世界初 燃料電池で鉄道車両用台車の駆動試験に成功

平成16年4月16日
財団法人 鉄道総合技術研究所

 財団法人鉄道総合技術研究所(以下、鉄道総研)は、燃料電池により発電した電気を用いて、鉄道車両に実際に使われている台車の駆動試験に成功しましたのでお知らせします。

 現在、全世界規模で地球環境保護をキーワードに、省エネ・低環境負荷に対する声が大きくなってきています。その中で、輸送機関の駆動用エネルギー源として、クリーンで高効率な水素エネルギーを利用する燃料電池の利用が注目されています。
 鉄道総研では、所内における各種検討結果を踏まえ、平成13年度から燃料電池を利用した鉄道車両の開発に着手しており、この度、実際の鉄道車両用台車を用いた駆動試験を行いました。

 今回の試験は、燃料電池プラント(写真1)にインバータ(電力変換装置)を介し、台車に搭載されているモータに、燃料電池で発電した電気を供給して駆動させるというものです。なお、台車はレールに相当する部分が回転する走行模擬試験装置(写真2、車両試験台)の上に試験設置させています(図1)。



 試験で用いた燃料電池本体(スタック)は、自動車等の用途として現在最も開発が進んでいるといわれる固体高分子型(PEFC:Polymer Electrolyte Fuel Cell)です。出力7.5kWのスタック4基を用いた燃料電池プラントは合計出力30kWの仕様となりますが、この出力では鉄道車両用としては小さく、今回の駆動試験における加速度は、実際の通勤電車が走行する条件と比べ、約1/3の性能となる1km/h/s(1秒あたり時速1キロで加速する)の条件で、時速50キロまで到達させるという設定を行いました。試験結果は図2に示すように良好な結果を確認することが出来ました。

 今回の試験が成功したことにより、鉄道車両用燃料電池システムの実現に、より一歩近づきました。しかし現状では燃料電池自体が大変高価であり、例えば非電化区間を走行するディーゼル車両の代替エネルギー源としてすぐに利用することはできませんが、燃料電池の技術開発はめざましく、今後、高性能かつ低価格化も大いに期待できます。一方、鉄道車両に適用する場合、自動車等と比べて重量や搭載スペースが有利であるものの、出力や寿命等の面で厳しい条件が課せられます。このため、鉄道総研では引き続き、鉄道車両に搭載可能な燃料電池システムの技術開発を積極的に進めていく予定です。
 なお、この技術開発の一部は、国土交通省からの補助金を受けて実施しました。



【参考】

供給された水素は、触媒により電子を放出して水素イオンとなります。
プロトン透過高分子膜はイオンだけを通す性質を有しているので、透過しない電子は外部回路(負荷側)に流れます。
水素イオンはプロトン透過高分子膜を空気側の極に至り、酸素と外部回路(負荷)側の電子と結合して水となります。
結果として、空気側の極から燃料側(水素側)に向かって電流が流れ、同時に水と熱が発生します。

プロトン(proton): 水素の原子核。電子の1836倍の質量と、電気素量に相当する陽電荷を持つ。スピンは1/2。素粒子の一つで、中性子と共に原子核の構成要素。 1032 年以上の寿命を持つとされ、陽子の安定性は物質の安定性の基礎である。 出典:広辞苑第5版










プレスリリースへ戻る

HOME
RTRI ホームページ

Copyright(c) 2004 Railway Technical Research Institute