施設研究ニュース

2019年4月号

発泡ゴム製弾性まくらぎの道床沈下低減効果の予測

1.はじめに

 有道床弾性まくらぎの底面材(以下,USP=Under Sleeper Pad)に,発泡ゴム製USPを用いた弾性まくらぎ(以下,USPまくらぎ)を導入する動きがみられますが,導入に際しては,対象となる現場において道床沈下の低減効果が表れるかどうか,事前に予測・評価をすることが求められます.従来は,まくらぎ支持ばね係数に着目した評価が主流でしたが,発泡ゴム製USPは合成ゴム製USPに比較して低弾性かつ高減衰という特徴を有しているため,これらの点を反映した評価が必要です.
 そこで本研究では,USPの物性を考慮した車両走行シミュレーションを行い,その結果から得られるまくらぎ下面荷重とともに道床振動加速度にも着目し,道床沈下の低減効果を予測しました.

2.車両走行シミュレーション

2.1 解析条件

 解析条件は表1に示す通りで,車両条件とレール条件は各1ケース,車両走行速度は2ケース,路盤剛性は3ケース,USP条件はUSP無とUSP有で損失係数3ケースの合計4ケースとしました.
 USPの物性は,ばね係数の公称値は8MN/m(100mm×100mm)ですが,凹凸のある道床バラスト層との接触面を考慮1) し,ここでは公称値より軟らかい6MN/mとしました.またUSPの損失係数は,実験結果を参考とし0.2,0.25,0.31) の3ケースとしました.
 まくらぎの質量は172kg,底面積は0.48m2としました.
 車両走行シミュレーションには,図1に示す車両/軌道動的応答モデル2) を用いました.

表1 解析条件
表1 解析条件
図1 車両/軌道動的応答モデル
図1 車両/軌道動的応答モデル

2.2 解析結果

 図2に解析結果より,まくらぎ下面荷重波形の例として,路盤剛性150MN/m3,走行速度115km/h の条件におけるUSP有(損失係数0.25)とUSP無の結果を示します.図の2つのピークは,前軸と後軸が通過した際の荷重で,そのピーク値はUSP無で19.5kN,USP有で18.6kNで,USP有の方が約3%減少しています.
 また図3に解析結果より,道床振動加速度波形の例として,図2と同条件におけるUSP有(損失係数0.25)とUSP無の結果を示します.図より,道床振動加速度のピーク値(下向き)はUSP無で2.45m/s2,USP有で2.16 m/s2で,USP有の方が約12%減少しています.
 ここで,表1に示す各条件におけるまくらぎ下面荷重と道床振動加速度のピーク値を表2にまとめます.表より,まくらぎ下面荷重のピーク値はUSP有の損失係数3ケースで同じ値となっているのに対して,道床振動加速度のピーク値は,損失係数が大きいほど減少する傾向が見られます.

図2 まくらぎ下面荷重波形
図2 まくらぎ下面荷重波形
図3 道床振動加速度波形
図3 道床振動加速度波形

3.道床沈下式を用いた沈下進みの予測

 道床沈下量の定量的な推定式として,鉄道総研では式(1)を提案しています3)
βby=a・(Pt-b)2・ÿ・・・・・・・・・・・・・・ (1)3)
 ここで,βbyは道床沈下量(mm/軸),Ptはまくらぎ下面荷重で,ÿは道床振動加速度係数(標準条件に対する比),a,bは係数を示します.
 この式(1)に,表2に示す各条件におけるまくらぎ下面荷重と道床振動加速度の値を代入してβbyの値を求め,USP無の場合のβbyの値に対するUSP有各条件のβbyの割合を算出した結果を,図4に示します.
 図より,USP無に対するUSP有の場合のβbyの割合は,90km/h走行を想定した場合(図(a))83~86%程度となり,115km/h走行を想定した場合(図(b))78~86%程度となります.いずれの条件でも,路盤剛性が高いほど,また損失係数が大きいほど割合が小さくなる傾向を示しますが,走行速度が速い方が,その傾向はより顕著となります.

表2 各解析結果のピーク値
表2 各解析結果のピーク値
図4 推定道床沈下進みβbyの割合
図4 推定道床沈下進みβbyの割合

4.まとめ

 USPまくらぎの道床沈下の低減効果を評価するために,シンプルな車両走行シミュレーションを行い,まくらぎ下面荷重,道床振動加速度,道床沈下量の低減割合を解析的に検証した結果,今回の解析条件では,USPまくらぎの導入により,道床沈下が78%~86%に低減する結果が得られました.これらの結果は,USPまくらぎの試験敷設区間における道床沈下量の追跡測定結果4)と,ほぼ一致した傾向を示しています.

参考文献

1) 河野昭子,鈴木実,浦川文寛:加振周波数に着目したまくらぎ底面 粘弾性材の道床振動抑制効果,鉄道総研報告,Vol.32,No.6,2018
2) 石田誠,鈴木貴洋:軌道動的応答モデルを用いた軌道沈下予測モデル,第10回鉄道技術連合シンポジウム(J-Rail2003)講演論文集,pp177-180,2003
3) 内田雅夫ほか:軌道狂い進みに着目した有道床軌道の新しい設計法,鉄道総研報告,Vol.9,No.4, pp37-42,1995
4) 栗原巧,神津大輔,久保崇紀:TC型有道床弾性まくらぎの営業線条件化における性能と沈下特性,第25回鉄道技術連合シンポジウム講演論文集(J-Rail2018),2018

執筆者:鉄道力学研究部 軌道力学研究室 河野 昭子
担当者:鉄道力学研究部 軌道力学研究室 浦川 文寛
    材料技術研究部 防振材料研究室 鈴木 実

降雨量予測値を用いた豪雨時鉄道減災システム

1.はじめに

 わが国の鉄道で一般に行われている降雨時の運転規制では,線路沿線に設置された雨量計で規制値を超える雨量が観測された場合に,列車の運転中止などの措置がとられます.課題として,局地的な豪雨などの発生範囲が線路沿線の雨量計の設置間隔より狭い場合に,雨量計で捕捉できない可能性が挙げられます.また,降雨時の運転規制によって列車が抑止された場合でも,停止した列車がその後も継続する豪雨により被災する可能性があるという課題もあります.
 これらの課題に対して,気象レーダーを活用した面的な降水量の情報を用いることで,局地的な豪雨の見逃しを防ぐことが期待されます(図1).また,気象レーダーの情報を入力とした気象シミュレーションによって1~2時間程度先までの降水量を予測し,この降水量予測値を用いて豪雨災害の発生予測を行い,予想される影響範囲を避けて列車を事前に停止させることで,鉄道の安全性がより高まると考えられます.また,解析結果に基づき,点検すべき箇所や点検開始時刻をあらかじめ把握することで,運転再開に要する時間の短縮につながると考えられます.
 そこで,外部機関の降水量予測値を用いて,浸水・氾濫や土砂災害の発生を予測し,これらの影響範囲を避けた列車の停止位置を解析する「豪雨時鉄道減災システム」を開発しました.

図1 豪雨時の運転規制における気象レーダー情報の活用イメージ
図1 豪雨時の運転規制における気象レーダー情報の活用イメージ

2.豪雨時鉄道減災システムの処理フロー

 豪雨時鉄道減災システムの処理フローを図2に示します.まず,外部機関から降水量予測値をダウンロードします.本研究では国立研究開発法人防災科学技術研究所(NIED)より,2時間先までの降水量予測値の提供を受けました.この降水量予測値は,約10分毎に最新の気象レーダーの情報を反映したデータに更新されます.
 次に,降水量予測値を用いて浸水・氾濫解析を行い,浸水の影響を受ける範囲(浸水影響範囲)を判定します.本研究では首都圏の小流域を対象に,浸水・氾濫解析手法を適用しました.降水量予測値が10分毎に更新されることに対応して,浸水・氾濫解析を10分以内に実施することで,最新の情報を反映した解析結果を10分毎に表示できるようにしました.
 また,降水量予測値から,時雨量や連続雨量といった雨量指標を算出します.これらの雨量指標が大規模な土砂災害が発生すると予測される雨量を超えた場合に,その影響範囲を土砂災害影響範囲として表示します.
 そのうえで,列車停止位置解析にて,浸水影響範囲や土砂災害影響範囲に列車を進入させないという条件を満たす列車の停止位置を解析します.
 雨量指標や,浸水影響範囲や土砂災害影響範囲,提案された列車の停止位置は,GIS(地理情報システム)を用いて,地図上に表示されます.ユーザーは,PCやタブレット端末等のユーザー端末からインターネット経由で,これらの情報を閲覧できます.

図2 豪雨時鉄道減災システムの処理フロー
図2 豪雨時鉄道減災システムの処理フロー
図3 2017年8月19日を対象とした再現解析例
図3 2017年8月19日を対象とした再現解析例

3.試験稼働

 モデル線区を対象として,開発したシステムの試験稼働を実施しました.試験稼働の期間中,2017年8月19日の午後,東京地方では,大雨により浸水害や土砂災害が発生しました.当日の16:40~18:40を対象とした降水量予測値を図3(A)に示します.さらに,この降水量予測値に基づいて解析された浸水深を図3(B)に示します.鉄道の線路近傍の2箇所で浸水が予測されています.地形を考慮すると,一方は小河川からの越流に伴う鉄道盛土ののり尻での滞水,他方は池の水位上昇と周辺の低地への越流と解釈されます.この浸水・氾濫解析結果に対する列車停止位置解析の結果を図3(C)に示します.ここで,盛土部については,本線の直接の冠水はないと判断され,浸水影響領域から除外されています.これに対して,池の周辺の低地への越流については,線路に支障する浸水影響領域と判断され,列車停止位置解析の結果,この浸水影響領域に進入させないために,D駅からA駅方へ進行する列車を,D駅で抑止すべきと解析されています.なお,実際には,線路への支障はありませんでした.

4.おわりに

 降雨予測値を用いて,豪雨災害の発生予測を行い,影響範囲を避けた列車の停止位置を提案する「降雨予測値を用いた豪雨時鉄道減災システム」を紹介しました.本システムは,局地的な短時間豪雨に対する鉄道の安全性向上や,早期の運行再開に寄与すると考えられます.
 西武鉄道株式会社には,本システムのモニターとしてご協力いただきました.国立研究開発法人防災科学技術研究所には降水量予測値を提供していただきました.本報告に記載した内容には,総合科学技術・イノベーション会議のSIP(戦略的イノベーション創造プログラム)「レジリエントな防災・減災技術の強化」(管理法人:JST)による取り組みが含まれています.

執筆者:構造物技術研究部   トンネル研究室 浦越拓野(元 地質研究室)
担当者:防災技術研究部    地盤防災研究室 渡邉諭
               地質研究室   川越健
    信号・情報技術研究部 交通計画研究室 尾崎尚也

補強土構造物の仮抑え仕様を変更する際の注意点

1.はじめに

 橋台や擁壁のように背面の盛土を支える「土留め構造物」のうち,盛土の内部にジオテキスタイル(面状補強材)などの引張補強材を配置して表面を壁体で覆うことによって土塊の自立性を高めた構造を「補強土構造物」と呼びます.「補強土構造物」には多種多様な形式がありますが,鉄道構造物では主にジオテキスタイルと剛性の高い壁体によって構成させる剛壁面補強土擁壁(RRR-B工法,図1)とセメント改良補強土橋台(図2)が広く普及しており,これらの設計は鉄道構造物等設計標準・同解説【土留め構造物編】(以下,【土留め標準】)によって行われています.また,近年,これらのジオテキスタイルを用いる補強土技術をベースとした補強盛土一体橋梁(GRS一体橋梁,図3)が実用化され,「補強盛土一体橋梁(GRS一体橋梁)の設計・施工指針」(以下,【GRS指針】)が整備されています.
 これらのジオテキスタイルを用いた補強土構造物では,壁面工よりも先に「仮抑え」を行いながら自立させた盛土工を行うことが施工上の大きな特徴です.この「仮抑え」は,仮設時の盛土の安定性・自立性を保証しつつ,壁体が構築された後には排水層として機能し,かつ剛性の高い壁体と盛土を円滑に連結して壁体と盛土との不同沈下を吸収する役割を持ちます.剛壁面補強土擁壁の開発当初は,土のうによる方法(図4)が用いられていましたが,近年では施工性のよい溶接金網による方法(図5)が主流となっています.
 この仮抑え方法の仕様は,設計計算における補強材ばね定数と密接に関係するため,【土留め標準】あるいは【GRS指針】に記載された通りの基本仕様とするのが原則ですが,現場の実情に応じて仕様を変更する必要が生じる場合もあります.本稿では,その仕様変更の可否判断の参考として,設計におけるモデル化の考え方について解説します.

図1 剛壁面補強土擁壁(RRR-B工法)
図1 剛壁面補強土擁壁(RRR-B工法)
図2 セメント改良補強土橋台
図2 セメント改良補強土橋台
図3 補強盛土一体橋梁(GRS一体橋梁)
図3 補強盛土一体橋梁(GRS一体橋梁)
図4 土のうによる仮抑えの状況
図4 土のうによる仮抑えの状況

2.設計における補強材ばね定数のモデル化の考え方

2.1 剛壁面補強土擁壁(RRR-B工法)

 剛壁面補強土擁壁(RRR-B工法)の設計では,壁体を補強材ばねで多点支持された連続梁としてモデル化します.壁体に背面盛土からの静止土圧を作用させて断面力を算定して,壁体の壁厚および鉄筋量を決定します.【土留め標準】では,この補強材ばね定数を,実際のジオテキスタイルの気中引張試験の結果に基づいて設定することとしていますが,壁体設計を安全側に行うための配慮として,地盤の拘束効果を無視して補強材ばね定数の設計値を実際よりも十分に小さく評価することとしています.この配慮により,剛壁面補強土擁壁(RRR-B工法)の仮抑え方法は,現場の実情に応じて土のうによる方法と溶接金網による方法(図5)のいずれも適用することができます.

図5 剛壁面補強土擁壁における溶接金網による仮抑えの仕様【土留め標準】
図5 剛壁面補強土擁壁における溶接金網による仮抑えの仕様【土留め標準】

2.2 セメント改良補強土橋台

 セメント改良補強土橋台でも壁体は補強材ばねで多点支持された連続梁としてモデル化して壁厚および鉄筋量等を決定しますが,地震時の桁の慣性力を考慮することから壁体の設計結果に対して補強材ばね定数の値が及ぼす影響が剛壁面補強土擁壁よりも大きくなります.そのため【土留め標準】では合理的な設計が可能となるように,補強材ばね定数の設計値の算定においてはセメント改良部に拘束された効果等を適切に考慮することとしています.具体的には,セメント非改良の土のうによる仮抑え方法を基本仕様とし,この基本仕様で構築された実構造物の載荷試験の逆解析に基づき拘束効果等を評価する方法が示されています.ただし,鉄道・運輸機構においては,施工性の観点から土のうを用いた基本仕様に代えて,セメント非改良範囲を設けた溶接金網による方法(図6)に変更して施工する事例が増えています.この事例では,セメント非改良範囲を基本仕様における土のう幅と同程度(約400mm)とすることで排水や変位吸収等の機能を確保しつつ,溶接金網端部がセメント改良範囲に埋設されることで大きな補強材ばねが期待できると考えられることから,設計上安全側となる仕様変更と解釈できます.

図6 セメント改良補強土橋台における 仮抑え仕様(溶接金網+非改良範囲400mm)【鉄道・運輸機構での例】
図6 セメント改良補強土橋台における仮抑え仕様 (溶接金網+非改良範囲400mm) 【鉄道・運輸機構での例】

2.3 補強盛土一体橋梁(GRS一体橋梁)

 GRS一体橋梁の場合には,桁の収縮クリープおよび温度伸縮に伴って補強材は多数の繰返し載荷を受けることとなります.そこで【GRS指針】では,セメント改良アプローチブロックと壁体との間を十分な伸縮性能を発揮する緩衝層と位置づけ,壁体から1mの範囲をセメント非改良として溶接金網を用いた仮抑え方法を用いる仕様(図7)とし,この仕様で構築された実物大模型の正負交番載荷試験に基づく補強材ばね(【GRS指針】では緩衝層ばねと呼称)により側壁が多点支持された門型ラーメンモデルによって構造解析を行うこととしています.門型ラーメン構造となるGRS一体橋梁では,補強材ばね定数が大きい方が必ずしも断面設計上で安全側になるとは限りません.よって,原則として図7の仮抑えの方法・仕様を現場で変更することはできません.ただし,【GRS指針】では建設実績も踏まえて橋長が20m以下の場合に限り,セメント非改良の土のうによる仮抑え方法(=セメント改良補強土橋台の基本仕様)の適用は可としています(注:特に図6への変更は伸縮性能が不足するため不可).

図7 GRS一体橋梁における仮抑え方法の仕様(非改良範囲=1m)【GRS指針】
図7 GRS一体橋梁における仮抑え方法の仕様 (非改良範囲=1m) 【GRS指針】

3.おわりに

 設計における補強材ばね定数は仮抑え方法の仕様に応じて設定されているため,設計図には設計計算上想定している仮抑え方法の仕様を明記する必要があります.また,現場での仕様変更の可否は上述した設計の考え方を踏まえて,安全側となるように判断する必要があります.特にセメント改良補強土橋台およびGRS一体橋梁においては,上記の図6と図7を混同することがないように注意して施工する必要があります.本稿が現場における設計・施工の参考となれば幸いです.

執筆者・担当者:構造物技術研究部 基礎・土構造研究室 中島 進

レール頭部きず補修工法の適用範囲検証

1.はじめに

 シェリングきずにレール頭部きず補修工法を適用する場合,事前の超音波探傷検査により水平裂長さ,横裂深さを測定し,設計上の切取り形状と重ね合わすことで適用の可否を判断します.しかしながら,実際の横裂深さが超音波探傷検査の結果を上回り,切取り面に横裂が残存することになるケースも考えられます.このような場合,残存した横裂箇所を部分的に研削した後,補修することになりますが,部分的な研削による補修部品質への影響についてはこれまで明らかになっていません.そこで,本検討では,きずの取り残しを想定して部分的に研削を施した溶接試験体に対し,各種試験を実施しました.

2.試験体作製条件

 実作業を想定し,研削形状として2パターン,研削深さとして2パターンの計4パターンを選定しました.研削箇所は,最も溶込み量が少なくなる切取り中心から20mm位置とし,部分的な研削が溶込み量に及ぼす影響を確認しました.表1に試験体の研削条件,図1に研削後の切取り部外観および研削後の切取り部をトレースした断面形状を通常の断面形状(破線)と併せて示します.研削形状は局所型および船底型の2パターンとし,局所型は残存きずのみをグラインダで研削した場合,船底型は残存きずを研削した後,その周囲を滑らかに仕上げた場合を想定しました.また,研削深さは,超音波探傷検査の検査精度を考慮し,5mmおよび10mmとしました.これら,各パターンで切取り形状を拡大したJIS60kg普通レール試験体を作製し,各種試験を実施しました.

表1 研削条件
表1 研削条件
図1 部分研削後の切取り部外観および断面形状
図1 部分研削後の切取り部外観および断面形状

3.試験結果

3.1 超音波探傷試験

 施工直後の仕上り検査として,45°斜角探触子による頭頂面からの一探触子法および頭部二探触子法を実施しましたが,いずれの試験体においてもきずエコーは検出されませんでした.

3.2 縦断面マクロ観察

 各試験体において最も溶込みの少ない領域(ライザー側15mm位置)における縦断面マクロ観察を実施しました.図2に断面観察位置および縦断面マクロ観察結果を示します.なお,図中の実線で切取り部の断面形状,破線で溶込み境界部を示します.全体的に研削形状によらず部分的に研削した箇所の溶込み量が減少する傾向が認められ,特に局所型10mmの研削では当該箇所においてほとんど溶込み量が得られていませんでした.一方,船底型に研削した場合,通常の切取り形状に比べ溶込み量は減少していますが,最低でも2mm程度の溶込み量が得られています.

図2 縦断面マクロ観察結果(ライザー側15mm位置)
図2 縦断面マクロ観察結果(ライザー側15mm位置)

3.3 曲げ破断試験(頭部下向き)

 断面マクロ観察結果を基に,船底型10mmの条件で作製した試験体3体に対して,曲げ破断試験を実施しました.曲げ破断試験は,1mスパン中央集中荷重による3点曲げとし,試験体数は60kg普通レール3体としました.また,破断姿勢は頭頂面に引張応力が作用する頭部下向き(HD)としました.図3に曲げ破断試験結果および破断面例を示します.試験に供した試験体3体はいずれも60kg普通レールにおけるテルミット溶接部の曲げ破断基準値(HD:1100kN-13mm)を上回り,破断面上には溶接欠陥等は認められませんでした.
 以上の結果より,残存きずに対して10mm深さまでであれば,船底型となるように研削することで,十分な曲げ強度を持つことが確認されました.

図3 曲げ破断試験結果および破断後の破断面例
図3 曲げ破断試験結果および破断後の破断面例

4.まとめ

 きずの取り残しを想定し,部分的に研削を施した溶接試験体に対して各種試験を実施した結果,船底型となるように研削することで,十分な曲げ強度を持つことを確認しました.ただし,あくまで現場施工時の緊急対応策であり,施工の際は事前の超音波探傷検査の精度向上が重要となります.

執筆者:軌道技術研究部 レールメンテナンス研究室 伊藤 太初
担当者:軌道技術研究部 レールメンテナンス研究室 山本 隆一,寺下 善弘

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