第265回 鉄道総研月例発表会:鉄道シミュレータの開発状況

鉄道シミュレータの開発状況

鉄道力学研究部 主管研究員 石田 弘明

 2010年度より、高度シミュレーション技術を活用した鉄道シミュレータの構築を目指して、各分野の力学的な現象をコンピュータの中で再現し解明するための個別シミュレータを開発している。本発表では、常時の列車走行を対象としたバーチャル鉄道試験線と地震時を扱う地震災害シミュレータの実現に向けた各シミュレータの開発スケジュールと今後の計画について紹介する。


車両走行シミュレータにおける車両・軌道モデルの構築

車両構造技術研究部 車両振動研究室 主任研究員 鴨下 庄吾

 軌道上を車両が走行することによって引き起こされる様々な現象をシミュレーションするために必要となる各種車両、軌道のモデルを作成した。このモデルは単に走行安全性や振動乗り心地を評価するだけでなく、車両が繰り返し走行することにより発生する車輪やレールの摩耗等、長期劣化現象の予測にも活用する計画である。本発表では、マルチボディダイナミクスをベースとした車両・軌道モデルの開発状況と車両走行シミュレータの計画について紹介する。


路盤〜車輪間の大規模並列計算モデル

鉄道力学研究部 軌道力学研究室 主任研究員 相川 明

 列車が繰り返し走行することにより生じる軌道の劣化現象を解明し、長期劣化の予測と効果的な対策の提案に活用すべく路盤〜車輪間の大規模並列計算モデルの構築を進めている。本発表では、まず路盤〜車輪間の大規模並列計算モデルの全体構想について紹介し、そのあとでバラスト軌道劣化モデルを中心にその開発状況と今後の取り組みについて報告する。


車輪とレールの動的転がり接触解析

鉄道力学研究部 計算力学研究室 室長 高垣 昌和

 車輪とレールの接触面に発生する荷重や応力の高周波変動は、車輪やレールの摩耗・損傷、軌道劣化をもたらす要因になると考えられるため、評価速度(〜300km/h)での走行時に接触面内で起きている現象を明らかにすべく、弾塑性有限要素モデルを用いた車輪とレールの動的転がり接触解析を進めている。本発表では、その実施状況と今後の計画について紹介する。


架線・パンタグラフ3次元動的相互作用シミュレータ

鉄道力学研究部 部長 池田 充

 架線・パンタグラフ系の3次元動的相互作用をより精密に解析するため、有限要素法に基づく架線・パンタグラフ系の3次元運動シミュレータを開発した。本シミュレータの特徴は、架線金具等の3次元的な運動に伴う幾何学的非線形性を考慮していることである。本発表では、シミュレータの概要といくつかの計算事例について紹介する。


空気流・空力音シミュレータ

環境工学研究部 車両空力特性研究室 主任研究員 中出 孝次

 複雑形状周りの流れを解析するために、形状表現の単純化により計算格子の自動生成を可能とする直交格子法に基づく流体解析方法が近年注目されており、その鉄道分野への応用を目標に空気流シミュレータの開発を進めている。ここでは、その開発状況や、基本形状を対象とした精度検証などについて紹介するとともに、パンタグラフ周りの流れへの適用の進捗状況にも触れる。また、流れの大規模解析により得られた流速分布と音響的伝播特性に基づいて空力音を予測する空力音シミュレータの開発状況及び解析事例について紹介する。さらに、空気流・空力音の各個別シミュレータの今後の統合計画について言及する。


地震災害シミュレータ

構造物技術研究部 耐震構造研究室 主任研究員 井澤 淳

 巨大地震による鉄道沿線の被害予測と対策の評価に活用するため、地震災害シミュレータの開発を目指した地盤・構造物データベースの構築と、地盤・構造物群モデルの自動作成プログラムの開発を進めている。また、巨大地震の発生や地震動の伝播を再現するシミュレーションプログラムも開発してきた。本発表ではこれらの開発状況と、延長数百kmの鉄道路線で発生する地震被害の予測を目指した地震災害シミュレータの構想について紹介する。




第265回月例発表会のページに戻る

HOME RTRI ホームページ
Copyright(c) 2013 Railway Technical Research Institute