第212回 鉄道総研月例発表会:車両技術に関する最近の研究開発

車両の省エネルギー関連の研究開発

車両制御技術研究部 部長 秦   広

鉄道は、各種輸送機関の中で省エネルギー性に優れているが、ハイブリッド自動車の発展や燃費のよい航空機への置き換えの進展など、他の輸送機関でも省エネへの努力が続けられている。鉄道総研でもさらなる省エネルギーを目指して研究開発が行われている。本報告では、鉄道総研の車両関係の研究開発の概略を紹介した後、省エネルギー関連のいくつかのトピックスを報告する。


在来線電車の消費エネルギー評価システム

車両制御技術研究部(動力システム)副主任研究員 近藤  稔

電車の省エネルギー化を検討する上では、消費エネルギーの定量的評価が重要である。しかし、具体的な線区と車両に対し評価をするためには、車両性能、地上側設備、運転手の運転方法を考慮して運転曲線を求め、電気機器の特性や動作を考慮して消費電力を計算する必要があり、非常に複雑な計算となる。そこで、その計算を極力省力化することを目指し消費エネルギー評価システムを開発したので、これについて紹介する。


ディーゼル車両の排ガス測定・評価手法の開発

車両制御技術研究部(動力システム) 主任研究員 芳賀 一郎

JR工場等のエンジンベンチ試験台や走行中の気動車で比較的容易に実施可能な排ガス測定方法、測定項目等を検討した。その結果を用いて、ベンチ試験台と走行中の気動車の排ガス車上測定を実施し、その差や課題を明らかにした。さらに、走行中の気動車のノッチおよび機関回転速度域ごとの使用頻度を多数の列車で調査し、その分析結果を基に、気動車用エンジンの排ガス評価に用いる試験モード案を作成した。これらについて紹介する。


架線・バッテリーハブリッドLRVの開発

車両制御技術研究部(駆動制御) 研究室長 小笠 正道

回生有効利用による省エネを目指し、架線と車載リチウムイオンバッテリーによる電源ハイブリッド型LRV車両をNEDO委託により開発した。1500Vと600Vの複電圧架線とバッテリーのハイブリッド変換器主回路と制御、充電電流1000Aによる停車中急速バッテリー充電のための温度抑制手法など、新規開発技術を説明する。また、車両性能、省エネ効果、無給電走行距離など所内および軌道事業者での走行結果について報告する。


踏面清掃装置のかじり現象に関する実験的研究

車両制御技術研究部(ブレーキ制御) 副主任研究員 嵯峨 信一

高速から停止に至るまで、ほとんど緩解せずに減速する一段ブレーキを採用した新幹線車両などにおいて、踏面清掃装置の増粘着研摩子摺動面にかじり鉄片の発生が見られることがある。かじり鉄片は、ある程度の大きさに成長するとレール上に落下し、列車がその上を通過することによって異音や異常振動が発生するなどの問題の原因となっている。本研究では、原因および対策を検討するため、台上試験機によりかじり鉄片再現試験を行ったので、その結果について報告する。


台車枠溶接部強度評価のための実働応力ひん度分布

車両構造技術研究部(車両強度) 主任研究員 織田 安朝

台車枠溶接部の強度評価、特に寿命評価においては、当該溶接部の実働応力ひん度分布を知ることが重要である。実働応力ひん度分布は走行試験によって得られるが、設計段階および使用条件を変更する際において実働応力ひん度分布を予測することは困難である。そこで、過去の走行試験から実働応力ひん度分布の特性を明らかにし、走行条件(速度、線区、積空等)による影響について検討した結果を報告する。


非構造部材を活用した車体剛性向上の取り組み

車両構造技術研究部(車両振動) 主任研究員 瀧上 唯夫

通勤車両で主流となっているステンレス鋼製車体は、車体の軽量化・製造工程の省力化に貢献しているが、一方で振動測定の結果、車体の床、屋根、側各面が独立に振動する傾向があり、複数の曲げ振動モードが乗り心地に影響を与えていることがわかった。そこで、従来強度部材として考慮されていなかった非構造部材を活用して車体剛性を向上することにより、車体曲げ振動を低減することをめざした検討を行っている。ここでは、このようなコンセプトで製作した「剛性試験車体」の概要と、車両試験台による加振試験結果について紹介する。


圧電材料による鉄道車両車内騒音低減システム

車両構造技術研究部(車両振動) 主任研究員 山本 克也

鉄道車両の車内騒音対策の新たな手法として、圧電材料を貼付した振動板を平面状に配列し、制御回路により振動板の透過音を抑制するパネル状の騒音低減システムを開発した。新幹線車両のデッキ部やパンタグラフ下の天井に取り付け走行試験を行った結果、それぞれ制御対象周波数域において約3dB低減できることを確認した。そこで、開発した騒音低減システムの概要、数値解析による騒音低減効果の予測、走行試験結果などを発表する。



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