第219回 鉄道総研月例発表会:新潟県中越地震の地震動及び車両走行に関するシミュレーション解析

新潟県中越地震に対する鉄道総研の取組み

研究開発推進室  室長  市川篤司

新潟県中越地震の発生直後、鉄道総研は所内に「新潟県中越地震復旧支援本部」を組織し、JR東日本の依頼を受けて現地調査、復旧支援を行うとともに、脱線状況の調査・脱線メカニズムの解明等のために設置された「上越新幹線脱線調査専門委員会(JR東日本主催)」に協力し、地震動や車両挙動の推定等を行った。本講演では、JR東日本とともに進めてきた鉄道総研の取組みの経緯と概要を報告する。


新幹線脱線の状況

鉄道力学研究部  部長 石田弘明

JR東日本「上越新幹線脱線調査専門委員会」の調査結果に基づき、新潟県中越地震発生時の「とき325号」の運転状況と事故概況を報告する。特に、以下の講演で発表する解析結果と現場の状況との関係についての理解を助けるため、脱線箇所付近の線路の構造と線形、車両・軌道・構造物の損傷状況とこれらに基づいて推定された地震時の列車位置及び脱線経過を詳しく紹介する。


脱線地点周辺における地震動の推定

構造物技術研究部(耐震構造) 主任研究員 室野剛隆

JR新長岡SSPの地表で観測された地震動を基準地震動として考え、震源からの距離の影響や表層地盤の影響などを考慮しながら、その波形を基盤位置まで引き戻し、脱線地点周辺の基盤位置での地震動を推定した。次に、脱線地点を含む周辺領域の堆積地盤(約700mの領域)を2次元FEMでモデル化し、先に示した基盤地震動に対する地震応答解析を実施することにより、地表面地震動を求めた。本発表ではこれらの結果を報告する。


地盤の液状化程度の推定と構造物の沈下の影響

構造物技術研究部 部長 舘山 勝

新潟県中越地震では、直接基礎で支持された橋りょうや高架橋の一部が沈下した。また、脱線箇所付近では高架橋柱に泥土の跳ね上がりが見られたことなどから、地盤の液状化が脱線の要因の一つではないかと考えられた。そこで詳細な土質調査結果に基づき、脱線箇所付近での地盤の液状化程度の推定ならびに橋りょうの沈下解析を実施し、地盤の液状化や構造物の沈下挙動が新幹線の脱線に与える影響について検討したので、その結果について報告する。


推定地震波による構造物の動的応答

構造物技術研究部(コンクリート構造)研究室長 谷村幸裕

新潟県中越地震において脱線した車両が地震時に走行したと考えられる区間には多数の構造物が存在する。したがって、車両走行シミュレーションにより、地震時における車両の挙動を把握するためには、車両を支持する構造物の挙動を精度よく推定する必要がある。そこで、対象となる構造物の状況を調査し、多数の構造物の挙動を精度よく、かつ効率よく解析するためのモデル化を行い、推定地震波を受けた場合の構造物の動的応答解析を実施したので報告する。


推定地震波を受ける構造物上の車両挙動

鉄道力学研究部(車両力学) 研究室長 宮本岳史

構造物の動的応答解析により求めた高架橋天端の振動波形を入力し、速度204km/hで走行する200系新幹線電車が推定地震波を受けた際の挙動を車両運動シミュレーションにより解析し、車両が脱線したときの構造物の振動波形、脱線時の車体、台車、輪軸と軌道の動きを明らかにした。また、現場の状況から推定された列車の脱線経過とシミュレーション結果に基づく脱線時の推定地震動との関係を検討した。本講演ではこれらの結果について報告する。


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