方法の紹介と、車上で測定した床下の主電動機・歯車装置などの音源の特徴について紹介する。



在来線用試作中ぐり車軸の超音波探傷法


車両構造技術研究部(車両強度) 研究室長 石塚 弘道

 現在、大部分の在来線車両には中実車軸が使用され、軸端もしくは表面から超音波探傷を実施しているが、中ぐり車軸と比較して探傷精度が劣る。そこで、在来線車両に適用可能な小径中ぐり車軸用の超音波探傷装置を開発した。本報告では、試作した中ぐり車軸を同装置で探傷した結果を紹介する。併せて、超音波探傷では検出し難い車輪座の損傷を軽減するため、車輪座と中央平行部の段差に注目した車軸の疲労試験結果についても触れる。



上下セミアクティブサスペンションの開発


車両構造技術研究部(車両振動) 副主任研究員 菅原 能生

 鉄道車両の上下振動対策として、車体支持系のパッシブ特性の最適化や、アクティブサスペンションなどが提案・試験されてきたが、セミアクティブサスペンションを適用した例はあまり見られない。本発表では、上下系にセミアクティブサスペンションを適用し、単体性能試験、車両試験台での制振制御試験および蛇行動安定性試験、走行試験を行った結果について報告する。



ディーゼル車両のトラクション制御


車両構造技術研究部(走り装置) 副主任研究員 村上 浩一

 空転状況に応じた多段階のアクセル量で機関出力を制御する手法により、レール/車輪間の粘着力を十分に利用し空転の抑制と駆動力の確保を図る空転再粘着制御や、トルクコンバータの出力特性を加味し車両速度に応じて連続的にアクセル量を制御する手法により、一定の駆動力を発揮することが可能な新たな概念のトラクション制御を考案した。本稿では、ディーゼル車両を対象とするこれらの制御方法と展開について紹介する。



営業電車の回生ブレーキ動作状況調査


車両制御技術研究部(駆動制御) 主任研究員 小笠 正道

 営業電車に回生ブレーキ動作状況測定システム(列車LAN+携帯電話+地上パソコン)を開発搭載して約1年測定した。信頼度指標である信頼性(Reliability)には回生失効による故障表示の原因別MTBF(平均故障間隔)を、可動率(Availability)には回生ブレーキ力積分値の実際値を指令値で除した値を採用した。分析の結果、インバータ故障による回生失効は皆無(平均故障間隔∞)、可動率は80〜90%であり、滑走よりも軽負荷の影響が大きいことが判明した。当該JR会社では同じシステムを別編成にも採用搭載した。



ハイブリッド車両用フライホイール式蓄電装置


車両制御技術研究部(駆動制御) 主任研究員 川口 清

 ハイブリッド車両の大出力化と低コスト化や効率向上を図る上で、実用的な蓄電装置の開発が鍵である。そこで、流体潤滑式滑り軸受を特徴とする新概念のフライホイール式蓄電装置を試作した。試験の結果、最大の課題である寿命は大幅に改善し、軸受寿命は8年間無保守140万回充放電を達成可能とする値を得た。長寿命で低コストで高出力のハイブリッド車両用蓄電装置について、実用化の可能性を得たので概要を紹介する。



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