エネルギー回生型車両の開発について
− 架線レス バッテリー トラム −

平成15年8月20日
財団法人鉄道総合技術研究所

 財団法人 鉄道総合技術研究所では、電車にエネルギー蓄積装置を搭載し、運動エネルギーの回収率を向上させる研究開発を行っております。この度、この開発過程で、車載リチウムイオン二次電池システムによる、エネルギー回生型車両の架線レス バッテリー トラム(路面電車)の構内試験線での実験走行に成功しました。
 架線レス バッテリー トラムを駆動させるためのエネルギー源は、ハイブリッド自動車でも使用されているリチウムイオン二次電池です。この電池は、ハイブリッド自動車用の電池として要求される急速充放電特性と、電気自動車用電池として要求される大エネルギー容量特性を併せ持ち、電池としては高い電圧である600V、500Aの大電流充放電が可能な鉄道車両用システムとして開発しました。なお、本電池は日本電池株式会社殿に製作を依頼しました。
 リチウムイオン二次電池は他の電池と比較し、同じ重量または体積であればエネルギー容量が最も多く、小型軽量化できるという利点があります。今回のシステムでは、300kWの大パワーで33kWhのエネルギー量を持ちながら、システム重量が約1トンという軽量化を実現しました。また、本システムでは急速充放電ができるため、電車がブレーキをかける際にモータを発電機として回すことで、運動エネルギーを電気エネルギーに変えて回収する"回生ブレーキ"時の大電流に対応できます。そのため、摩擦による機械ブレーキを用いることなく、走行抵抗や電気抵抗以外の全てのエネルギーをバッテリーに回収することが可能です。
 本システムを実際のトラムに組み込んだ実験走行では、最大ブレーキ時の運動エネルギーの回収効率は75%までに達し、加速時に使用したエネルギーのほぼ半分のエネルギーをバッテリーに回収することができました。エネルギー効率が良いため、バッテリーに蓄積されている電気を無駄にすることなく有効活用することができます。
 往復約1kmの試験区間では、フル充電から約半分の電池容量になるまで、15往復以上の走行が可能でした。この実験走行結果から、500mおきに停留所のある15kmの路線を走行することが可能となります。また、この電池の急速充放電特性を活かして、折り返し待機時にフル充電にすることも可能です。
 この実験走行に成功したことで、架線保守費の削減や都市景観の向上などの効果も期待できます。現時点では、クーラーなどの車内サービス機器をまかなうための更なるエネルギー容量の増大や、電池を限界まで使用すると寿命が短くなるといった化学電池自体が持つ課題への対応も残っています。しかし、他の蓄電媒体にはないエネルギー容量の大きさに注目することで、架線のいらない無公害電車としての適用の可能性が期待できます。



図1 架線レス バッテリー トラム
(パンタグラフなし)



図2 車載バッテリー装置
(左:測定装置 右:バッテリー装置)




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