第164回 鉄道総研月例発表会:最近の軌道技術

軌道技術に求められるもの


軌道技術研究部 部長 高井 秀之

 軌道は鉄道の安全・快適な運行を支える重要な設備でありながら、列車通過による変形を定期的に補修している特殊な構造物である。列車運行の高速化や高密度化などに伴って、軌道技術に求められるものは高度化し多様化している。安全性、経済性、実用性と将来性をキーワードとして挙げ、ある場合には相反する各要素を軌道システムとしてバランスよく構成することの重要性を、今回の発表件名の位置付けを含めて概説する。


営業線における軌道沈下特性


軌道力学研究部(軌道力学)主任研究員 名村 明

 軌道沈下の実態把握、および鉄道構造物等設計標準・同解説 軌道構造[有道床軌道](案)において提案されている道床沈下則について検討するため、5年に渡り、在来線有道床ロングレール軌道における溶接部と中間部で軌道沈下継続試験を実施している。本発表では、継続試験より得られたまくらぎ静的、動的変位と道床振動加速度の推移について報告するとともに、軌道沈下シミュレーションについて紹介する。



軌道狂いを用いた列車動揺予測手法と軌道管理への応用


軌道技術研究部(軌道管理)主任研究員 古川 敦

 車両の挙動と相関の高い軌道状態評価指標を得るため、軌道狂いに起因する上下動揺、および曲線中の左右動揺予測手法を提案する。上下動揺は高低狂いを、左右動揺は通り狂い、水準狂いを用いて予測する。本手法では、統計的方法により比較的短いデータからパラメータの同定および動揺の予測が可能である。さらに本手法の応用例として、10m弦正矢および20m弦正矢値を評価指標とした場合との保守量を比較した結果を報告する。



軸箱加速度を用いた短波長軌道狂い管理手法


軌道技術研究部(軌道管理)研究員 西垣 拓也

 近年の車両の高速化に伴い、レール頭頂面凹凸や浮まくらぎ等の短い波長領域の軌道狂いに起因した輪重変動が増大する傾向にある。また、在来線にもレール削正車が導入されるようになり、レール波状摩耗のようなレール表面の不整を効率的に検出し、保守する手法の確立も要望されている。そこで本発表では、今まで得られた知見をもとに、軸箱加速度を用いて短波長軌道狂いを効率的に検出、管理する方法について紹介する。



弾性まくらぎ直結軌道の開発


軌道技術研究部(軌道・路盤)副主任研究員 堀池 高弘

 近年、鉄道の高速化や整備新幹線建設に関する沿線環境保護について、社会的関心は一層の高まりを見せ、特に振動・騒音に対する配慮が不可欠となっている。また、保守省力化も時代の要請ともなっている。そこで、保守と騒音を低減するために、まくらぎを弾性材で支持して周囲をコンクリートで固定する「弾性まくらぎ直結軌道」が開発されている。本発表では、弾性まくらぎ直結軌道の最近の取組について報告する。



分岐器構造解析の現状


軌道技術研究部(軌道構造)主任研究員 吉田 眞

 これまで分岐器の部材強度の計算は、静定ばりや弾性床上のはり等による計算が用いられてきたが、部材局部に発生する応力を把握することは困難であった。このため、有限要素法による分岐器部材の構造解析を進めてきた。ここでは、著大背面横圧に対するマンガンクロッシングおよびH形ガードの構造解析例およびポイント部の構造解析例など、分岐器の構造解析の現状を報告する。



最近のレール締結装置の開発状況


軌道技術研究部(軌道構造)研究室長 阿部 則次

 環境対策および保守コスト縮減のため、D型弾直軌道など直結系軌道の増加が想定される。最近このような状況を踏まえ開発したD型弾直軌道用の「50kgNレール用締結装置」、橋梁上でレールの左右と上下方向の調整が可能な「橋まくらぎ用調整形レール締結装置」、PCまくらぎ直結軌道やスラブ軌道の直結系軌道で従来以上の上下と左右方向のレール調整量を有する座面式の「新形直結系軌道用レール締結装置」の状況について概要を述べる。



レール溶接の信頼性向上


軌道技術研究部(レール溶接)研究室長 深田 康人

 近年、レール溶接部折損事故は減少傾向にあると考える。溶接部折損は施工時に形成された溶接欠陥を起点として発生する。したがって、この折損事故の減少は、施工面の改善による溶接欠陥発生の減少及び性能向上、並びに的確な仕上り検査の実施による有害な溶接欠陥を内包する溶接部の排除によるものと考えられる。そこで、これまでの取組み内容について概説するとともに、更なる信頼性向上を目指すための課題等について述べる。



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