第233回 鉄道総研月例発表会: 軌道技術に関する最近の研究開発

軌道技術の最近の話題と今後の課題

軌道技術研究部 部長 石田 誠

軌道を取り巻く最近の話題として,軌道の維持管理標準や軌道構造設計標準について紹介するとともに,走行安全性を確保しつつさらなるメンテナンスの低減のために,総研が取り組んでいる課題を解説する。


軌道保守計画策定支援システムの開発

軌道技術研究部(軌道管理) 主任研究員 三和雅史

軌道保守計画には,マネジメント部門において中長期的に適切な保守を検討する段階と現業部門において日常的な保守を検討する段階があり,各段階で戦略的に計画を作成すると共に,その実施の過程で各計画が更新,改善されるサイクルの構築が重要である。このため,軌道変位及びレール保守の年間計画,材料交換を含む中長期的に適切な保守計画の作成を支援するシステムを開発した。本発表では本システムの概要と活用方法を述べる。


2台車検測車の偏心矢データを用いた継目落ち・角折れの管理法

軌道技術研究部(軌道管理) 研究員 南木聡明

継目落ちや角折れのような局所的な軌道変位の評価には,10mより短い弦長の正矢が適している。これには,2台車軌道検測車の偏心矢を短い弦長の正矢に換算するのが有効である。ここでは,在来線用2台車検測車の弦長を用い,換算精度の面から最短弦長の正矢を検討した。さらに,時刻歴シミュレーションによって具体的な管理目標値を算定した。本報告では,これらの検討結果について報告する。


無線センサネットワークを用いた軌道変位常時監視システムの開発と応用

軌道技術研究部(軌道・路盤) 主任研究員 村本勝己

軌道の変位を常時監視するシステムは,線路近接工事のモニタリングのみならず防災対策という観点からも潜在的な需要が大きい。これに対し本研究では,傾斜計と無線センサネットワークを組合せた,低コストの軌道変位常時監視システムを開発している。本発表では,本システムの概要および試験結果を報告すると共に,低コストに多点計測が可能な本システムを軌道以外に応用した例について紹介する。


改良形接着絶縁レールの実用性能評価

軌道技術研究部(軌道構造) 主任研究員 若月 修

接着絶縁継目における接着材のはく離や継目板折損対策として鉄道総研で考案した改良形接着絶縁レールは,テフロンシートを用いた人工界面を接着層内部に設けることで,接着材と継目板界面からの剥離を抑制し,継目板の腐食を防止する構造である。本報告では,この実用性能を確認する目的で試験敷設を行った評価結果と,新幹線の接着絶縁レールで発生している継目板ボルトの折損対策として,緊締トルクを350N・mに低減した場合の引張強度および接着材のはく離進展について検討した結果を報告する。


分岐器介在ロングレールの敷設範囲拡大に向けた評価手法の研究

軌道技術研究部(軌道構造) 研究員 西宮裕騎

近年,騒音対策や保守管理の効率化を目的として,分岐器が介在する区間のロングレール化が進められている。敷設に際し,分岐器の配置や軌道構造および高架橋の条件などに依存するレール軸力の分布を把握し,軌道の座屈安定性や高架橋への影響に関する検討が必要となる。本報告では,複数台の分岐器が介在する高架橋上のレール軸力解析システムを始めとする,分岐器介在ロングレールの敷設範囲の拡大に向けた評価手法を紹介する。


テルミット溶接部の凝固割れ折損防止対策

軌道技術研究部(レール溶接) 研究員 伊藤太初

近年,テルミット溶接部では超音波探傷検査等の改善により折損溶接部の数が減少しているが,凝固割れを起点とする早期折損事例は未だに報告されている。そこで,テルミット溶接部の凝固割れ発生条件を解明するため,テルミット溶接金属の凝固中に強制的にレールを移動させる凝固割れ再現試験を実施した。本発表は,凝固割れ再現試験結果から判明した凝固割れ発生条件を報告すると共に,凝固割れ折損防止対策について紹介する。


衝撃荷重下における軌道パッドの特性評価

材料技術研究部(防振材料) 副主任研究員 鈴木 実

鉄道沿線環境の向上に関する社会的ニーズが増加する中で,振動騒音の一因としてレール車輪間の接触力に起因する振動の低減が求められている。本研究では,軌道を模擬した重錘落下式の衝撃試験機を用いた実験により,車輪踏面やレール頭頂面の不整(凹凸)に伴い生じる衝撃輪重を想定した荷重に対する緩衝用(第二種)軌道パッドの応答特性評価を試みた。併せて,非線形動的構造解析手法を用いた衝撃荷重下における軌道パッドの動的挙動の数値解析を行い,実験により解析結果を検証したので,これらの結果について紹介する。



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