第187回 鉄道総研月例発表会:浮上式鉄道に関する技術開発状況

最近の浮上式鉄道の技術開発と在来方式鉄道への応用検討


浮上式鉄道技術研究部 部長 高橋 潔

 浮上式鉄道の技術開発の状況は、平成17年3月に超電導磁気浮上式鉄道実用技術評価委員会による『超電導磁気浮上式鉄道について実用化の基盤技術が確立したと判断できる』との総合技術評価を受けるに至り、大きく前進した。近年の技術開発における国立研究所の役割を紹介するとともに、もう一方の研究方針として取り組む"在来方式鉄道への技術応用"に関する内容を紹介する。


山梨実験線における走行試験状況


浮上式鉄道技術研究部(山梨実験センター) 課長  滝澤 秀行

 昨年度は、山梨実験線第2期走行試験(5カ年)の最終年度であり、通常実施している高速繰り返し試験などの他に、今まで実施できなかった救援連結試験、故障模擬試験などの特殊試験を実施した。これら実施した特殊試験について紹介するとともに、第2期走行試験を総括する。



き電回路における地絡故障点標定手法の開発


電力技術研究部(き電) 副主任研究員  重枝 秀紀

 浮上式鉄道のリニアモータでは、地上のガイドウェイ側壁に多数の推進コイルが配置されている。この推進コイルを含むき電回路において地絡故障が発生した際に、その発生位置を直ちに特定すること(故障点標定)は、故障箇所の早期復旧を支援する上で重要である。本発表では、今回開発した浮上式鉄道のき電回路に適した故障点標定手法の原理、および山梨実験線で実施した模擬地絡試験による検証結果を紹介する。



沿線変動磁場の生物への作用評価


環境工学研究部(生物工学) 主任研究員  池畑 政輝

 浮上式鉄道の開発においては、技術の開発と同時に、人を含めた環境に対する安全性についても充分な評価が必要である。本研究では、特に車両が通過する沿線に着目し、車両通過に由来する変動磁場の生物作用について、微生物における変異原性やマウスにおける疾病リスク等について調査をおこなった。これらの試験結果および世界的な研究動向とを合わせ、浮上式鉄道から発生する磁場の安全性についての評価の現状ならびに今後の課題を報告する。



簡略型地上コイル対応超電導磁石の開発


浮上式鉄道技術研究部(低温システム) 主任研究員  岩松 勝

 浮上式鉄道の建設コストの低減を図る手法の一つとして、地上コイルを簡略化することが考えられている。但し、その場合には、超電導磁石が受ける外乱が増えるため、その性能向上が望まれているところである。今回、簡略化した地上コイルに対応できる性能を持った超電導磁石について検討を行ない、従来の超電導磁石に改良を施して性能確認を行ない、実現可能性を明らかにした。



台車制振機能を付加した分散型誘導集電システム


浮上式鉄道技術研究部(電磁力応用) 主任研究員  渡邉 健

 浮上式鉄道車両の振動乗り心地向上策は、従来、車体〜台車間の2次支持系の特性改善が中心で、台車〜地上間の1次支持系に起因する振動の低減は難しかった。そこで新たに、分散型誘導集電装置の集電コイル・コンバータを改良して、零相電流を通電することでより大きな上下力を発生可能とし、車上で必要な電力の集電と、台車の制振を同時に行うシステムを開発した。山梨実験線の現車試験により、本システムの効果を確認したので、その結果を紹介する。



超電導磁石磁場を利用した地上コイルの動的耐久性評価


浮上式鉄道技術研究部(電磁路技術)  副主任研究員  田中 実

 浮上式鉄道のガイドウエイに沿って設置される地上コイルは、車両通過時に電磁力によって加振される。想定される実際の電磁気的振動に対する耐久性評価は、浮上式鉄道システム全体の信頼性確保のために重要となる。そこで、超電導磁石磁場を利用した電磁加振装置を開発して、営業線で長期使用することを想定した耐久性試験を実施した。電磁加振装置を用いたベンチテストの走行時との等価性や試験結果について報告する。



振動試験による超電導磁石の耐久性検証


浮上式鉄道技術研究部(低温システム) 研究室長  井上 明彦

 山梨実験線で延べ8年間を超える走行試験を実施しているが、超電導磁石の振動耐久性の点では走行試験のみでは営業線寿命に対して負荷条件が不足するため、これを補うベンチテストを実施した。営業線想定の、田の字浮上コイルと単層推進コイルとの配置条件で走行時と同等の振動負荷を与え、低温配管類を含めた超電導磁石全体としての耐久性を確認した。営業線目標寿命15年相当の試験後も内部構造の劣化がなく、問題なく励磁可能なことを確認した。




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