第183回 鉄道総研月例発表会:鉄道の将来に向けた研究開発〜環境と調和した鉄道

鉄道の将来に向けた研究開発(総論)


企画室  室長  上山 且芳

 鉄道の将来に向けた研究開発(将来指向課題)は、前基本計画(RESEARCH21―平成12〜16年度)で初めて設定された。将来指向課題は、数年から十数年後に実用化されることを念頭に置き、鉄道事業者のニーズ、社会動向を踏まえて、技術分野の垣根を越えた横断的な課題として進められてきた。ここでは、将来指向課題の設定の経緯や推進体制と評価、ならびに今回の発表件名以外の課題とその成果概要を紹介する。


鉄道環境負荷の総合評価


材料技術研究部 部長 辻村 太郎

 車両だけではなく地上構造物をも含めた鉄道システムの環境負荷をライフサイクルの観点に立って評価することにより、鉄道自身の環境負荷の更なる低減を促進する。また、運行時だけではなくインフラ整備を含めた状態でも他の輸送機関よりも鉄道は低環境負荷であることを示し、モーダルシフトによる環境負荷低減効果を推定する。評価項目としては、環境負荷物質量だけではなく、経済性等についても表現する手法の検討を行った。



騒音の音源解析と低減法の開発


環境工学研究部  部長  前田 達夫

 平成7年に環境省より「在来鉄道の新設または大規模改良に際しての騒音対策の指針」がだされ,新幹線騒音のみならず,在来線の低騒音化も社会の要求となりつつある。ここでは,在来線の音源別寄与を明かにし,在来線騒音の主たる音源であるレール・車輪間騒音,駆動系騒音,構造物騒音の予測と低減策に関する研究成果について紹介する。また,騒音の伝搬系対策である防音壁に関する研究成果についても紹介する。



空力音の現象解明と低減法の開発


環境工学研究部(騒音解析) 研究室長  佐川 明朗

 鉄道の高速車両における更なる速度向上の実現に寄与するため、空力音の現象解明と低減法の開発に関する研究を実施した。その結果、音源探査法を開発し、現車試験や風洞試験から高速車両の空力音の全体像を解明し、対策の優先順位を明らかにした。また、空力音の数値シミュレーションを実施し、流れと空力音との関係を明らかにするとともに、パンタグラフ、車間部、台車部の空力音に関する効果的な対策指針を提示した。



地上用電力貯蔵システムの開発


電力技術研究部(き電) 研究室長  長谷 伸一

 直流電気鉄道への電力貯蔵システムの適用として、電気二重層キャパシタを貯蔵媒体とし、昇降圧チョッパで充放電を制御する電力貯蔵システムの開発を行った。このシステムの研究開発の経緯、装置の仕様、直流400V系のミニモデル試験、営業線区における600V系、750V系の現地試験結果、国立所内における1500V系での異常時の特性試験結果について述べる。



電力リサイクル車両の開発


車両制御技術研究部(駆動制御) 主任研究員  小笠 正道

 架線集電と車載バッテリーによる電源ハイブリッド型電車の技術開発を行った。架線とやりとりできないパワーを車載バッテリーと授受することで回生失効を抑制し、ブレーキエネルギーを無駄なくバッテリーに蓄える。蓄えたエネルギーは力行時に再利用することで、架線から取るエネルギーを減らして省エネとなる。蓄電媒体、主回路機器、制御方式や走行試験結果など、開発技術の概要と、新しいタイプの電車の可能性について紹介する。



燃料電池車両の開発


車両制御技術研究部(動力システム) 主任研究員  山本 貴光

 近年、環境負荷低減に関心が高まりつつある中で、水素エネルギーを利用するクリーンな電源として燃料電池の開発が注目されている。鉄道総研では環境に優しい鉄道を目指し、この燃料電池を駆動用電源とした燃料電池車両の研究開発を行っている。これまでに、燃料電池の適用効果、適用対象及び燃料電池車両の構成案の検討等を行った。また、実際に30kW級燃料電池システムを試作し、実際に通勤電車で使われているものとほぼ同じ仕様の台車を使って駆動試験を実施したのでこれらについて紹介する。



車両用超電導主変圧器


車両制御技術研究部(駆動制御) 研究室長  秦 広

 巻線にビスマス系超電導線材を用いた超電導主変圧器を試作した。一次電圧は25kVで、概略寸法は幅1.2m、奥行き0.7m、高さ1.9m(圧縮機を除く)、質量は1.7t(冷凍機、圧縮機を除く)である。試験した結果、超電導状態での最大出力は3.5MVA相当と高速鉄道車両に求められる容量を概ね満足した。耐電圧試験結果も良好であった。この主変圧器の設計、製作、試験結果について発表する。




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