第271回 鉄道総研月例発表会:

電力技術に関する最近の研究開発

電力技術研究部 部長 兎束 哲夫

電力技術に関わる最近の研究開発として、鉄道総研の2010〜2014年度の基本計画に基づく鉄道の将来に向けた研究開発の中から「電力の新供給システム」、「新しい状態監視保全技術」および「地震に対する安全性向上」を中心に、各テーマの概要と今後の展望について紹介する。


電力地上設備への低ロス半導体素子適用

電力技術研究部 き電研究室 室長 重枝 秀紀

炭化ケイ素(SiC)等の材料を用いた新しい半導体素子は、損失が少ない、耐電圧が高い、高温で動作可能等の特徴を持ち、鉄道分野においても省エネルギー・装置の小型化等の観点から、様々な用途での応用が期待されている。本研究では、その用途の一つとして直流遮断器を対象に、現在主流の半導体素子であるSi-IGBTを遮断媒体としたミニモデルを製作し、現状の素子の特性と将来の低ロス半導体素子に必要な性能を検証した。本発表では、低ロス半導体素子の技術動向とあわせて検証結果を報告する。


き電系統のメンテナンス軽減技術

電力技術研究部 き電研究室 副主任研究員 赤木 雅陽

鉄道事業者では、き電系統に存在する変電所機器や電車線路等のメンテナンス作業に多大な労力を費やしている。ここでは、センサ技術に基づくメンテナンス作業軽減への取り組み成果として、変電所遮断器の振動解析による故障予測、半導体匂いセンサによるケーブル過熱検知、環境センサによる高圧がいし汚損環境の性能評価、ならびに経年ポリマーがいしの機械的強度評価の結果について紹介する。


アーク放電が集電系材料の質量と表面状態に及ぼす影響

電力技術研究部 電車線構造研究室 副主任研究員 早坂 高雅

アーク放電が集電系材料へ及ぼす影響を研究するために、電気鉄道で実際に使用されている材料を用い、発弧線を用いない方法で通過電気量が数百Cのアーク放電実験を行った。これにより、集電系材料として一般的に用いられている材料のアーク消耗を定量的に示すとともに、すり板種別の違いにより生じるアーク消耗の違いを定性的に明らかにすることができた。本発表では、アーク放電が発生した際の通過電気量と集電系材料の質量変化との関係や集電系材料の表面状態について報告する。


電車線コネクタの疲労寿命推定手法

電力技術研究部 集電管理研究室 副主任研究員 山下 主税

電車線のコネクタ損傷の主な原因は金属疲労によるリード線の素線切れであるが、現状の疲労評価はJISのイヤー金具緩みに対する振動試験を適用しているに過ぎず、実際のコネクタ疲労寿命推定手法は確立されていない。本発表では、回転曲げ疲労試験によるコネクタの疲労寿命特性の把握や、有限要素法解析によるコネクタの振動特性を考慮した曲げひずみ推定から、トロリ線の任意振動波形に対するコネクタ疲労寿命の推定手法を紹介する。


新幹線トンネル内の風が集電性能へ及ぼす影響

電力技術研究部 電車線構造研究室 室長 清水 政利

新幹線のトンネル内では、列車の通過に伴い空気の流れが生じ、電車線やパンタグラフの運動に影響を及ぼすことが知られている。現在の車両形式と走行速度における実態を把握するため、また、今後の速度向上時の集電性能を予測して設備の改良方針を示すため、新幹線において電車線周りの風速と電車線の運動を実測した。測定結果から、走行速度との相関、対向列車の有無による影響の定量的評価と、トンネル内の風が集電性能に与える影響評価について報告する。


画像情報に基づくパンタグラフの接触力測定装置の実用化

鉄道力学研究部 集電力学研究室 副主任研究員 小山 達弥

鉄道総研では架線・パンタグラフ間の接触力を測定し、電車線設備状態を診断する手法の研究開発を行っている。この根幹となる接触力測定手法についてはすでにその基本原理を確立しているが、センサをパンタグラフに実装するため、大がかりな設備を必要とするという課題があった。そこで今回、パンタグラフにセンサを実装することなく、画像情報によって簡易に接触力を測定する装置を開発し、営業車に適用したので紹介する。




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