新しい年度を迎えて

 財団法人鉄道総合技術研究所は、この4月から「公益財団法人鉄道総合技術研究所」として新たなスタートを切りました。また、人間科学研究部は、新たに生物工学研究室を加えて4研究室、総勢35名の体制となりました。
 生物工学は旧鉄道労働科学研究所の流れを汲み、かつては人間科学(労働科学)に属していました。その後、微生物による環境浄化テーマなどの比重が高まり、人間科学から離れましたが、最近では、人体への環境影響評価研究に回帰してきたことから、再び人間科学に属することになりました。すでに、駅や車内の空気・におい環境の評価に関わるテーマなどで、人間工学との共同研究を進めています。
 人間科学研究部を構成する各研究室の今年度の具体的な取組みは、次ページ以降で紹介しますが、以下、簡単に各研究室の特徴を紹介します。

安全心理研究室

 従業員のヒューマンエラーに起因する事故防止対策が主なテーマで、運転適性検査や安全を体感できる教育プログラムの開発などに取り組んでいます。

人間工学研究室

 主に、旅客の安全性評価、車内環境の快適性(乗り心地、騒音など)の評価、鉄道施設・設備のユーザビリティ評価などの研究を進めています。

安全性解析研究室

 ヒューマンファクターも含めた鉄道システム全体の安全性評価や安全管理に関わる研究を担当しています。

生物工学研究室

 化学分析や生物試験の技術を活かして、電磁界の生物影響評価や鉄道環境の衛生評価などに取り組みます。

 私たち人間科学研究部では、鉄道システムの一層の安全性と快適性の向上を目指す研究開発に取り組む所存ですので、引き続き変わらぬご理解とご支援のほど、よろしくお願い申し上げます。

(人間科学研究部長 鈴木 浩明)

平成23年度の活動計画

 私たちのグループは、ヒューマンエラー事故の防止を目指して、運転関係従事員の心理的な資質や職務能力、これらに影響するさまざまな条件などを明らかにし、適性検査や作業環境整備、教育・訓練などに役立てるための研究を行っています。

○安全関連情報の効果的な提供手法○

 昨年度始めたテーマで、本年度終了予定です。昨年度は、実験室における実験や運転現場における事故等の情報提供の実態調査により、点呼、掲示、訓練における情報提供の問題を明らかにしました。例えば、状況をイメージしにくい、背景要因がないと自分に置き換えて考えにくい等です。
 本年度はこの結果を踏まえ、情報の発信者と受信者の双方の工夫による安全関連情報の効果的な提供手法を提案します。

○心理検査を活用した安全指導手法○

 昨年度始めたテーマで、来年度終了予定です。
 昨年度は、見習い時の指導運転士と運転士のペアを対象に調査を行い、運転適性検査から推測される23の心理特性項目について、運転士本人の自己評価、寝食を共にしながら数ヵ月の指導をした指導運転士による他者評価、検査結果との関係を調べました。その結果、心理特性の項目により、3者の一致の度合いが異なることが分かりました。
 本年度は、上記結果を参考とした安全指導の仕方を検討します。そして、上期には検査を活用した安全指導手法の試案を作成し、下期からは現場で実践していただきながら検討を深めていく予定です。

○作業性検査の新しい客観判定手法の開発○

 本年度から2年間の予定で実施する新テーマです。
 運転適性検査の主要検査である作業性検査は、検査員が直観判定によって判定を行います。直観判定は技能が低下したり、判定基準がずれてしまったりする可能性があり、それを補うためにプログラムを用いた客観判定手法が利用されています。
 本テーマでは、直観判定により合致するよう客観判定手法を改良し、新しい手法を開発します。本年度は客観判定の枠組みを検討し、素案を作成する予定です。

○運転支援システムの基盤技術の開発○

 本年度から3年間の予定で実施する新テーマです。平成22年度から始まった「鉄道の将来に向けた研究開発」に分類され、「知能列車による安全性・信頼性向上」に属するテーマの1つです。
 知能列車とは、「車両が持つ、あるいは外部に設置されたセンサ等の情報により、危険な状態を車両自体が検知し、事故を回避するため最適制御を行う」ものです(図参照)。有人運転により160km/hで走行する在来線特急をイメージしています。


  • 図 知能列車の全体イメージ

 本テーマでは、知能列車が行う検知や制御の情報を運転士に適切に提示する運転士支援 システムの基盤技術を開発します。また、運転士の異常を検知する運転士モニター技術、画像処理技術を用いた列車前方監視モニター装置について、人間工学研 究室や信号通信技術研究部の信号研究室と協力して取り組みます。本年度は、運転士と機械(人工知能)の役割分担モデルをまとめます。

○コンサルティング・受託活動○

 昨年度、指差喚呼のエラー防止効果をパソコンで体感し、学習することのできるソフトウェアを開発しました。試作版の段階ですが、講師用のパソコンとプロジェクタ、各受講者のパソコンが揃う環境であれば、ソフトウェアの貸し出しおよび講師の指導を請け負います。ソフトウェアで体感できる課題は5つあり、1つの課題を実施し、解説を行うのに必要な時間は約30分です。
 また、事故のグループ懇談マニュアルの販売や現場導入の際の支援なども引き続き行います。
 現行の適性検査に関しては、適性検査員講習会の講師、検査冊子の販売、検査処理プログラムの販売など、コンサルティングや受託に取り組みます。

(安全心理 井上 貴文)

平成23年度の活動計画

 人間工学グループでは、安全輸送を目的とした運転支援に関する研究、事故時の被害軽減対策や輸送障害時の対応に関する研究、快適な車両を目指した旅客が感じる快・不快の評価の研究等を行います。その他、鉄道事業者や利用者のニーズに応じて多様なテーマに取り組んでまいります。以下、主な研究について概要を紹介します。

運転支援

(1)異常時能力対応プログラム

 いつもと違った状況に陥った場合、心理的に不安定になり、ヒューマンエラーを起こし易くなることがあります。運転士がこうした状況下でも、適切な行動がとれるように、シミュレータ訓練の場で、こうした状況を疑似体験することで対応能力の向上を図るプログラムの実用化を目指します。

(2)運転支援システム

 人間と機械の役割分担モデルに基づいて、安全・効率・やりがいを調和させた最適なシステムとなるよう、運転士の作業を支援するシステムの基盤技術を考えています。まず、その1つとして運転士の心身、運転操縦などの異常を示すパラメータの調査を行い、運転の状態をモニターする技術要素について検討します。

(3)運転台等設計支援用の姿勢テンプレート

 設計担当者が、より安全で快適な運転台あるいは車内設備を設計するための姿勢テンプレートを開発します。姿勢テンプレートとは、運転姿勢など典型的な姿勢を実態に即して表現する図面上の人型のことで、手の到達範囲などの必要な空間情報を確認できるツールです。まず典型姿勢を抽出し、その姿勢の基準点や代表点を決定することから取り組みます。

事故時・輸送障害時の対応

(4)列車事故時の乗客挙動シミュレーション

災害や事故で車両への衝撃があった際の被害軽減を目的として、衝撃に対する乗客・乗務員の身体の動きをコンピュータシミュレーションにより推定し、被害発生のポイントを探り、安全対策を検討します。今年度は、シミュレーションで用いる鉄道独自の人体数値モデルの開発に取り組みます。

(5)輸送障害時のサービスリカバリー

旅客が期待するサービスを事業者が提供できない事態の事業者の対処の仕方、特に旅客への案内方法を検討します。そこで、まず旅客調査を行い、「事業者の対処策がどのように評価されるのか」を説明できる旅客の評価構造モデルを構築するところから考えて、案内方法の提案を目指します。

車内快適性の向上

(6)人の感覚特性に基づく車内快適性

車内の快適性を考える上で車両の振動は重要な要因であり、車両、軌道、走行速度等の条件によって様々な振動が生じます。また、走行音に加えて空調音やがたつき音等の多様な車内の音も重要な要因です。これらの振動や音の快適性への影響は、その大きさ、強さだけでなく、その質的な違いにも配慮する必要があります。そこで人の感じ方から振動と音の快適性への影響を適切に評価できる指標の開発を目指します。
また、曲線が多い日本特有の事情から走行速度を上げていく場合に乗り物酔いを起こす心配があります。事前にこのような不快事象を避けることもこの研究の目的です。そこで乗り物酔いの評価方法についても検討します。

(7)車内温熱環境快適性指標の開発

通勤列車における快適な空間づくりの方向性を探るため、車内温熱環境の快適性指標の提案を目指します。このため主に夏期や端境期を対象として車内温熱環境の実態を調査します。また人の温熱感覚に影響する要因についても調査します。

人間工学分野のニーズの対応

鉄道に関連した依頼に応じて、随時人間工学的な試験、調査を実施してまいります。これまでの例では、視覚障害者用ブロック敷設方法に関する調査・試験、鉄道信号の視認性評価試験、駅環境調査などがあります。今後も積極的に人間工学分野のニーズに対応していきたいと考えています。

(人間工学 小美濃 幸司)

平成23年度の活動計画

安全性解析グループでは、現状の作業や職場管理の改善点を的確に把握するための手法、把握した結果をマネジメントに繋げるための支援手法の開発研究に取り組んでいます。平成23年度はリスク管理手法に関連する研究や安全活動の支援に取り組みます。

リスクの社会的認知のモデル化

システムのリスクマネジメントには受け入れ社会の実態をふまえることも必要と考え、社会一般のリスク認知の把握を目指しています。具体的には、一般社会が考えるリスク対象(危険内容)の質的分析、リスクが過大評価されてしまう事故原因や社会特性がないか、実際に社会調査・分析を行っています。これにより、リスク評価やリスク管理の際に考慮すべき条件を洗い出し、リスクマネジメントの意思決定を支援したいと考えています。

エラーのリスク管理手法

これまでに、運転と保守作業を対象に、ヒューマンエラーのリスク管理手法を開発してきました。この手法は、ヒューマンエラーの「発生し易さ」と「最大の事故」との組み合わせで評価するリスク値に誘発要因の「影響度」を加味することで、対策の優先順位付けを行うものです。このエラーリスク管理手法を運行管理業務に適用し、関連システム等による作業条件等の違いを反映したエラー管理手法の拡張を検討しています。

踏切の安全性評価手法

従来、設備・道路状況から踏切の安全性を評価する手法を提案してきました。今年度からは、積雪・寒冷地といった特異的な条件を反映した手法の開発に取り組み始めます。

事故のヒューマンファクタ分析手法

事故対策として関係者だけに注意喚起や指導徹底がなされるといった対症療法的処置では、問題の発生に関係している他の関係者の要因や無理な要求が是正されないままになる可能性があります。また、作業やシステムを改善するのも人間であるため、関係者に「なぜその対策が必要なのか」を納得させることができなくては、組織全体のモチベーションを低下させることに繋がり、それが新たな事故原因ともなりかねません。これらを解決するために、「鉄道総研式ヒューマンファクタ分析手法」を開発し、鉄道事業者・関連会社への指導を行ってきましたが、今年度は分析を効率よく行うために、関係者に対する聞き取り調査のあり方を検討します。

コンサルティング・受託による安全活動の支援

事故のヒューマンファクタ分析の講演・演習研修

「鉄道総研式ヒューマンファクタ分析手法」について、事例演習なども交えた研修の講師派遣を行っています。鉄道総研が主催の鉄道技術講座の他、各社の個別の要望に対応しています。研修受講者は、事故担当者、指導者、職場管理者、若手リーダーなど様々な担当や階層レベルに対応しています。

  • 表 ヒューマンファクタ分析法の研修スケジュールの例

職場の安全風土評価法の調査・分析、講演

組織や職場の仕組みや状況に対するメンバーの認識の程度は個人のやる気に大きく影響します。安全風土の評価は、トラブルが顕在しなくても積極的に取り組むことが可能であり、積極的な未然防止活動として有効です。そこで、評価方法の提案と調査データの分析、結果をふまえた改善ポイントの提案や各職場に対する診断コメントの作成等を行っています。また、安全風土の醸成の重要性や過去の調査研究から得られた改善のポイント等についての研修や講演への講師派遣も行っています。

(安全性解析 宮地 由芽子)

平成23年度の活動計画

生物工学グループは、本年4月より人間科学研究部に編入されました。これまでは、鉄道環境中の安全性、快適性に関与する因子の研究を行ってきた研究室です。主な研究テーマは、鉄道電磁界の安全性評価、旅客の快適性に関与する臭気物質の分析と低減策、環境中の微生物の検出・評価です。今後は、化学分析や生物試験の技術を生かしながら人間科学グループの一員として新しいテーマを開拓していきたいと考えています。事業者の皆様のご意見やご要望をお聞かせください。以下、現在の主な研究の概要と今年度の計画を紹介します。

◎電磁界の安全性評価

現代社会では、電気の使用に伴い電磁界の発生を避けることができません。電気鉄道も電磁界と無縁ではないため、鉄道で発生する電磁界が人体に影響を及ぼす可能性があるかどうかを実験によって調べてきました。
 まず初めに静磁界(永久磁石のように強度が変動しない磁界)の遺伝子に対する影響を調べました。その結果、地磁気よりも10万倍も強い静磁界に72時間連続して曝すよりも、1秒間に浴びる太陽光線中の紫外線の影響の方が大きいことがわかりました。

次に、変動磁界(交流電気の周波数により時間的に変動する磁界)についても、実験を行いました。鉄道では、使用される機器によって商用周波数磁界(50Hz)、鉄道用モーターやインバーターが発する中間周波数帯磁界(数百Hz~数十KHz)など様々な変動磁界が発生するため、周波数成分毎に検討する必要があります。また、様々な周波数の磁界が重なり合った場合の相乗効果も検討対象としました。

これまでに、商用周波数を中心に、中間周波数帯の磁界も含めて実験を行ってきましたが、人体に影響することを示す証拠は得られていません。今年度は、中間周波数帯磁界が、細胞の増え方や機能分化に対して影響を与えるかどうかを、培養細胞を使って調べる予定です。この研究は厚生労働省の科学研究課題として、大学・公的機関と共同で、あと2年間実施する計画となっています。

電磁界に対する不適切な不安を取り除き、電気鉄道が安全・安心な公共機関であることを示していきたいと考えています。

◎駅や車両の「におい」の研究

人間が快適と感じるか、不快と感じるかはさまざまな因子が関与しています。駅や車両では、これまで振動・音・温度などが注目されていましたが、私たちは駅や車両の「におい」に興味を持ちました。「におい」は人間の感覚の中でも研究が遅れている分野ですが、これまでに「におい」の本体である物質の分析方法や、「におい」を表現する記述語の検討など行ってきました。今年度からの3年間では、これらを土台として、駅や車両内の「におい」を構成する物質を調べ、それらの物質が発生する機構を明らかにしたいと考えています。今年度は特徴的な「におい」が感じられる場所において、「におい物質」の採取・分析を行うとともに、その発生源であると考えられる浮遊微生物の調査を中心に作業を進める計画です。

不快な「におい」の発生理由を明らかにすることで、合理的な対策を目指します。

◎空気中に漂う微生物の監視技術

空気中には、微生物や花粉などの健康にも関わるいろいろな生物粒子が漂っています。こうした生物粒子を監視し、必要があれば空調と連動することで、空気質の向上に貢献できないかと考え、微生物の検知方法について検討を始めました。

空中の浮遊粒子量を計る技術はすでに存在しますので、全浮遊粒子中にどれくらいの生物粒子が含まれているか、そして、それがどのような生物なのかを知ることが課題になります。まず、生物粒子を壊さずに捕獲する方法を検討し、湿式トラップという方法を用いることにしました。この方法は、トラップ液を培養することで、微生物の数と種類を知ることができるためです。しかし、より早く情報を得るために、DNAを利用したいと考えています。今年度は、捕獲した微生物からDNAを取り出す方法と、DNA情報から生物種を判定する方法を検討する計画です。これにより、微生物検知を行うために必要な要素技術をそろえることを目標としています。

(生物工学 早川 敏雄)

メカニズムから見た指差喚呼

鉄道では古くからヒューマンエラー防止のために指差喚呼が行われています。これは、現在では、鉄道に限らず、さまざまな職種でも用いられています。

しかし、指差喚呼のエラー防止メカニズムが明らかにされていなかったために、科学的根拠に基づいたやり方が示されていませんでした。そこで、今回は最近私たちが明らかにした指差喚呼のエラー防止メカニズムに基づいたやり方を紹介します。

指差喚呼のエラー防止メカニズム

従来から言われている5つの指差喚呼のエラー防止メカニズムを実験で検証しました(図1)。

(1)指を差すことにより視線が対象に集中する。
(2)指を差すことにより行動が遅くなる(十分に意識を向けられる)。
(3)声を出すことにより行動が記憶に残る。
(4)声を出すことにより行動の前にエラーに気づいて修正できる。
(5)指を差し、声を出すことにより、ぼんやりすることを防げる(覚せい維持)。

最初の2つは指差、次の2つは喚呼、最後は指差と喚呼の筋運動によるエラー防止効果です。


図1 指差喚呼の5つのエラー防止メカニズム

心理メカニズムからみた正しい指差喚呼
(1)確認対象を指差し、その方向に視線を向ける。
(2)指差により一拍置くつもりでゆっくり確認する。
(3)適度な加減で指、腕を伸ばす(力を入れすぎる必要はない)。
(4)確認内容ややるべきことを声に出す。
(5)適度な大きさで声を出す(大声の必要はない)。
(6)眠気を感じたら、力を入れて指、腕を伸ばし、大きな声で喚呼する。
 特に、見間違いを防ぐには、指差しは大変有効です。並列する信号や時刻表など複雑なものは、しっかり指差して確認するようにしましょう。
 また、たびたび経験する事柄は、あまり考えなくても反射的に体が動くようになります。こうなると、いつもと違う状況に遭遇した時に、体が衝動的にいつもの行動を起こしてしまいます。一拍置くつもりで指差を行うことにより行動を遅らせれば、意識的に正しい行動をとることができます。さらにやるべきことを喚呼することにより間違った行動を起こす前にエラーに気づき修正することができます。
 信号確認やスイッチ確認などを声に出して確認すると、後で確認したかどうか分からなくなってしまうことを防げます。これは家を出る時の鍵かけや薬の飲み忘れ防止など日常生活でも使えます。
 指差も喚呼も、力を入れすぎたり、必要以上に大声を張り上げたりする必要はありません。極端な指差喚呼は疲労を引き起こし、それがエラーを誘発する場合もあります。もちろん、ぼんやりしてきたり、眠気を感じたりしたときには、腕や指に力を入れて伸ばしたり、大きな声で喚呼したりすれば眠気防止になります。

スマートな指差喚呼
 指差喚呼は、ヒューマンエラーを防止するのに効果があるだけではなく、みなさんがヒューマンエラー防止に努めていることを周囲に知らしめる効果もあります。つまり、見せる事故防止ということです。
 指差喚呼をしている姿を見られるのが恥ずかしいという意見もたまに聞きます。しかし、電車内やホームの人たちは、運転士や車掌、駅員が、指差喚呼をしている姿を見て安心感を覚え、頼もしくすら感じます。鉄道マンの象徴として指差喚呼をしている姿に憧れる子どももいます。
 形だけではダメだとも言われますが、まずは形から整えていくことも重要です。正しい指差喚呼ポイントを踏まえた上で、自分なりに格好よくスマートな指差喚呼を目指してください。

(安全心理 重森 雅嘉)