エアセクションにおけるトロリ線断線防止用複合架線

非常停止ボタンが押された場合など、列車はやむを得ず停車しなければならないことがあります。電源系統の異なる2本の電車線が平行に架設されたエアセクション(図1)と呼ばれる特殊箇所に電車が停車した場合、パンタグラフのすり板とトロリ線との間にアークが発生してトロリ線が断線することがあります(図2)。これを防ぐため、いくつかのハード対策が提案されてきましたが、高コストである、あるいはメンテナンスが困難であるなどの課題がありました。

そこで、直流区間のシンプル架線を対象に、エアセクションにおけるトロリ線断線防止用複合架線(AS複合架線)を開発しました。AS複合架線は、トロリ線上方50mmの位置に保護線を設け、両者を500mm間隔で取付金具により結合したシンプルな構造であり(図3)、通常の架線と同様に検測車によるトロリ線摩耗測定が可能です。これにより、低コストで省メンテナンスを実現しました。

AS複合架線では、停車した電車のパンタグラフすり板とトロリ線との間にアークが発生しても、アークの熱によりトロリ線が伸びて保護線に張力が移行することでトロリ線が降下し、アークを消弧するため、トロリ線断線を防ぐことができます(図4)。

参考文献

  1. 伊東和彦、和田祥吾、早坂高雅、宮口浩一、川原敬治、前田佳伸:エアセクションにおけるトロリ線断線対策用複合架線の開発、電気学会論文誌D(産業応用部門誌)、140巻、6号、pp.424-432、2020年6月(※)
  2. 近藤優一、和田祥吾、早坂高雅、伊東和彦:複合架線によるエアセクション箇所のトロリ線断線対策の提案、鉄道総研報告、Vol.34、No.9、pp.29-34、2020年9月

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