イットリウム系高温超電導線材を用いた小型超電導磁石

財団法人鉄道総合技術研究所(以下、鉄道総研)は、イットリウム系高温超電導線材を用いた小型超電導磁石を完成させましたのでお知らせします。

鉄道総研では、近年性能向上が著しいイットリウム系高温超電導線材を浮上式鉄道用超電導磁石へ適用する検討を進めています。イットリウム系線材は従来のニオブチタン線材よりも高い温度で使用できるので、冷凍機のコストや重量、消費電力を低減できるメリットがあります。

設計検討により、超電導磁石を50K(ケルビン:絶対温度単位、50K=-223℃)程度で使用すると、このメリットが最も大きくなることがわかりました。そこで、イットリウム系線材を使用して高温超電導コイルを製作し、長時間保冷が可能な断熱容器に収納して、小型の超電導磁石を完成させました(図1)。

この超電導磁石は、コイル温度50Kにおいて1T(テスラ:磁場単位)以上の磁場を発生することができます(図2)。(参考:浮上式鉄道用超電導磁石で発生する磁場は約5T)

また、高温超電導コイルの周囲に配置した金属の熱容量を利用することと、断熱容器内部に設置した活性炭で容器内の真空度を保持する工夫により、コイル温度50K以下を9時間保持できる保冷能力(図3)があることを確認しました。この保冷能力によって、本超電導磁石は励磁電源と冷凍機を切り離した後も長時間に渡る磁場発生が可能となりました。これまで超電導につきものであった冷凍という重荷を切り離したことになります。これにより、従来の超電導磁石では考えられなかった、永久磁石のように持ち運びが自在で取り扱いが容易な、超電導磁石の新しい形態を実現しました。

本開発は国土交通省の国庫補助金を受けて実施しました。

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図1 小型超電導磁石
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図2 磁場性能
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図3 保冷能力

(関連研究)RE系線材を用いた高温超電導磁石の開発