第197回 鉄道総研月例発表会:環境技術に関する最近の取り組み

環境技術に関する最近の取り組み


環境工学研究部 部長  前田 達夫

 鉄道の環境問題には、騒音問題、振動問題、低周波音問題、沿線の雑草問題、電磁環境問題などがある。今回は、これらの研究の中から騒音問題に関連して、空力騒音と転動音に関する研究、音源予測手法に関する研究、低騒音、低揚力変動のパンタグラフに関する空気力学的な研究、低周波音問題に関連して、トンネル微気圧波、列車通過時の圧力変動などの研究について紹介する。また、環境改善のための生物利用や駆除に関連した話題も紹介する。


蛍光観察による微生物の環境汚染物質分解能力の評価


環境工学研究部(生物工学) 主任研究員  志村 稔

 土壌汚染対策法の施行をうけて、土壌・地下水環境に対する関心が高まっている。土壌浄化技術の一つとして、微生物を利用する方法が実用化されているが、十分な効果を得るためには、微生物の能力の監視および適切な管理等の手間を要する。我々は、微生物による有害化学物質の分解機構を調べる過程で中間代謝産物が蛍光を発することを見いだした。そこで、この物質が発する蛍光を指標として、微生物の環境汚染物質分解能力を簡便にモニタリングする手法を検討した。



抑草剤散布によるのり面大型雑草の選択的除去効果


環境工学研究部(生物工学) 研究室長  早川 敏雄

 のり面に発生する雑草は、保線作業の妨害や景観の悪化などの問題をもたらすため、防除作業が必要である。雑草防除には除草剤散布が効果的であるが、環境問題やのり面表土保護のために雑草が必要であるという指摘から、鉄道沿線のり面での散布は限られている。本件では、植物の生育速度を低下させるある種の抑草剤を散布した場合の草丈抑制効果と植生変更への応用について述べる。



新幹線車両の音源分布を考慮した模型実験による沿線騒音の推定法


環境工学研究部(騒音解析) 主任研究員  村田 香

 新幹線車両が典型的な防音壁を有する高架橋を走行する時と同等の条件において、音源高さを車両下部から集電装置位置まで変更し、防音壁の回折減衰量を把握するための縮尺音響模型実験を実施した。その結果と車両音源分布測定結果から、防音壁の多重反射など当該地点の構造物条件を考慮した上で、近接軌道中心から25m地点における騒音値が推定可能であることを明らかにした。



在来線用車輪の振動特性に影響を及ぼす形状因子


環境工学研究部(騒音解析) 副主任研究員  上妻 雄一

 在来線電車から発生する騒音は主に、転動音と主電動機ファン騒音で占められている。最近の新型車両では、冷却ファンの形状を改善することで主電動機ファン騒音の低減を図っており、沿線騒音に対する転動音の相対的な寄与が大きくなっている。本報告では、転動音の特性を理解する第一段階として、在来線車両で使用されている車輪の振動特性を加振試験から求め、車輪板部の板厚や形状変化など、車輪の固有振動数を支配する因子を、数値計算により明らかにした。



風洞試験による車間・台車部空力騒音の抑制技術の検討


環境工学研究部(騒音解析) 副主任研究員  高石 武久

 新幹線から発生する空力騒音に対する低騒音化技術が進むに従い、対策を講じるべき対象として台車部や車間部など車体各部に関心が集まっており、騒音の発生メカニズム並びにその低減対策が求められている。本報告では、車両まわりの空気の流れ場を考慮した上で前述した車両の各部位における低騒音化対策法を検討し、指向特性並びに位置同定精度を向上させた風洞試験用音源探査技術等を活用して効果を検証した。



吸気孔・噴出孔付き舟体によるパンタグラフの揚力制御


環境工学研究部(空気力学) 主任研究員  鈴木 昌弘

 高速鉄道用パンタグラフには、低騒音性と安定した揚力特性が要求される。しかし、両者はトレードオフの関係にあり同時に満たすことは難しい。もし、揚力特性をアクティブに制御することができれば、低騒音性に重点を置いた設計が可能になる。そこで、パンタグラフの揚力制御手法として、舟体前縁部から取り入れた空気を後縁部近傍から噴出する舟体を考案し、数値計算と風洞試験により、本手法の基礎的な検討を行った。その結果、実用上十分な揚力制御効果が得られることがわかった。



在来線車両先頭部の単線狭小トンネル突入時に形成される圧縮波


環境工学研究部(空気力学) 副主任研究員  佐久間 豊

 近年、車両性能の向上や線形改良により在来線でも高速化が進み、特に単線の狭小トンネルにおいてトンネル突入時の圧縮波が増大する傾向にある。ここでは、在来線トンネルの突入時圧縮波の研究の第1ステップとして、まず現地試験および模型実験を実施し、在来線トンネルの圧縮波の実態およびその基本特性を把握したので、その結果について報告する。




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