平成16年 3月10日

吹付け修復工法「ジョッツクリート」の開発・実用化

財団法人 鉄道総合技術研究所
株式会社 大林組
東急建設 株式会社
昭栄薬品 株式会社
日本化成 株式会社

1.はじめに
 財団法人 鉄道総合技術研究所(東京都国分寺市,理事長:副島廣海)、株式会社 大林組(東京都港区,社長:向笠愼二)、東急建設株式会社(東京都渋谷区,社長:山田豊彦)、昭栄薬品株式会社(大阪市中央区,社長:鐡野磨輝男)、日本化成株式会社(東京都新宿区,社長:東憲正)は共同研究の成果として、特殊なモルタルを吹付けることにより低コスト、短工期でコンクリート構造物を修復する「ジョッツクリート」工法を開発しました。本工法は耐久性と経済性、施工性に優れており、既設コンクリート構造物の延命化を図るとともに、維持管理コストを含めたライフサイクルコストを低減します。

2.開発の経緯
 コンクリート構造物の修復方法には、劣化部分を除去し、型枠を組んでコンクリートを流し込む工法や、乾燥した材料を空気搬送し、その途中で急結剤を合流混合する乾式の吹付け工法などが用いられています。これらはコストが割高となったり、作業環境や施工性に問題があるなどの課題があるため、経年劣化したコンクリート構造物に対し、経済的かつ耐久性の高い修復を行うことで、維持管理費を含めたコストを低減する工法の開発が求められていました。このような課題を検討する中で、「ジョッツクリート」工法の開発・実用化に至りました。

3.「ジョッツクリート」工法の概要
 「ジョッツクリート」工法は、ポリマーセメント系のプレミックス材料と補強繊維を水で練り混ぜて調整した後、吹付け機で極めて流動性の高いモルタルを圧送し、その途中で硬化制御剤を合流混合する湿式の吹付けにより劣化したコンクリート断面を修復する工法です。
 本工法には流動性と品質を高めた繊維補強ポリマーセメントモルタル(商品名称:NSパワーショット)を用いることとしています。
 「NSパワーショット*」は、西日本旅客鉄道株式会社殿が規定している9項目の品質基準を満足し、断面修復材として認定されました。現在、同社の鉄道高架橋における補修工事により施工性等を確認しています。

4.「ジョッツクリート」工法の特長
 「ジョッツクリート」工法の主な特長は以下のとおりです。
(1)最大厚100mm程度まで厚吹きにより、工期短縮が可能
 従来の湿式の吹付け工法では厚吹きが困難でしたが、「ジョッツクリート」工法では、硬化制御剤を添加しているので、最大厚さ100mm程度までの断面修復を、連続的に急速施工できます。このため、工期を1割程度短縮できます。また、従来の湿式吹付け工法の設計と比べ、ポリマーセメントモルタルの材料価格が約1割低減されるので、低コストな修復が可能です。
(2)吹付けモルタルの流動性が高いため、安定したポンプ圧送が可能
 従来の吹付けモルタルのフロー値**は170mm程度でしたが、「ジョッツクリート」工法で用いるモルタルのフロー値は250mm程度で、極めて流動性に富んでいます。このため、安定したポンプ圧送が可能です。
(3)鉄筋背面への確実な充填が可能
 従来の工法では鉄筋背面への充填が困難でしたが、「ジョッツクリート」工法では吹付けノズルの適切な操作方法、ブローパイプの利用方法等を確立したため、鉄筋背面への確実な充填が可能となり、高い耐久性が確保されることとなりました。
(4)補強繊維の混合により高い耐剥落性能を実現
かぶり部分に繊維を混合することにより、高い耐剥落性能が確保されることとなりました。

5.おわりに
 今後、開発5者はコンクリート構造物のライフサイクルコストを低減する工法として、「ジョッツクリート」工法の普及を図ってまいります。併せて、断面修復技術の標準化、施工技術者の養成についても取り組んで行きたいと考えております。

以上


*「NSパワーショット」は日本化成株式会社が製造し、昭栄薬品株式会社が当面、材料の販売、技術支援の窓口となります。
**フロー値とは、フレッシュモルタルの軟らかさ、または流動性を示す指標の一つで、所定のコーンを用いて成形した試料の直径の広がりで表した値です。





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