施設研究ニュース

2019年9月号

回転切削圧入杭の設計鉛直支持力について

1.はじめに

 本稿では,近年開発された「先端ビット付き鋼管杭の回転切削圧入工法」(ジャイロプレス工法)1)(図1)で施工された回転切削圧入杭を対象に,載荷試験結果から提案された設計鉛直支持力の推定式について紹介致します.なお,詳細については参考資料3)をご参照ください.

図1 回転切削圧入工法2)

2.工法の概要と設計鉛直支持力の推定式

(1)工法の概要
 近年,鋼管杭の貫入方法の一つとして,ジャイロプレス工法の普及が進んでいます.ジャイロプレス工法とは,先端に鋼材のリングと硬質地盤切削用のビットからなる先端リングビット付き鋼管杭(図2)を回転切削圧入する杭工法です.この工法は,特に硬質地盤や上空制限などの施工が困難な箇所での適用が可能であることから,既設橋梁の橋脚基礎補強などに実績があります.回転切削圧入杭に対してこれまでに載荷試験が実施されていることから,鉄道構造物等設計標準・同解説 基礎構造物で示されている他工法の杭工法と同様の方法で,設計鉛直支持力の推定式等を提案しました.

図2 先端リングビット付き鋼管杭2)

(2)地盤反力係数
 載荷試験結果から,杭先端ならびに杭周面の鉛直地盤反力係数を以下のように設定しました.

図3 杭先端の地盤反力係数と地盤の変形係数の関係3)

ここで,ktv:杭先端の鉛直地盤反力係数(kN/m3),ρgk:地盤修正係数,Ed:地盤の変形係数(kN/m2),D:鋼管杭外径(m),kfv:杭周面の鉛直地盤反力係数(kN/m3),となります.載荷試験との比較をみると,概ね平均値相当で評価していることが分かります(図3).なお,杭先端の地盤ばね定数算出時に用いる杭先端面積Atは閉塞面積となります.

(3)基準支持力度
 回転切削圧入杭の基準支持力の推定式は地盤のN値をパラメータとし,他工法と同様に載荷試験結果の下限値相当として設定しました.推定式ならびに載荷試験との比較結果を以下に示します.

ここで,qtk:杭先端の基準鉛直支持力度(kN/m2),γfk:杭周面の基準鉛直支持力度(kN/m2)N:N値,となります.

図4 基準支持力度と地盤のN 値の関係3)

(4)地盤抵抗係数
 鉄道構造物の設計では,基準支持力に地盤抵抗係数を乗じることで設計支持力を求めることができます.本工法の地盤抵抗係数は基礎構造物の性能照査の手引き4)に従い算出しました.地盤抵抗係数と先端支持力比の関係を図5に示します.なお,ここでは杭本数を1本として算出した結果となります.

図5 地盤抵抗係数と先端支持力比の関係3)

3.おわりに

 ジャイロプレス工法は狭隘箇所での施工性に優れており,都市部の橋梁や河川橋梁の基礎補強時に有効です.本検討結果が鉄道構造物のさらなる安全性確保の一助となれば幸いです.

参考文献

1) 国際圧入学会:ジャイロプレス(回転切削圧入)工法による鋼管土留め擁壁設計・施工指針,2014
2) 平田尚他:ジャイロプレス工法🄬の適用範囲拡大,新日鐵住金技報,vol.403,pp.41-47,2015
3) 鈴木直樹他:鉄道構造物に用いる回転切削圧入杭の設計支持力のモデル化,第23回鉄道工学シンポジウム論文集,pp.217-222,2019
4) 鉄道総合技術研究所:基礎構造物の性能照査の手引き,2018

執筆者:構造物技術研究部 基礎・土構造研究室 佐名川太亮

ラーメン高架橋柱の軸方向鉄筋への機械式定着工法の適用方法

1.はじめに

 耐震設計で考慮すべき地震力の増大に伴い,柱や梁の軸方向鉄筋量が増加し,ラーメン高架橋の柱梁接合部では過密配筋となる傾向にあります.この結果,鉄筋組立作業などの施工性の低下だけでなく,コンクリートの充填不良にともなう品質低下を招くおそれがあります.この対策として,柱の軸方向鉄筋の定着に一般的に用いられる半円形フックに代わり,機械式定着具を用いた定着構造(以下,機械式定着工法)とすることが考えられますが,図1に示すラーメン高架橋の柱外面のように,コンクリートによる拘束力が小さい面における機械式定着工法の定着性能は明らかではありませんでした.
 そこで,ラーメン高架橋の柱梁接合部において,図2に示す機械式定着工法を柱の軸方向鉄筋に用いた場合の定着性能を,実験および有限要素解析により検討し,適用可能箇所を提案しました.

図1 ラーメン高架橋の柱梁合部
図2 検討に用いた機械式定着工法

2.機械式定着工法の定着性能の検討

 柱の軸方向鉄筋を対象とした場合,機械式定着工法の性能確認として静的引張耐力と高応力繰返し耐力が求められます.そこで,一軸引張試験1),2)と正負交番載荷試験3)および有限要素解析を行いました.ここでは,一軸引張試験による静的引張特性の検討結果を示します.
 実験の概要を図3に示します.実際の上層柱梁接合部を約70%の大きさで模擬した供試体として,4本の柱軸方向鉄筋を一方向に加力しました.また,実験では,定着方法(半円形フックによる定着と機械式定着工法)および直交梁と拡幅部(図4に示すように,接合部の施工性を確保するために横梁の軸方向鉄筋の定着部として設けられた箇所)の有無をパラメータとしました.

図3 実験の概要
図4 拡幅部の概要

 実験の結果を図5に示します.直交梁と拡幅部がない供試体において,半円形フックから機械式定着工法に置換えた場合,設計耐力に達する前に大きな抜出しが生じていることがわかります.この結果,半円形フックから機械式定着工法への置換えは,十分な定着性能が確保できないことがわかりました.また,機械式定着工法を用いた場合のかぶりや横方向鉄筋比の影響について検討した結果,一般的な諸元の範囲内では,半円形フックほどの定着性能が確保できないことも確認しています1).これに対して,直交梁と拡幅部を有する場合の機械式定着工法の定着性能は,直交梁と拡幅部がない場合と比べて大きく向上し,半円形フックと同等以上の定着性能があることを確認しました.

図5 引張力P1と定着具抜出し量δ2の関係

3.機械式定着工法が適用可能な箇所の提案

 ラーメン高架橋の柱梁接合部における柱の軸方向鉄筋への機械式定着工法が適用可能である箇所を図6に示します.直交梁(縦梁)や拡幅部を有する面では適用可能である一方,拘束が小さい面および他の箇所に比べて拘束が小さいと想定される隅角部の軸方向鉄筋については,機械式定着工法の適用は困難であると考えられます.拡幅部を有する柱梁接合部に対して機械式定着工法を採用した場合,配筋は図7のようになり,過密配筋が緩和されることが確認できます.
 なお,拡幅部において横梁の軸方向鉄筋を定着させる場合,正負交番載荷試験3)により,図中に示すコ形鉄筋の配置が必要であることを確認しています.

図6 機械式定着工法の適用可能な箇所
図7 配筋の例

4.おわりに

 ラーメン高架橋の柱梁接合部における柱の軸方向鉄筋において,本提案を採用することで過密配筋の解消および施工性の向上が期待できます.

参考文献

1) 幸良他:高架橋接合部における機械式定着鉄筋の静的引張特性と定着性能向上に関する検討,コンクリート工学年次論文集,Vol.40,No.2,2018
2) 西村他:突出梁を有するRC柱梁接合部における機械式定着部の静的引張特性に関する検討,土木学会第74回年次学術講演会講演概要集,V-612,2019
3) 幸良他:突出梁を有するRC柱梁接合部における機械式定着部の高応力繰返し耐力に関する検討,土木学会第74回年次学術講演会講演概要集,V-613,2019

執筆者:構造物技術研究部 コンクリート構造研究室 西村脩平
担当者:構造物技術研究部 コンクリート構造研究室 中田裕喜,田所敏弥

地形・建物の日陰を考慮した広域レール温度分布の予測法

1.はじめに

 図1に,後述するレール温度予測モデルによる,8月15日の14時における高層ビルの日陰となる箇所の,レール温度分布の予測値の一例を示します.図のように,実軌道では,地形・建物等の陰影によるレール温度のばらつきが想定されますが,現行のロングレール管理では,一定区間内で一様なレール温度を仮定し,軌道座屈に対する安全度を評価しています.この理由として,日陰は時々刻々と変化するため,これに伴う広域のレール温度の分布の変化を,実用に耐えうる精度と頻度で把握することが困難なことが挙げられます.実務上はこのようなマクロな評価が主流ですが,座屈に対する安全度を日陰のレール温度の低下を加味して評価できれば,管理の効率化とコストの削減に繋がることが期待できます.そこで本研究では,汎用の地理データを使用し,広域のレール温度分布を,地形・建物の日陰を考慮して予測する手法を提案します.

図1 日陰箇所のレール温度分布(予測値)の一例

2.地形・建物の日陰を考慮したレール温度予測モデル

 本章で述べる地形・建物の日陰を考慮したレール温度予測モデルとは,文献1)のレール温度予測モデルにおける日射量(太陽の放射熱)の評価に,地形・建物の日陰の影響を考慮可能としたものです.モデルの詳細は文献1)を参照してください.また,本稿では,時間軸をt,レール長手方向の位置をxとします.

(1) 地形・建物等の日陰を考慮した日射量解析
 まず,汎用地理データ(地形,建物,線路データ)を使用した日射量解析(図2)より,レール敷設位置の日射量を地形・建物等の日陰を考慮して算出します.日射量解析には,ArcGIS Spatial Analyst エクステンションの”ポイントの日射量”解析ツールを使用します.また,ここでは,地形データは国土地理院が提供する5mメッシュの数値標高モデル(DEM5A)を,建物と線路データはEsri社が販売するArcGIS Geo Suite詳細地図のL_BLDとL_RROADを使用しています.

図2 地形・建物等の日陰を考慮した日射量解析

(2) レールの熱収支計算1)
 次に,日射量,レールの幾何形状,レールと太陽の相対位置等からレールが吸収する熱流量Qin(x,t)を計算します.Qin(x,t)は図3のとおり,日射,大気の赤外放射,地面の赤外放射を考慮します.さらに,レールが排出する熱流量Qout(x,t)をレール温度より計算します.Qout(x,t)は図3のとおり,軌道パッドへの熱伝導,空気への対流熱伝達,レールの放射熱を考慮します.

図3 レールの熱収支モデル

(3) レールの熱伝導解析1)
 最後に,式(1)のx(レール長手)方向に関する一次元熱伝導方程式を,陽解法を用いて解き,Δt後のレール温度TR(x,t+Δt)を求めます.

 (2),(3) を任意の日時tMまで繰返し,位置xにおけるt0からtMのレール温度TR(x,t)を計算します.

3.実軌道でのレール温度予測試験

 予測モデルの妥当性検証のため,日中に建物等によりレールの一部が日陰となる箇所でレール温度を測定し,予測値と比較しました.図4に試験箇所の状況および測点を示します.試験日は2019年1月21日で,当該箇所の天候は快晴でした.当該箇所のレール温度分布を測定するため,図4に示す10測点(S1~S10,約15m間隔)で,フィールドコーナ(FC)側のレール腹部に熱電対(T-FFF(M),福電社製)を設置し,10分間隔で温度を測定しました.また,レール温度予測に使用するため,ウェザーステーション(Vantage pro 2,DAVIS社製)をS1付近の沿線の,地面から高さ1mの位置に設置し,気温と風速を測定しました.測定日の最高気温は10℃,最大風速は3.1m/sでした.

図4 試験箇所の状況およびレール温度測点(S1~S10)

 図5に,10:00~15:00のレール温度分布の測定値と予測値の比較を示します.図より,近傍に踏切が存在するS4とS5を除くと,レール温度分布は,測定値と予測値で概ね一致しました.測定では,日向のレール温度がピークとなる14:00で,建物1の陰となる測点S2,S3では周囲の日向と比較して約10℃,建物2の陰となるS7~S10では,周囲の日向と比較してレール温度が約15℃低いですが,予測値でも,このレール温度分布の傾向をよく再現していることがわかります.以上,提案したレール温度予測モデルの妥当性を現地試験により実証しました.

図5 レール温度分布の測定値と予測値の比較

4.今後の展望

 1章で述べた管理の効率化とコスト削減に寄与する技術として「①日陰を考慮したレール温度予測値に基づく座屈安全度評価法」,レール高温時の列車運行や張り出し警備を支援する技術として「②気象予報データを活用したリアルタイムレール温度予測システム」の開発を進めています.

参考文献

1) 浦川文寛:日射を考慮したレール温度予測モデル,鉄道技術連合シンポジウム講演論文集 J-RAIL,S7-6-4,2017.

執筆者:鉄道力学研究部 軌道力学研究室 浦川文寛
担当者:鉄道力学研究部 構造力学研究室 渡辺 勉
    鉄道力学研究部 軌道力学研究室 木村 成克(現 JR東日本)

発行者:楠田 将之【(公財) 鉄道総合技術研究所 施設研究ニュース編集委員会 委員長】
編集者:川崎 恭平【(公財) 鉄道総合技術研究所 軌道技術研究部 軌道管理】

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