第226回 鉄道総研月例発表会:信号通信技術に関する最近の研究開発

信号通信分野の最近の研究開発

信号通信技術研究部 部長 渡辺 郁夫

鉄道総研の信号通信分野では、閑散線区の閉そくを低コストで実現する無線利用の新しい列車制御、現行の設備を最大限利用しつつ保安度の向上を図ったATSなどの新しい列車制御システムを開発している。また、軌道回路の短絡不良対策、機器の雷害対策など、信号システムの高信頼化のための研究開発を実施している。さらに、新しい通信技術の鉄道への適用や、信号システムの安全性評価、EMC評価等の評価技術、画像処理の鉄道への応用技術などに関する研究開発を実施している。このような信号通信の技術分野における最近の主な研究開発を紹介する。


閑散線区向けの低コストな列車制御システム

信号通信技術研究部 列車制御 研究室長 山本 春生

国鉄末期に導入された電子閉そく装置が更新時期を迎えつつあり、また技術基準の改定により速度制限区間への防護措置が義務付けられる。そこで、閑散線区における信号保安設備のシステムチェンジを目指し、無線ICタグ、無線LAN等の汎用無線技術を利用する低コストな列車制御システムの開発を進めている。ここでは、汎用無線技術の適用可能性、現行設備を適用可能なシステムの検討結果について報告する。


車上速度照査式ATS-Xシステム

信号通信技術研究部 信号 主任研究員 新井 英樹

現在,JR会社で広く用いられているATS-S改良型と互換性を保ちつつ,保安度向上のために,車上速度照査機能を付加したATS-Xシステムを開発した。ATS-Xは信号冒進防護機能の改善が図れるともに,線路条件に応じた速度制限機能(技術基準省令第57条対応機能)も有する。さらに,車上データベースを活用することにより,曲線等の速度制限区間毎に地上子を設置する必要がなく,速度制限機能を低廉に実現できる。本発表では,ATS-Xシステムの機能概要について説明するとともに,システム機能検証のために実施した現車試験結果について報告する。


連動図表作成支援システムの機能向上

信号通信技術研究部 列車制御 主任研究員 関根  俊

駅毎に異なる連動装置の動作を決定する連動図表の作成を、効率的に支援するシステムの開発に取り組んできた。最近の機能向上として、設計者の意図をできるだけ反映しやすい作成支援環境を整備すると共に、設計者をナビゲートすべく解説機能を新たに開発したので報告する。解説機能は、作成した連動図表について、様々な形態で解説を行うことができる他、連動装置の動作を模擬し内部状態を表示するなどして解説を行うものである。


新幹線用転換鎖錠装置の転換動作のモデル化

信号通信技術研究部 信号 研究員 潮見 俊輔

転てつ機の転換負荷力のような機械的特性は現状では分岐器を含めた実機を用いた試験により評価されている。そこで、試験によらない定量的な評価手法の確立を目指して、新幹線用転換鎖錠装置を対象とした転換動作のモデル化を進めている。本報告では、検討してきた解析モデルの概要を紹介するとともに、解析モデルにより得られた解析結果と実測結果との比較を紹介する。


鉄道沿線における地上デジタル放送受信障害範囲推定法

信号通信技術研究部 通信 研究室長 川ア 邦弘

2006年12月に全国で地上デジタル放送が開始され、2011年にはアナログ放送が終了する予定となっている。鉄道沿線での地上デジタル放送の受信品質が走行列車による影響を受けるか否かを把握するためには、現状では時間・コストのかかる実測調査に拠らざるを得ない。そこで高架や列車による回折現象と、高架下を通過して到来する電波の影響を考慮して受信レベルを計算する手法を検討し、影響の有無を推定するプログラムを開発した。本発表では、推定手法の概要と開発したプログラムの機能と推定精度等について報告する。


車上型画像処理による信号機認識手法

信号通信技術研究部 信号 主任研究員 鵜飼 正人

保安装置により防護されていない臨時信号機は運転士の目視確認に依存している。また、特殊信号発光機は、運転時間帯での視認距離確認が難しいことが課題となっている。そこで、運転士へのバックアップを目的とした徐行予告信号機の認識手法、及び殊信号発光機の車上からの確認手法の開発を進めている。本発表では、検討した画像処理アルゴリズムを中心に紹介する。




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