第200回 鉄道総研月例発表会:最近の信号通信技術

信号通信の研究開発に関する課題と取り組み


信号通信技術研究部 部長 渡辺 郁夫

 信号通信技術研究部では、鉄道の将来に向けた研究開発としてRAMS指標に基づく信号システム構成法、実用的な技術開発としてATSや伝送方式などの各種信号・通信システムの研究開発を進めている。また、軌道回路短絡不良現象解明、雷害およびEMC対策、安全性技術評価法などの基礎研究にも取り組んでいる。このような信号通信の技術分野における主な研究開発の現状と課題、今後の取り組みについて述べる。


鉄道沿線における地上デジタル放送受信障害範囲の推定方法


信号通信技術研究部(通信) 主任研究員 川ア 邦弘

 2003年12月に地上デジタル放送が三大都市圏で開始され、2006年12月には全国での放送が始まった。走行列車の影響も含めた鉄道沿線における地上デジタル放送の受信品質を把握するためには、現時点では実測調査に拠らざるを得ず、障害範囲の把握や対策範囲の決定に時間がかかる。そこで、鉄道総研では、鉄道構造物や列車通過の影響を考慮した障害範囲の推定手法の検討を行っている。本発表では、基本的な推定の考え方と、検討中の手法による試算例を紹介する。



高速データ伝送の鉄道通信回線への導入評価手法


信号通信技術研究部(通信) 研究員 竹内 恵一

 既存のメタルケーブルを使用して高速データ伝送を行うxDSL伝送方式は、ブロードバンドアクセス回線用途等に広く普及しているが、鉄道通信回線に導入する場合には同一ケーブル内の他の通信回線との相互干渉の影響等の要因を事前評価しなければならない。そこで、それらの要因を加味して導入の可否を評価するアルゴリズムを開発し、導入評価を簡便に行えるアプリケーションプログラムとして実装したので報告する。



鉄道環境におけるGPS応用時の課題と対策


信号通信技術研究部(列車制御) 研究室長 山本 春生

 鉄道をはじめとする運輸機関では、測位(位置検知)や装置間の同期にGPSの活用事例があるが、GPSに対する干渉やGPSの脆弱性等により測位や時刻同期をGPSのみに依存することのリスクが否定できない。本報告では、鉄道環境で想定されるGPS測位の信頼性に関する様々な課題を明らかにし、GPSの安全性等を向上させる対策を検討するとともに、列車制御に応用する場合のシステム構築時の留意点をまとめた。



予測制御による効率的な運転方法


信号通信技術研究部(列車制御) 主任研究員 平栗 滋人

 主に都市圏の通勤路線などの高密度線区を対象として、運転上のネックとなりやすい駅で列車の出発時刻を予測し、この情報を基に後続列車を駅間で一旦停止することなく、最短時隔で走行させることで、高度で効率的な運転制御、列車群制御を実現する手法について述べる。さらに、導入効果について、ダイヤ乱れの回復能力、き電回路を考慮した消費電力を計算機シミュレーションによって評価した結果を報告する。



在来線用転換鎖錠装置の改善方法


信号通信技術研究部(信号) 主任研究員 五十嵐 義信

 在来線の転換鎖錠装置は、近年60kgレールを採用した高番数分岐器の実用化により、転換力に対する余裕が少ない等、幾つかの改善すべき点が明らかとなっている。これに対して、現在使用されているNS形電気転てつ機の機構を大幅に変更することなく緩衝鎖錠機構を導入するための方法・機構について紹介する。また、転換性能の向上による転換不能の防止の考え方や、保守を軽減するために提案した鎖錠かんについても紹介する。



軌道回路の短絡不良の要因分析と評価


信号通信技術研究部(信号) 主任研究員 福田 光芳

 軌道回路の短絡状態はレールの錆や汚れだけでなく様々な要因の影響を受ける。しかし、どのような条件で短絡不良が発生するかは明確になっていなかった。そこで、短絡不良の問題を解決できる軌道回路方式開発や既設軌道回路の短絡不良対策の評価や考案を行うための知見を得ることを目的として、短絡状態と各要因の関係について調査を行った。調査結果と今後の軌道回路の考え方について述べる。



信号用電子機器における雷害発生頻度の推定


信号通信技術研究部(信号) 主任研究員 新井 英樹

 信号設備に電子機器が導入されるに従い、多くの雷害が発生するようになった。しかし、雷害対策を検討する際に必要となる実雷時における信号設備での発生雷過電圧について定量的に把握されていないのが現状である。本発表では、雷害が多いとされる踏切設備を対象とした実雷時での雷過電圧発生頻度について報告する。また、ある電圧値以上の雷過電圧が発生する確率式を求めることにより、雷害対策の保護レベルに対応した雷害発生確率を推定した結果について報告する。




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