第203回 鉄道総研月例発表会:電力技術に関する最近の研究開発

電力技術に関する最近の研究開発


電力技術研究部 部長 長谷 伸一

 電力関係の技術開発では、鉄道の安定輸送に寄与すべく、低コスト・信頼性・環境との調和、および基礎研究をキーワードとして研究開発に取り組んでいる。このキーワードに沿って、き電設備・電車線設備について最近の研究開発状況を紹介する。


剛体電車線しゅう動面の初期凹凸低減による波状摩耗対策


電力技術研究部(電車線構造) 主任研究員 清水 政利

 剛体電車線はカテナリ架線に比べて、設備の信頼性が高い、トンネル断面を縮小できる等の有利な特長があり、地下区間やトンネル区間等で採用されている。しかし、一部の区間でトロリ線のしゅう動面に波状摩耗の発生が確認されており、パンタグラフすり板やトロリ線の摩耗を進行させる要因となっている。これらの波状摩耗は、架設時のトロリ線に発生する初期的な凹凸が発生原因の一つとなっていることを明らかにするとともに、その発生要因と低減方法を述べる。



支持点での抑制抵抗が架線張力と集電特性へ及ぼす影響


電力技術研究部(電車線構造) 研究員 常本 瑞樹

 架線の張力は集電特性などへ影響を与えるため一定であることが望ましい。しかし、支持点での抑制抵抗、即ち長さ方向の移動に対する抵抗のため張力が不均一となることが考えられる。その実態を明らかにすべく、ちょう架線滑車支持方式架線について営業線および鉄道総研内で張力測定とちょう架線移動量調査を行った。さらに、その結果を踏まえ、張力が変動した場合の集電特性を架線−パンタグラフ走行シミュレーションを行い評価した。



架線の振動測定によるパンタグラフ接触力推定手法


鉄道力学研究部(集電力学) 副主任研究員 臼田 隆之

 地上設備を通過するパンタグラフの接触力を把握するために、架線に離散的に配置したセンサの出力から、測定区間内を通過しているパンタグラフの接触力波形を測定する手法を開発した。本手法の有効性について、数値計算および所内試験において検証を行った。その結果、本手法により径間周期やハンガ間隔周期の接触力変動を地上側から捉えることが可能であることを確認した。



パンタグラフ接触力による電車線動的診断


電力技術研究部(集電管理) 副主任研究員 福谷 隆宏

 トロリ線とパンタグラフの間に作用する接触力を測定し評価することは、集電の品質を把握するために非常に重要である。また接触力変動は架線の架設状態の影響を強く受けているはずであるので、接触力変動から架線の状態監視が可能であると考えられる。接触力測定原理、接触力波形の特徴、接触力による電車線状態診断への適用、硬点データからの接触力変動の推定などについて述べる。



アルミニウム青銅製電車線用部材の耐食性評価


電力技術研究部(集電管理) 主任研究員 片山 信一

 電車線を構成する部材のうち、トロリ線を把持するイヤーの材質にはアルミニウム青銅が広く適用されている。アルミニウム青銅は耐食性が良好であるが、重塩害地域においては腐食が進行し損傷する事故が発生している。本発表ではアルミニウム青銅製イヤーの腐食事例を紹介するとともに、耐食性向上を目的として開発した材質の耐食性を評価した結果を示す。



BTセクション箇所アーク抑制対策


電力技術研究部(き電) 主任研究員 安喰 浩司

 BTき電回路では約4km間隔でブースターセクション(BTセクション)が存在する。電気車のBTセクション通過時には、パンタグラフで負荷電流の一部を遮断するためアークが発生し、負荷電流が大きくアークが大きいと電車線設備を傷める。この対策としてBT電圧とBT電流の条件から電車通過を検知し、電車通過時のみ開閉器でBT二次側を短絡させる方式を考案した。この方式によるアーク抑制装置を試作し現地試験を行い、良好な結果を得た。



交流き電回路計算手法の開発


電力技術研究部(き電) 主任研究員 兎束 哲夫

 変電設備設計に際しては、列車運転電力量や架線電圧降下等を精度よく推定する必要がある。そこで、列車ダイヤ、車両性能、線路条件、変電設備条件等を簡易に入力可能として定速運転、一段ブレーキ等を模擬できる運転電力計算アルゴリズムを開発し、多線条回路網解析アルゴリズムと組み合わせた交流き電電力計算シミュレーションソフトを開発した。このシミュレーションの概要と計算結果を紹介する。




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