第198回 鉄道総研月例発表会:浮上式鉄道に関する技術開発状況

浮上式鉄道の技術開発と在来方式鉄道への技術応用


浮上式鉄道技術研究部 部長 高橋 潔

 浮上式鉄道技術研究部では、超電導リニアシステムの主要装置である超電導磁石や地上コイルについて、それぞれの性能向上に向けた要素開発と装置の性能評価手法に関する研究を進めている。また一方で、"在来方式鉄道へのリニア技術の応用"の研究も進めており、高温超電導磁気軸受によるフライホイール等の研究事例を報告する。


U型ガイドウェイを模擬した風洞実験用移動地面板の開発


環境工学研究部(空気力学) 主任研究員 斉藤 実俊

 浮上式鉄道車両は側壁を有するU字型のガイドウエイ内を走行する。そのため、車両とガイドウエイ側壁間の狭い空間に流れが生じ、車両側面に在来の鉄道車両とは異なる圧力変動が作用する。このような流れを風洞実験で正確に再現するためには床面だけでなく左右の側壁も風速と同じ速度で移動させる必要がある。そこで、床面と側壁を風速に同期して移動させる装置を開発し、流速や車両側面圧力を測定することでその効果を確認した。本発表では、開発の経緯、装置の概要、有効性について報告する。



地上コイル用モールド樹脂の耐久性評価


浮上式鉄道技術研究部(電磁路技術) 主任研究員 鈴木 裕之

 浮上式鉄道の地上コイルは、30年以上の長期間に亘って屋外で使用される。この地上コイルは、巻線コイルを樹脂でモールドしたもので、機械的強度、絶縁性、耐候性等の耐久性が要求されている。そこで、推進コイルモールド用エポキシ樹脂を対象に実運用を想定した耐久性試験により疲労限度線図を取得したので、試験結果を紹介する。また、現在実施中の各種評価試験の状況についても紹介する。



浮上式鉄道用直流磁気シールドの開発


浮上式鉄道技術研究部(電磁力応用) 研究室長 笹川 卓

 浮上式鉄道では、車両及び地上側(乗降場)に磁気シールド板を設置して、車上の超電導磁石からの直流磁界の遮蔽を行っている。それらは主に鉄系の強磁性体で構成されているが、浮上して走行するため特に車上の磁気シールドについては、その磁気遮蔽性能とともに重量低減が強く求められる。本発表では浮上式鉄道の磁気シールドの開発経緯と特長を述べ、その軽量化や車内磁界低減に関わる種々の取り組みの結果を紹介する。



超電導コイルの摩擦発熱の現象解明


浮上式鉄道技術研究部(低温システム) 主任研究員 清野 寛

 浮上式鉄道では、走行中に超電導コイルが電磁力により加振され、その内部で摩擦熱が発生する。この発熱現象の解明と、その抑制を目的として本研究を実施した。まず、超電導コイルの各構成部材を模擬したサンプルを液体ヘリウムに浸した状態で微小変位を与える摩擦実験を行い、発熱箇所を特定した。次に発熱を抑制する対策を検討して、その効果を摩擦実験において実証した。



超電導磁石への高温超電導バルク体電流リードの適用


浮上式鉄道技術研究部(低温システム) 主任研究員 小方 正文

 超電導磁石(SCM)用電流リードには、通電性能の確保だけでなく、リードを経由してSCM内部へ至る熱侵入量を最小限に抑える対策が必要である。そこで低熱伝導率かつ電気抵抗ゼロの特長を有する高温超電導バルク体を用いた電流リード(HTSリード)を開発し、通電性能確認、熱負荷検討を実施した。その結果HTSリードの適用により、ガス冷却構造が不要な電流リード構成等、SCMの更なる簡素化、信頼性向上が可能であることがわかった。



超電導バルク体と超電導コイルを用いた磁気軸受の検討


浮上式鉄道技術研究部(低温システム) 主任研究員 長嶋 賢

 永久磁石と超電導バルク体を組み合わせた磁気浮上技術の応用例としては磁気軸受がある。鉄道総研ではこれを電力貯蔵に応用することを検討しているが、永久磁石を使う限り、発生磁場には限界があり、載荷力密度(超電導バルク体の単位面積あたりに支持できる電磁力)は最大でも10N/cm2程度といわれている。そこで、永久磁石のかわりに超電導コイルを磁束源として用い、載荷力密度を増大した磁気軸受の検討を行っているのでその結果の一端を報告する。



パルス管冷凍機による高温超電導主変圧器用冷却システムの開発


浮上式鉄道技術研究部(低温システム) 主任研究員 池田 和也

 鉄道総研では、在来方式鉄道向け車載用高温超電導主変圧器の開発を進めている。そのためには、高信頼性,高エネルギー効率,小型の冷凍機が必要となる。低温部に摺動部を持たないパルス管冷凍機によれば実現できる可能性が高いことがわかったので、これまでの開発状況について報告する。




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