第180回 鉄道総研月例発表会:最近の信号通信技術

最近の信号通信技術の研究開発と将来展望


信号通信技術研究部 部長 平尾 裕司

 信号通信技術研究部では、無線を適用した列車制御、ATS、障害物検知などの各種信号・通信システムの開発や、軌道回路短絡現象解明、雷害およびEMC対策、安全性技術評価法などの基礎研究に取り組んでいる。鉄道の将来に向けた研究開発(将来指向研究開発)としてのインテリジェント列車制御を2004年度で終了し、2005年度からの新たな鉄道総研基本計画(Research 2005)のもとで、RAMS指標に基づく信号システム構成法の研究にも着手した。ここではこのような鉄道総研における信号通信技術分野における研究開発と将来展望について述べる。


インテリジェント列車制御


信号通信技術研究部(信号) 研究室長 渡辺 郁夫

 車上および地上のセンサにより線路内の安全を確認し、また、保守作業の安全を確保し、さらに前方の列車の運転状況を考慮しながら効率的でスムーズな運転を行うインテリジェント列車制御を検討した。先行列車の運転を予測して運転時隔短縮、ダイヤ乱れの早期回復、省エネ運転を実現する「予測制御」、車上から直接前方の障害物を監視する「列車前方監視システム」、保守作業時の「防護システム」などの検討結果を報告する。



鉄道環境におけるGPS応用時の課題と対策


信号通信技術研究部(列車制御) 主任研究員 山本 春生

 鉄道を始めとする運輸機関では、測位(位置検知)や装置間の同期にGPSの活用事例があるが、GPSに対する干渉源やGPSの脆弱性等により測位や時刻同期をGPSのみに依存することのリスクが否定できない。本発表では、鉄道環境で想定されるGPS測位の信頼性に関する様々な課題を明らかにし、GPSの安全性等を向上させる対策を検討するとともに、鉄道分野における用途の分類、要求される安全性レベルを整理した結果と、その応用時の留意点について報告する。



無線を利用した地上〜車上間簡易情報伝送システム


信号通信技術研究部(信号) 主任研究員 長谷川 敏明

 列車の高密度運転や旅客サービス向上を図るため、情報の高容量化が求められている。そこで、現用のメタリックケーブルの高容量化や、鉄骨や電線をアンテナに利用して通信が必要とする場所のみに電波をもらす無線方式を検討した。この方式では音声と同時に他の諸情報の同時通信が可能になる。本発表では、提案する情報伝送方式の概要とその性能試験の結果について報告する。



電気転てつ機の保守軽減を目的としたロックモニタ


信号通信技術研究部(信号) 主任研究員 五十嵐 義信

 作業者の熟練が要求される転換鎖錠装置の保守について、今後、作業の省力化とシステム化が必須である。特に、電気転てつ機のロック調整作業ついては0.1mmの精度で調整する必要がある上に、転換毎に鎖錠かんの位置が微妙にずれるため調整状態の確認が難しい。そこで、この熟練が必要なロック調整を支援し、列車通過時の分岐器の挙動も把握できるロックモニタを開発した。本発表では、その概要と効果について報告する。



アクティブ無線タグを用いた案内情報提供システム


信号通信技術研究部(通信) 研究室長 関  清隆

 鉄道の利用者に対し、案内情報の提供や目的地までのナビゲーションを適切なタイミングで行うためには、連続的な位置検知が必要である。アクティブ型無線タグは、車内や駅構内等で数m程度の精度での位置検知が可能であり、このような用途に適している。これを利用して旅客の携帯電話へ案内情報メールを配信するシステムを試作し、基本的な移動シナリオに対して情報が正しく提供されることを所内での実験で確認した。本発表では、システム概要と所内試験の結果について報告する。



広ダイナミックレンジ連続走査画像によるトンネル変状検出


信号通信技術研究部(信号) 主任研究員 鵜飼 正人

 トンネル壁面画像から画像処理手法によりひび割れ等を精度よく検出するため、通常の8bit(256階調)に比べてレンジの広い12bit(4096階調)の広ダイナミックレンジ画像を用いたところ、画質改善処理においてもシャドー部の情報が失われないため、ひび割れ部分が黒つぶれせず撮影できた。得られた画像に対し、ラプラシアンガウシアンフィルタとゼロ交差法に、ヒステリシスしきい値処理を加えたアルゴリズムを適用した結果、線領域(ひび割れ)を良好に検出できることを確認した。本発表では、新しい検出方法の概要と検出結果について報告する。




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