燃料電池での電車の試験走行

平成18年 9月29日
財団法人 鉄道総合技術研究所

 財団法人鉄道総合技術研究所(以下、鉄道総研)は、燃料電池により発電した電気を用いて、初めて電車の試験走行を行いましたのでお知らせします。

 鉄道総研では、「環境と調和した鉄道」に関する研究開発に力を入れておりますが、そのひとつとして平成13年度から燃料電池を利用した鉄道車両の開発に着手しました(表1)。目的は気動車と置き換えて騒音、排ガスなどの問題を解消することや、電車に適用して電化設備を不要にすることです。技術開発のポイントは、大容量で変動負荷という鉄道車両用への燃料電池の適用可能性の検証と、燃料電池、高圧水素タンク、インバータを組み合わせたシステムの開発です。
 平成15年度には30kW級燃料電池を搭載した台車の駆動試験に成功しました。平成16年度から、100kW級の燃料電池システムの開発に着手し、今年度に燃料電池を試験車両に搭載し構内試験線での試験走行を行いました。

 今回の試験走行は、試験電車(写真1)に燃料電池システム(写真2)、高圧水素タンクシステム(写真3)及びインバータ等を搭載し燃料電池電源により試験電車を駆動しました。

 

 今回用いた燃料電池の諸元を表2に示します。

 燃料電池システムの鉄道車両への適用可能性について、実走行を通じて燃料電池出力特性や負荷追従性などの検証を行っています。図1に最大出力約90kW、最高速度40km/hでの走行結果を示します。

 現状では燃料電池のコスト、さらなる大容量化と小型・軽量化などの課題がありますが、今回の試験走行が成功したことにより、燃料電池システムの鉄道車両への適用の実現が近づいてきました。
 なお、この技術開発の一部は、国土交通省からの補助金を受けて実施しました。


【解説・参考図】

○水素エネルギーの特徴
 ・反応後も水しか発生しないクリーンなエネルギー
 ・エネルギー源と水があれば水素エネルギーとして貯蔵できる
 ・水素は最も軽い分子でありエネルギー密度が低いため、燃料として貯蔵するには高圧化などを行う必要がある
○試験電車や燃料電池システムの構成など

○燃料電池鉄道車両の例
  カナダで鉱山用機関車(出力17kW、機関車質量2.5t)の例がある。



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