新しい基礎構造「シートパイル基礎」を開発
耐震性と経済性に優れた基礎構造の実物大規模での公開実験を実施しました

平成16年10月28日
財団法人 鉄道総合技術研究所
株式会社 大 林 組

 (財)鉄道総合技術研究所(東京都国分寺市、理事長:副島廣海)と(株)大林組(東京本社:東京都港区、社長:向笠愼二)は、10月20日、両者が共同で開発を行っている「シートパイル基礎」の実物大規模での公開の載荷試験を、(株)大林組東京機械工場(埼玉県川越市)の敷地内で行いました。幅3.6m×奥行き3.6m、高さ6mの実物大規模の試験体(重さ90トン)を用い、地上6.5mの高さで水平に80トン(800キロニュートン)の荷重を加えるという、国内では前例のない規模の載荷試験を実施。見学会の参加者は、鉄道事業者7社,コンサルタント会社17社,国内研究機関など、88名にのぼり、この工法への関心の高さを示しました。試験の結果、直接基礎が最大荷重20トン(200キロニュートン)弱で大きく変形したのに対して,シートパイル基礎が最大荷重80トン(800キロニュートン)まで抵抗することが確認され,「シートパイル基礎は高い水平支持力特性を保有していること」が実証されました。
 通常、高架橋など構造物の基礎構造は、N値30以上の固い支持地盤で支持される必要があります。しかし、支持地盤が浅い地層にあれば、構造体の底面を直接支持地盤に接する直接基礎を用いることができますが、深ければ支持層まで杭等を打ち込む杭基礎、あるいはケーソン基礎とならざるを得ず工事費用が大きく上昇します。そこで、支持層が深い場合にも低コストで十分な耐震性を有する基礎構造の開発が求められていました。
 このたび開発した「シートパイル基礎」は、従来、土留め用に打設していた仮設のシートパイル(鋼矢板)を、そのまま基礎部分と連結して本設構造に活用することで、その構造物の水平抵抗力を増加させる工法です。打設したシートパイルがその内側にある地盤を拘束するとともに、シートパイルに接する周面の摩擦力が加わることで支持力が向上するため、従来支持地盤とみなされなかった硬さの地層でも、杭などを打設することなしに十分な耐震性を確保できます。支持層が深部にある地層の場合、従来の杭基礎やケーソン基礎を用いた工法と比べて、2〜3割程度のコストを削減することが可能です。
 「シートパイル基礎」は、現在までの種々の模型実験でその性能が証明されてきていましたが、今回の実物大規模の実験の成功でいよいよ実用化が可能となりました。  今回開発した基礎の特長は、以下のとおりです。

1.シートパイルを本設構造に活用し施工性,経済性を向上し,工期を短縮
仮設用土留めのシートパイル(鋼矢板)を残置し、フーチングと接合することで、仮設の構造を本設構造に利用します。仮設構造をそのまま活用するだけなので、施工性と経済性が向上し,工期短縮が図れます。
2.従来よりやわらかい地層でも耐震性を確保
打設したシートパイルの内側に閉合された地盤の拘束効果により、支持力が向上するため、従来は支持地盤とすることができなかった硬さの地盤でも十分な耐震性を確保することができます。基本的な適用地盤の範囲としては,関東ロームなどの洪積粘性土地盤,N値20以上の砂質地盤が考えられます。
3.掘削土砂を削減した環境にやさしい工法
耐震性が向上することで、基礎構造をコンパクトにすることができるので、大幅に掘削土量を低減し、環境負荷を抑えることができます。

 この「シートパイル基礎」は、狭隘な都市部での立体交差短期化事業などの分野で「コンパクトで耐震性に優れた基礎」として市場のニーズに応える工法です。 (財)鉄道総合技術研究所と(株)大林組が共同開発したこの工法を、今回の実験データを基に、今後、鉄道施設などへ積極的に提案していきます。

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以 上




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