指・差・喚・呼

 安全とは人への危害または損傷の危険性が、許容可能なレベルに抑えられている状態を意味するようである。安全の維持に万能薬は無い。だが、ヒューマンエラー防止に大きな効果を発揮してきた方策がある。「出発・進行」「右よし、左よし」など信号の現示確認、線路の横断時などに使われている指差喚呼である。車両の検査を行うときに、メータの指示値、コックの開閉、スイッチの投入時など多くの確認に際して使っている。一連の動作がシンプルであることも特徴の一つである。

 出勤途中に工事現場での朝のミーティングを垣間見る時がある。円陣を組んで安全ヨシ!と指差喚呼のウォーミングアップをしている。業務の安全確保のため、鉄道の指差喚呼がルーツとなってゼロ災運動に導入されたと聞いている。家庭でも外出する際などに、ガス、電灯、窓の閉めの確認に使われていないだろうか。指差喚呼は、国民的なヒューマンエラー防止動作と言って過言ではない。

 指差喚呼は五感による物事の認識に、手による動作および口腔による発声を加えて事象の認知を多重化し、行動の安全のレベルを高めていると言われている。指が確認すべき対象物を正確に指していなかったり、発声があいまいであれば期待される効果は低下してしまう。指差喚呼は、視覚など五感と行動と発声が一体で効果が発揮されると推定されるが、科学的に確かめることが求められる。

 人間科学研究部には、指差喚呼を今一度分析し、鉄道業務のリスク評価の観点から定量的に評価してもらいたいと思う。ともすると慣習で行われてきた行動に意味付けをし、ヒューマンエラー低減の常備薬の一つとして、活用を広げていく大きな後押しになるのではと感じている。

 蛇足ながら、指差喚呼はどのような物に対しても適用できるものの、唯一、人に対しての指差しは避けたほうがよいかもしれない。

(鉄道総合技術研究所 理事 熊谷 則道)

はじめまして

はじめに

 4月からJR 東日本より出向し人間工学研究室でお世話になることになりました。私は、専門分野はと聞かれると、車両運動・台車設計などと答えているのですが、これ以外にも、ブレーキシステム、車体構体、車内設備、高速車両の先頭形状など、これまでさまざまな鉄道車両に関する技術開発に携わってきました。このような私が何故人間工学研究室へ来たのか?不思議に思われる読者の方も多いと思います。ところが、私がこれまで取り組んできたことを振り返ってみますと、さまざまな場面で人間工学と接する機会がありました。

人間工学との接点

 車体傾斜車両の開発に取り組んだことがありました。この時は、曲線通過時の乗り心地をどのようにすれば改善できるかといったことが重要な課題の1つでした(車体傾斜に限らず鉄道車両における永遠のテーマかも知れませんが)。この時、当研究室で曲線走行時の乗り心地評価指標や乗り物酔いの研究に取り組んでもらいました。また、通勤列車の曲線通過時の乗り心地を考えた場合、混雑した条件下でも従来の目安値が適用できるのかといった課題や、ブレーキシステム開発の際に、ブレーキ時の乗り心地をなるべく良くするためには減速度とジャークの組み合わせをどのようにすれば良いのかといった課題について研究してもらいました。このように、乗り心地やその評価に関する研究・開発には人間工学的なアプローチが不可欠だと考えます。
 一方、車内設備に関しては、直接お客さまと接する部分であることから、ユニバーサルデザインやバリアフリーをはじめとした快適性・利便性の向上について、常により優れたものが要求されます。この分野の開発については、今では人間工学が非常に重要な存在であることは読者の皆さまもご存知の通りだと思います。
 高速車両の先頭形状に取り組んだのはかなり昔のことですが、当時はとにかく空力性能を向上させることに力を注ぎました(当然、視認性や操作性なども考慮しますが)。今となっては、人間工学的な検討をもっと行っていれば、空力性能と運転席としての使い易さを兼ね備えた、完成度の高い開発ができたのではないかと考えています(この他にも事例がありますが割愛させていただきます)。

商品開発と人間工学

 前項で挙げたように、私が過去に取り組んできたことを振り返ってみても、人間工学との関わりは意外と多いことが解ります(皆さまも身の回りに心当たりがありませんか?)。ところで、鉄道のお客さまには、年齢、性別、心身機能、生活習慣などが異なる、実に多様な方がいらっしゃいます。このようにさまざまなお客さまが、安全で、安心して、便利で、快適にご利用していただくためには、人間を中心とした設計の導入が重要視されています。このことは、なにも鉄道車両に限ったことではなく、建物、機械、電化製品、家具、文房具といったハード的なものから、画像、標識、印刷物、案内放送、サービスといったソフト的なものまで、あらゆるものに当てはまることです。したがって、今後は商品開発と人間工学との結び付きがより強くなり、人間工学の重要性がさらに高くなるものと考えます。
 ところで余談ですが、最近読んだ本に生物の進化についての記述がありました。これによると、生物の進化とは、「世代を経るにつれて次第に変化し、元の種との差異を増大して多様な種を生じてゆくこと。その過程では体制は概して複雑化し、適応は高度化し、また種類が増す・・・」といったことが書かれていました。長い時間を掛けて快適な生活ができるように変化していく生物の進化と、われわれ現代人が快適性・利便性を追求していくことは全く異なることですが、何か共通するものを感じませんか?快適で便利なものを求めていくことは、生物が持つ普遍的な営みなのかも知れません。

おわりに

 前述のように人間工学と接する機会はあったのですが、学問については全くの素人でいろいろ勉強していかなければなりません。そして、人間工学とこれまでの知識・経験を融合?させて、鉄道をご利用していただくお客さまと鉄道関係者のお役に立てる研究・開発を行いたいと考えています。どうぞよろしくお願いいたします。

(人間工学 島宗 亮平)

ゆっくりエラー防止

信号の見間違い

 進行現示であることが多い信号は、無意識に、今回も進行現示だろうという思い込みを持ちやすいものです。これに太陽光の反射の加減で見にくいなどの条件が重なると、実際の現示ではなく思った通りのものを見てしまうという見間違いが生じます。

見間違い実験

 見間違いが発生する仕組みを説明するために、簡単な実験例を紹介しましょう。図1は、何パーセントに見えるでしょうか。手書きの見にくい数字であり、パーセントの丸が大きいので50%と見間違えそうになると思います。しかし、実際には見にくいだけでは見間違いの発生は、それほど多くありません。これに思い込みが加わると、信号の例で示したように急激に見間違い率が高まります。

50/。
図1 実験で用いた見間違いやすいパーセント数字

 実験課題は図1を含むパーセント数字を回答用紙に書き写すものです。このとき、図1以外の数字が35%、29%、13%のようにすべて2桁の数字だったとします。そうすると実験参加者は、「登場する数字は2桁の数字ばかりなんだ」という思い込みを無意識に持ってしまいます。
 実験に登場する10個の数字が、図1以外はすべて2桁のパーセント数字を書き写すグループ(思い込み条件グループ)と図1も含めてすべて1桁のパーセント数字を書き写すグループ(対照条件グループ)で、図1の数字の見間違い率を比較しました(図2)。どちらのグループも図1の数字は共通であり、すべての数字をできるだけ速く書き写してもらいました。このように、思い込みを持って、見にくいものを見ると90%近い人が見間違います。

急いで行った書き写し課題の見間違い率
図2 急いで行った書き写し課題の見間違い率

見間違い防止法

 無意識に頭に思い浮かぶものは脳内処理速度が速いので、無意識の誤った思い込みも素早く処理されます。これに対して意識的な処理は遅いので、ゆっくり時間をかけてみると簡単に見間違いであることに気づくようなものでも、短時間で確認しようとすると処理の速いもの(無意識の誤った思い込み)につられて、見たいものや見やすいものに見間違う可能性が高まります。しかし、逆に、ここに見間違い防止の重要なヒントがあります。
 図3は、図2の実験とは異なり、ゆっくり書き写してくださいという指示で実験を行った結果です。ゆっくりという指示以外は図2の実験とまったく同じです。急いで書き写してもらったときには、90%近くの人が間違っていた思い込み条件も、ゆっくり書き写すだけでほとんど間違えなくなります。

ゆっくり行った書き写し課題の見間違い率
図3 ゆっくり行った書き写し課題の見間違い率

 「確認はゆっくり行う」、これが見間違いを防ぐ方法です。逆に、急ぐほど見間違いの確率は高まります。指差喚呼にも、行動を一拍遅らせ見間違いを防ぐ効果があります。エラーはゆっくり防ぎましょう。

(安全心理 重森 雅嘉)

お年寄りはどんな揺れに弱いのか?

2007年、そして・・・

 2007年、団塊世代の定年退職がピークを迎えます。まだ先の話と高をくくっていたことがいよいよ現実となり、我が国は今後、労働力人口の減少、技術継承の断絶、社会保障関係費の増大などいくつかの課題に直面すると言われています。労働力人口について言えば、今後、定年の延長や再雇用制度の導入などが広まりますから、60歳を超えても働き続ける人は増えていくでしょう。労働力人口に占める60歳以上の割合は現在では15%ほどですが、2025年には20%に近づき、労働者の5人に1人が60歳以上という時代が来る、という試算もあります。当 然ながら、通勤列車の乗客にも高齢化が進みます。

お年寄りに事故は多いか?

 年をとると、気持ちではまだ若いつもりでも、肉体の老化は着実に進みます。そうしたことは公共交通の旅客傷害データにも確実に表れており、例えばバス車内事故の負傷者数をみると40歳代頃まではほぼ横ばいですが、50歳代から数が増え始め、65歳を超えるといっそう拍車がかかることがわかります(図4)。道路事情によって急ブレーキを避けることの出来ないバスに比べれば、鉄道では急ブレーキの頻度が少ない分、傷害事故の件数も少ないでしょう。しかしお年寄りの乗客で傷害事故のリスクが高まるという点では鉄道も同じことです。

バス車内事故の年代別発生件数
図4 バス車内事故の年代別発生件数
(国交省自動車交通局他「自動車運送事業に係る交通事故要因分析報告書」,2005)

お年寄りはどんな揺れに弱いのか?

 年をとると傷害事故のリスクはどのように高まるのでしょうか? 車両の揺れに対して立位バランスを保持する能力について、高齢者と非高齢者を比較した結果についてご紹介しましょう。
 その検討では、揺れに対して立位バランスを保持できない人の割合を、60歳定年を想定し、60歳未満の年齢層(20~59歳;非高齢群)とそれより上の年齢層(60~69歳;高齢群)で比較しました。揺れの種類は立ち上がりの急な揺れと立ち上がりの緩やかな揺れの2種類で、いずれも弱い揺れから強い揺れまで調べました。その結果、立ち上がりの急な揺れでは高齢群と非高齢群の間に明確な差は認められなかったのですが、立ち上がりの緩やかな揺れでは高齢群の方が明らかに立位バランス保持能力が低くなっていることが認められたのです(図5)。

揺れに対するバランス保持の年齢差
図5 揺れに対するバランス保持の年齢差
(●:高齢群、○:非高齢群)

 どうしてこのような相違が生じたのか、詳しい理由は今後筋電図などを用いて検証する必要がありますが、現時点で考えられることは、立ち上がりの急な揺れは人間の姿勢調節能力を超えているため、個々人のバランス保持能力の差は表れず、一方、立ち上がりの緩やかな揺れは人間の姿勢調節能力の範囲内にあるため、個々人のバランス保持能力の差が如実に表れたという可能性です。
 なお、この検討では足を1歩踏み出すか否かといった比較的緩やかな事態を問題にしたのですが、床に倒れてしまうような場合の対処能力(手をつけるかなど)や、転んでしまった場合の被害(骨折しやすさなど)についてはまた別の検討が必要です。

おわりに

 年をとると揺れに対するバランス保持能力が低下する…このこと自体は致し方のないことです。でも、吊り手や手すりなどの車内設備があれば揺れに対するバランス保持能力が飛躍的に向上することも、また別の調査で確認されています。立ち上がりの緩やかな揺れは曲線区間などで生じ、どこで起こるかはわかっているわけですから、車内放送などで注意を喚起するなどすれば、お年寄りにも十分な安全性を確保できるようになると考えています。

(人間工学 大野 央人)

大地震に遭遇した後に駅に行きますか

 突然ですが、あなたは外出先で大規模地震に遭遇したら、とりあえず、または、はっきりとした目的を持って、鉄道の駅に行くと思いますか。

自宅に帰れずに滞留する人の数

 平成18年の3月に大規模地震発生後の帰宅困難者の行動のシミュレーション結果(首都圏のターミナル駅で滞留する帰宅困難者の数など)が公表され、新聞をはじめ様々なメディアで大変な話題になりました。お忘れになった方も多いと思いますので、そのときの結果の一部を4 月3日付けの日本経済新聞の記事から引用させていただきます。

表1 主要ターミナル駅の帰宅困難者の予想数
主要ターミナル駅の帰宅困難者の予想数
(出典:2007年4月3日付け日本経済新聞)

 これは東京都防災会議地震部会が発表した「首都直下地震による東京の被害想定報告書」に記されたデータです。交通行動に関する定期的な大規模調査のデータとインターネット上で実施された調査のデータなどをもとに、帰宅困難者数を試算しています。計算方法の詳細は、報告書の記述を参照していただくことにしますが、インターネット調査の結果から、帰宅距離に応じた帰宅困難割合を求め、それを、特定の時間帯に特定の場所にいる人の数に掛けることで上記の人数を導き出しています。この調査のように、大規模地震に遭遇した人の動き(徒歩で帰宅するか、その場に留まるかなど)を質問紙による調査で調べた例は少なくありません。実は、私たちの研究グループでも、よく似た調査を実施しています。その調査の結果は、別の機会にご紹介させていただきます。

駅に行こうと思う状況と理由

 さて、ここで冒頭の質問に戻ります。あなたは、大規模地震に遭遇した後に駅に行くでしょうか。
 様々な状況を想定してよく考えていただきたいと思います。遭遇した時間帯、発災からの経過時間、遭遇した場所、遭遇時の同伴者、自分自身の被害状況、天候、季節などによって全く異なる行動を取るのではないでしょうか。
 また、あなたが駅に行くとしたら、何をするために駅に行くのでしょうか。
 例えば、地震に遭遇した場所が行き慣れていない場所であり、安全を確保できる場所やその場所から自宅までの距離や方角に関する情報をほとんど持っていないとすれば、地理的な情報を得るために駅に行くかもしれません。発災から時間が経過すれば、電車の運行状況や運転再開見込み時間を確認に行くという人もいるでしょう。雨の日の地震ならば、鉄道の利用者であるかどうかに関係なく、冷たい雨から身を守る場所として駅に行く人も少なくないでしょう。もしかすると、一時的な食料を調達するために駅の売店を活用しようと考える人もいるかもしれません。

おわりに

 大規模地震の後に人々が駅に行く理由は、状況に応じて様々です。その理由、つまり、人々が駅に望むことの中には、現段階では鉄道事業者として対応不可能なものもあるでしょう。鉄道は公共交通機関と呼ばれるがゆえに、「公共」の対応が望まれることは想像に難くありません。適切な対応方法や事前の対策を考えるためには、人々の行動を予測するための材料が必要です。
 現在、主に地震に遭遇した時間帯の違いによる人々の行動の違い、地震遭遇後に人々が鉄道駅に望むことなどに着目して調査を進めています。鉄道事業者が事前に取り得る対策や、まさに事態に直面したときの対応などの検討に活用していただけるような情報をご提供したいと考えています。

(人間工学 藤浪 浩平)

異常時!? まずは脳をだませ!

1.はじめに

 異常時に使用するチェックリストは、異常時に行うべき行動が順を追って書かれていますが、一番初めに「1.深呼吸する」と書いてあるものをかつて見かけたことがあります。その場には、いくつかの種類のチェックリストがありましたが、そのいずれも、一番初めにすることは「深呼吸する」でした。
 「深呼吸する」は、「緊張したときに『人』と手のひらに書いて、それを飲み込む」のようなおまじないレベルなのでしょうか。それとも、真っ先に明記してある以上、なにがしかの効果が期待できるものなのでしょうか。それについて考えてみたいと思います。

2.異常時とは?

 広辞苑によると、異常は「通常とは違っていること。並外れたところのある様」なので、異常時は「通常とは異なっている時、並外れたところのある様がある時」というような意味になります。ところで、人間は、状況や場面が「異常だ」と思うと、「どうしよう、自分に対処できるか不安だな」などと感じはじめ、それによって、ハラハラドキドキなどといった状態が引き起こされます。逆に言えば、客観的に は異常でも、その場面にいる人がそう思わなければ、そういう状態は喚起されません。例えば、火事は、客観的には異常時で、一般の人間からすれば、ハラハラドキドキという状態が喚起されます。しかし、消防士から見れば、必ずしもハラハラドキドキするようなものではないでしょう。
 さて、異常と思って、ハラハラドキドキの状態となると、そちらばかりに注意が向いてしまい、他のことがうまくできなくなります。異常時に、普段できることもできない、覚えていることも思い出せないという不都合はこのために生じます。このような状態は、訓練(場面対処への慣れ)によって抑えることができます。しかし、異常時の訓練、特に実訓練は、何回もできるものではありません。

3.深呼吸の効能

 深呼吸には、腹式と胸式があるそうですが、かつてNHK総合テレビの「ためしてガッテン」という番組では、腹式呼吸の様々な効能をとりあげ、その検証を行うという回がありました。冷えや睡眠、ダイエットなどの効果の他、「腹式呼吸が脳に与える影響について」と、脳と呼吸との関係が検証されていました。
 被験者に、2 分後に電気ショックがあるとの予告を行い、不安状態とさせた後に、呼吸をゆっくり行うように指示を与え、被験者にそのようにしてもらうと、不安状態が緩和されたというものでした。そのカラクリは、つぎのようなものでした。

  • 不安やストレス状態になると、脳の「扁桃体」という部分の活動が活発になる
  • 「扁桃体」が活発になると、「視床下部」という自律神経を司る部分が反応し、緊急反応や興奮作用をもたらす交感神経が活発化する
  • 呼吸を整えることで、扁桃体の活動が落ち着く
  • 扁桃体の活動が落ち着くと、視床下部が副交感神経を活発化させるように働く
  • 不安状態が緩和される

 つまり、わざと呼吸を落ち着かせると、その情報をもとに、脳が「呼吸が落ち着いたから、不安な状態は去った」と勘違いし、もう交感神経系を働かせる必要がなくなったとして、副交感神経系を活発化させるということでした。

4.おわりに

 例えば、緊急停止手配のように、1 分1 秒を争う場面で、「まず、ゆっくり深呼吸」ということは、非現実的ですが、異常時といっても時間的な余裕があるもの、即時の手配が終わったあと、それに引き続く処置の実施に際しては、深呼吸をして脳を「だまして」からの方が、ハラハラドキドキの状態に注意が向くということが緩和され、円滑な処置ができると期待できるわけです。異常時チェックリストの一番初めに書いてある、「深呼吸する」というのは、おまじないレベルではなく、それなりに意味のあることだったわけです。他の手順と同様に、抜かさないで実施しましょう。
 なお、本記事の作成にあたっては、日本放送協会WEB サイト中の「ためしてガッテン:呼吸法!ホントの健康パワー」(http://www3.nhk.or.jp/gatten/archive/2005q4/2005116p.html)を参考としました。

(安全心理 赤塚 肇)