第169回 鉄道総研月例発表会:最近の信号通信・情報技術

最近の信号通信・情報技術の研究開発


信号通信技術研究部 部長 平尾 裕司

 信号通信技術研究部では、無線を適用した列車制御、ATS、障害物検知などの各種信号・通信システムの開発や、軌道回路短絡現象解明、雷害およびEMC対策、安全性技術評価法などの基礎研究に取り組んでいる。輸送情報技術研究部では、サイバーレールにおける情報管理、運転整理および運用計画作成アルゴリズム構築、運転曲線やダイヤの評価、事故復旧時の対応、旅客および設備情報の提供、保守計画などに関する研究開発に取り組んでいる。
 ここでは、鉄道総研で現在進めている信号通信・情報技術の研究開発のなかから動向を含め幾つか紹介する。


現行システムと併用可能な速度照査式ATS


信号通信技術研究部(列車制御) 研究室長 佐藤 和敏

 現行ATSが抱える問題点を解決するために、現行ATSとの互換性を確保しつつ、かつ車上での速度照査機能を有する新しいATSシステムを提案した。その基幹技術となる地上子およびレールを用いた車上へのディジタル情報伝送について現地試験を実施し、その伝送品質が実用上問題ないことを確認した。また、提案する新しいATSシステムの実現に向け、JR7会社と共同で共通仕様の検討を行っている。これら試験結果と、検討状況について報告する。



踏切設備の雷過電圧抑制対策と効果の定量的評価


信号通信技術研究部(列車制御) 副主任研究員 新井 英樹

 信号保安設備に電子機器が導入されるに従い,多くの雷害が発生するようになった。そのため,効果的な雷害対策の確立が求められている。本研究では,雷害発生件数が多いとされる踏切設備を対象とし,実験的にレールあるいはレール近傍大地に雷サージ電流を印加することにより,被害発生メカニズムの検討を行った。また,踏切制御子用保安器の接地によるサージ防護対策の提案,ならびに対策効果の定量的評価を行ったので報告する。



鉄道車両内における電波雑音測定法


信号通信技術研究部(通信) 主任研究員 川崎 邦弘

 鉄道システムが外部に対して放射する電波雑音の測定法に関しては、既に国際規格が定められているが、車両内の電波雑音強度の測定方法に関しては、適切な測定方法が確立されていない。しかし、車両内の電波環境を把握する必要性が高まってきていることから、本研究では、測定機材および測定法の検討を行なった。その結果、光電界センサーを高感度化して適用する方法を考案し、車両内における電波雑音の測定法の素案をまとめた。



転てつ機モニタデータの解析による障害予知手法


輸送情報技術研究部(設備システム) 主任研究員 佐久間 靖

 鉄道設備のモニター装置に蓄積されている各種データに対して、統計解析手法の適用を図り、設備状態を定量的に評価する手法の検討を行った。信号設備の電気転てつ機に対して、現地調査、総研構内で模擬故障試験を行い、モニター装置等でデータを取得し、手法の適用を図った。そして、@合理的な警報レベルの設定、A調整箇所の推定、B調整作業結果の良否判定、C障害の予兆の発見、等の保守作業支援の観点から評価を行った。



交通弱者向け情報提供システム


輸送情報技術研究部(旅客システム) 主任研究員 松原 広

 鉄道総研では、交通弱者のための情報提供システムの研究開発を行っている。システムは、携帯端末を使って、その利用者の障害や状況に合わせた個別的な案内を対話的に提供することができる。本報告では、様々な交通弱者に対応するインフラや案内データなどの共通情報基盤の実現方法、これらを利用した各利用者向けの情報提供システム、および開発したシステムを用いたフィールド試験について紹介する。



サイバーレールの旅客案内システムの実証実験


輸送情報技術研究部(旅客システム) 研究室長 土屋 隆司

 サイバーレールの機能の一端を多くの人に実感していただくために、応用分野のひとつである旅客案内機能に関して、旅客の位置と移動行程に基づいた案内情報配信システムを開発した。このシステムは、サイバーレールにおける旅客案内機能の一実現法であり、旅客案内分野の情報基盤の一部を構成する。このメカニズムの妥当性を検証するため、鉄道事業者の協力を得て、実証実験を実施したので報告する。



顧客満足度を考慮した運転整理案作成アルゴリズム


輸送情報技術研究部(運転システム) 研究室長 富井 規雄

 現状の運転整理支援システムは自動作成機能に欠けるために、人間の負担はさほど軽減されていない。本研究では、運転整理案の評価尺度として、利用者の不満に着目することを提唱する。そして、運転整理案の作成問題を、利用者の不満を最小にする組合せ最適化問題ととらえ、運休、車両運用変更、着発線変更、順序変更等の自動作成機能を備えた運転整理案作成アルゴリズムを導入する。あわせて、実線区に対する実験結果について紹介する。



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