第245回 鉄道総研月例発表会:施設材料に関する最近の研究開発

施設材料に関する最近の研究開発

材料技術研究部 部長 久保 俊一

鉄道を支える構造物、軌道等の施設の機能向上、長寿命化、保守軽減のためには、設計施工技術の向上のみならず、そこで使われる材料自体の性能向上や劣化抑制が望まれる。ここでは、防音、導電、接着などの機能を持つ材料の施設への適用と、コンクリート構造物の維持管理に関する材料技術の状況について紹介するとともに、新たな技術や材料の導入など今後の展望について解説する。


レール継目用防音材の防音効果

防振材料研究室 副主任研究員 間々田 祥吾

一般に、車両がレール継目を通過する際に発生する騒音は一般区間よりも大きく、その対策が求められている。そこで、ロングレール区間の絶縁継目を対象に、その騒音低減を目的としてレール継目用防音材を検討した。レール継目用防音材は絶縁継目で要求される条件を考慮して設計した。本発表では、レール継目用防音材の開発の経緯を述べるとともに、実軌道における車両通過時の騒音測定による効果確認試験などについて報告する。


導電性塗料を用いた鋼構造物用き裂検知手法の開発

防振材料研究室 副主任研究員 坂本 達朗

現在、鋼構造物に発生する疲労き裂の検査は定期的な目視検査を主として実施され、き裂発生時の早急な対応が困難な構造物も存在する。そのため目視以外の検査手法が開発されれば、鋼構造物の維持管理の効率化・コスト低減に寄与すると考えられる。そこで本研究では、目視に頼らない疲労き裂の発生・進展検知手法として、導電性塗料の抵抗変化を利用した疲労き裂検知手法を提案した。ここでは、疲労き裂検知手法の開発の経緯および概要を述べるとともに、屋外環境の適用評価試験結果について紹介する。


コンクリート接着性防水シートの改良

防振材料研究室 主任研究員 矢口 直幸

地下構造物内部への漏水を防止するため、躯体コンクリートと化学的に接着するコンクリート接着性防水シートを開発し、漏水の抑制が可能となった。しかし、従来のコンクリート接着性防水シートは、シートの特徴である接着強度の発現に1ヶ月程度を要し、さらに接着層に用いる樹脂が高価なため、製品コストが一般の防水材料と比べ割高であった。そこで、安価で早期に接着性能を発現する方法を考案した。ここでは、改良したコンクリート接着性防水シートについて紹介する。


コンクリートの部分断面補修箇所周辺の鉄筋腐食機構

コンクリート材料研究室 主任研究員 飯島 亨

コンクリート構造物の劣化対策の一つとして、部分断面補修が用いられている。近年、この箇所の周辺で鉄筋腐食による早期劣化が認められ、その劣化対策が求められている。そこで、本研究では、部分断面補修箇所周辺の鉄筋腐食による劣化の機構を明らかにするため、現地構造物の調査を実施して、現地構造物を模擬した分割鉄筋入りの供試体の鉄筋間を流れる腐食電流量の測定を実施した。ここでは、コンクリート構造物の部分断面補修箇所周辺の鉄筋腐食機構について報告する。


施工後の耐久性に着目したセメント系補修材の品質評価

コンクリート材料研究室 研究室長 上田 洋

セメント系補修材は、コンクリート構造物の断面修復材として汎用的に使用されており、その補修効果を高めることはコンクリート構造物の耐久性向上に有効である。セメント系補修材の耐久性の評価は一般に補修材単体で実施されることが多く、コンクリートへの施工後の耐久性について論じた例は少ない。本研究では、施工後の耐久性を明らかにするために、コンクリートとセメント系補修材との界面に着目し、品質評価を試みた結果について報告する。


酸溶解による硬化コンクリート中のアルカリ量測定手法

コンクリート材料研究室 主任研究員 鶴田 孝司

コンクリート構造物におけるアルカリシリカ反応の詳細な評価手法を確立するためには、硬化コンクリート中のアルカリ総量を的確に把握する必要がある。そこで、本研究では、骨材からのアルカリ溶解量を考慮したコンクリートのギ酸溶解により、新設構造物など使用骨材が入手できる場合では、±0.1kg/m3程度の誤差で硬化コンクリート中のアルカリ総量を求める手法を提案した。ここでは、その内容について報告する。また、使用骨材の入手が困難な場合に対するアルカリ総量の求め方の検討内容も紹介する。


ジオポリマー法による環境負荷低減PCまくらぎの開発

コンクリート材料研究室 主任研究員 上原 元樹

ジオポリマーコンクリートはポルトランドセメントを使用しないため、一般的なコンクリートと比較して80%ものCO2を削減できると試算されている。また、産業副産物を有効利用できる点においても、ジオポリマーコンクリートは注目を集めているが、このジオポリマーコンクリートの製品レベルでの製作例は少ない。そこで、PCまくらぎにジオポリマー法を適用し、ポルトランドセメントを使用しないPCまくらぎを開発した。ここでは、その作製法や諸性質に関して報告する。