架線・バッテリーによるハイブリッド電車の開発
―エネルギー回収効率を向上させた電力リサイクル車両―

平成17年 2月 2日
財団法人 鉄道総合技術研究所

 財団法人鉄道総合技術研究所では、地球環境に配慮した鉄道車両の実現に向けた開発を進めており、その開発過程における成果を応用し、高効率にエネルギーを回収・蓄積し、駆動用動力とするシステムを搭載した「架線レス・バッテリートラム」を、一昨年にご紹介させて頂いております。
 この度、本研究テーマにおける所期の目標に近づく研究の進展により、国内で初めて、車両に搭載したエネルギー蓄積装置により、回生ブレーキの失効を大幅に減らす電車の走行試験に成功しましたのでお知らせします。
 現在、一般的な電車のブレーキは、走行時の運動エネルギーを電気エネルギーに換え、架線に返す回生ブレーキが用いられています。しかし、自車の近くに他の電車が走行していない場合は、そのエネルギーが消費されず、回生ブレーキが効かなくなる回生失効が生じます。その場合には、車両は摩擦ブレーキを用いて停止するためエネルギーの回収ができず、さらには部品の消耗や劣化も生じてしまいます。
 今回のシステムは、「架線レス・バッテリートラム」で用いた高性能バッテリーと、架線・パンタグラフによるハイブリッド構成にしたことで、架線に返せない電気エネルギーを、バッテリーに蓄えることができます。また、この方式では、蓄えた電気エネルギーを再始動時に利用することができるため、架線から受け取る電気エネルギーがその分少なくてすみます。
 走行試験では、強制的に走行中にパンタグラフを上げ下げし、架線からのエネルギー授受ができない条件を設定するなどし、各種データを収集することで本システムの基本性能と、その有効性を確認することができました。また、今回の走行試験では、供試車両の都合上、直流750Vの条件でしたが、別途、実施した直流1500V(例えば都内のJR路線など)の定置試験において基本特性を確認しており、次年度以降に予定している、実車を用いた走行試験を残すのみとなっています。
 今回の試験の成功により、実際の回生失効の状況に合わせたバッテリーを搭載することで、回生失効を大幅に減らす電車の実現する見通しが得られました。また、電化、非電化路線のどちらにも対応できるトラム級車両の実現可能性も得られました。さらに今回の成果から、既存路線からの延伸路線を非電化とすることも可能となる、万能省エネ無公害電車としての利用が期待できます。





プレスリリースへ戻る

HOME
RTRI ホームページ

Copyright(c) 2005 Railway Technical Research Institute