「ななつ星in九州」に搭載した上下制振制御システムについて

公益財団法人鉄道総合技術研究所(以下、鉄道総研)は、日立オートモティブシステムズ株式会社(以下、日立オートモティブ)と共同で、空気ばね車両向けの上下制振制御システムを開発しました。九州旅客鉄道株式会社(以下、JR九州)が10月15日に運行を開始したクルーズトレイン「ななつ星in九州」(以下、「ななつ星」)は、全ての客車に本システムを搭載しています。

本システムと柔らかい空気ばねを採用した効果により、「ななつ星」の上下振動は既存車両に比べて大幅に低減され、快適な乗り心地を実現しています。空気ばねを使用した車両に上下制振制御システムを導入したのは、この車両が世界初の事例です。

「ななつ星」の開発にあたり、鉄道総研とJR九州は既存車両を用いた走行試験を事前に実施し、乗り心地向上のためには特に上下方向の振動低減が重要であることを確認しました。そこで、JR九州は「ななつ星」に、この上下振動を軽減するための対策として、上下制振制御システムを導入しました。

鉄道総研は、これまでも車両の乗り心地およびその向上方法に関して様々な研究開発を実施してきました。今回の上下制振制御システムは、鉄道総研が日立オートモティブと共同で開発したもので、車体を支えるばね(まくらばね)と並列に可変減衰機能を持つ上下方向の油圧ダンパーを取り付け、このダンパーの減衰力を加速度センサーで測定した車体の振動に合わせて制御し、振動を抑制します。上下制振制御システムは、JR九州の観光特急列車「指宿のたまて箱」で初めて実用化されましたが、これをさらに改良し制振効果を高めたものを「ななつ星」に搭載しています。なお、空気ばねを使用した車両に上下制振制御システムが搭載されるのは、世界でも初めての事例です。

本システムと柔らかい空気ばねを採用した効果により、「ななつ星」の上下方向の振動は、振動の強さを示す「振動加速度パワースペクトル密度(PSD)」のピーク値で既存車両の1/10程度となり、大幅に振動が低減されました。本システムは、「ななつ星」の全ての客車に搭載されており、快適な乗り心地の実現に貢献しています。

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写真1 クルーズトレイン「ななつ星in九州」
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図 上下制振制御システムの構成
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写真2 車両への取り付け状況