第176回 鉄道総研月例発表会:電力技術に関する研究開発

電力技術に関する最近の研究開発


電力技術研究部 部長 中道 好信

 電力関係の技術開発では、鉄道の安定輸送に寄与すべく、環境保護・IT技術など最近のキーワードを取り入れた各種観点から研究開発に取り組んでいる。その中で、今回は電力設備の「監視・診断」をキーワードに、き電設備・電車線設備個々について最近の研究開発状況の数例を紹介する。なお、紹介する内容のいくつかは、その詳細が本発表会で示されるので御聴講いただきたい。


パンタグラフ接触力による電車線設備の診断


電力技術研究部(集電管理) 研究室長 久須美 俊一

 パンタグラフとトロリ線間の接触力は架線の架設状態の影響を強く受け、その変動が大きいとトロリ線局部摩耗や大離線が発生する。現在、鉄道総研では接触力を使用した電車線架設状態の診断手法の検討を行っている。本発表では、接触力測定の概要、接触力とオーバーラップ構成および架線の径間周期高さ変化との関係を述べる。また、接触力によるトロリ線ひずみの推定など、これまで明らかになったことを報告する。



光学式離線特性の推定法


電力技術研究部(集電管理) 研究員 根津 一嘉

 離線によるアークの評価を行うためには、アークの発光を検出する光学式離線測定が必要である。しかし昼間は外光の影響により測定が困難であるため、夜間の測定に限られているのが現状である。そこで昼間でも測定可能な電流式離線測定の結果から、回路シミュレーションによりアークの発生状況を推定する手法を開発した。本発表ではこのシミュレーション手法について述べるとともに、推定結果の妥当性を検証したので報告する。



トンネル内におけるアルミニウム電車線材料の劣化特性評価


電力技術研究部(電車線構造) 研究員 西 健太郎

 トンネル内は明かり区間と比べて環境条件が厳しく、電車線材料としてアルミニウムを使用するには、腐食特性の定量的評価および防食対策が必要である。そこで、アルカリ性環境下で腐食劣化させたアルミニウム剛体架台および硬アルミニウムより線の電気的・機械的特性の評価を行った。また、アルミニウム剛体架台において、トロリ線にすずめっき等の防食対策を施した場合の異種金属接触腐食を定量的に評価した結果を報告する。



剛体電車線の波状摩耗発生原因と対策


電力技術研究部(電車線構造) 副主任研究員  原田  智

 剛体電車線のトロリ線およびすり板の摩耗を進行させる波状摩耗に関し、原因究明とその対策を実施した。波状摩耗の発生原因については、現地調査の結果、すり板間隔に起因する離線であることを確認した。また、その対策として研削によるしゅう動面の平滑化を提案し、その効果の継続調査を実施した。本発表では、研削前後の離線測定、およびその後のしゅう動面に関する長期調査の結果について報告する。



電力貯蔵装置による電圧降下対策の評価


電力技術研究部(き電) 研究員 小西 武史

 直流電気鉄道におけるパンタ点電圧降下、電力負荷変動の課題に対し、車両が走行していない時間に電力を蓄電し、車両力行時に放電することにより、負荷平準化、効率向上を図る電力貯蔵装置の適用が効果的な対策として注目されている。そこで、急速充放電が可能で高出力密度、長寿命などの特長を有する電気二重層キャパシタを用いた電力貯蔵装置を試作し、直流電気鉄道の実線区に設置し、電圧降下対策としての評価試験を実施したのでその結果を報告する。



続流抑止型保安器の開発


電力技術研究部(き電) 主任研究員 安喰 浩司

 在来線交流区間のBTき電回路では、トロリ線地絡事故時に駅構内の電柱等の対地電位上昇を防止すること、および変電所で事故検出を確実に行うために、地絡保護用保安器が負き電線と保護地線間に接続されている。しかし近年、正常き電時に保安器が放電し焼損するというトラブルが発生するようになった。本発表では、電力用保安器の焼損原因の解明結果と、その結果を反映した焼損防止対策を施した「続流抑止型保安器」について報告する。




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